ディープなNBA・バスケトーク+アメリカ文化

NBAとアメリカンカルチャー中心のブログ

NBAトレードデッドライン総評(個人的5大トレード)

どうも。NBAのトレードデットラインが終了した。ここ数年は、NBAのシーズンの中で、クリスマスデー、NBAファイナルに匹敵する重要な日であり、アメリカのスポーツメディアもトレードへのリアクションで大忙しとなる。プレイヤーの力が強くなり、シーズン中のビッグトレードが起きやすくなったことに加え、Twitterの力でWojやShamsなどのインサイダーが速報を伝えられるようになったことで、10年前と比べてこの日が一大イベントとなった。そんなデットラインを目前として今年も大いにゴシップで盛り上がったが、最終的に期待を裏切らない結果となったのではないか。そこで今回はデットライン直前で起きた5大トレードを振り返ってみたいと思う。

 

1. シクサーズとネッツ

主なフィラデルフィアの獲得:ジェームズ・ハーデン

主なネッツの獲得:ベン・シモンズ、セス・カリー、アンドレ・ドラモンド

 

今年のデットラインをこのトレード無しには語れない。昨年のプレイオフで戦犯扱いとなり、チームのいう事全て無視するという強行手段に出たベン・シモンズ、1年前にロケッツを人質に取りネッツへのトレードを強行したハーデンというイメージ悪い2人がトレードされるというリーグ史上最もプレイヤーエンパワーメントを象徴するトレードとなった。それぞれの悪態については下記の記事をご参考。

atsukobe.hatenablog.com

atsukobe.hatenablog.com

 

シクサーズの方から考えると結構なギャンブルである。元ロケッツのGMで現在シクサーズGMであるダリル・モレーは、アナリティックスとハーデンが超大好きな為、ひたすらハーデンに賭けてはいるが、ロケッツ時代のハーデンと比べて今年は明らかに衰えが見られている。未だに数試合に一回爆発はできるが、毎試合の安定を彼に求めることはもうできなさそうである。

 

彼はチームをセットアップする能力や、アシスト面では引き続きエリートだが、元来ボール保持時間が長く、周りにシューター、ピックアンドロールでロールするビッグマンとしか一緒になったことがないハーデンが、エンビードとマッチするかは微妙である。エンビードは、ポストアップから時間かけてゴール下でスコア・ファールを誘う、アウトサイドからも自分のペースでクリエイトすることが多い。更にハーデンは自分がボールを持ってないと全く動かないので、エンビードがボールを持った時のオフェンスのシステムを改善する必要がありそうである。

 

更にディフェンスの面でもハーデンは全く動かないし、常にスイッチディフェンスを求める彼と、ペイントエリアに居座ってスイッチを好まないリーグ屈指のディフェンダーであるエンビードがフラストレーション溜めることは十分考えられる。

 

色々ネガティブな要素はありつつ、一切プレーをしておらず今後も復帰するつもりはなかっただろう選手とセス・カリー、ドラモンドの代わりにハーデンが加わったことを考えたら、まあいいトレードと言わざる得ないだろうし、イーストの優勝候補の1つに確実になった。

f:id:atsukobe:20220212003435j:plain

 

ネッツ側も考えてみると、デゥラント、カイリー、ハーデンが結成されて3人一緒にプレイしたのは合計16試合だけと考えるとなんとも悲しい。ハーデンを獲得する為に、ジャレッド・アレンやカリス・レヴァートといったアセットを手放したのに、その1年後にはハーデンをトレードするというのはチームとしては大きな痛手である。

 

とはいってもベン・シモンズがもしちゃんとプレイするならこのトレードは吉とでるかもしれない。デゥラントの怪我は心配だし、カイリーが未だにワクチンを打ってない為アウェイゲームしか出場できないという懸念点はあるが、もしこの2人が揃った状態に、セス・カリーとシモンズが加わるとなれば結構バランスがいいチームとなる。

 

ハーフコートオフェンスは常にKDとカイリーを中心に回るわけで、シモンズは苦手なシューティングを気にせずにトランジションでの爆発力とリーグ屈指のディフェンス力を披露できる。KD以外ディフェンス力が貧弱だったチームに、ガードからフォーワードまでストップできるシモンズが入るのは大きなプラスである。更に、シューターのジョー・ハリスがケガでシーズン絶望かもとも言われる中で、リーグ屈指のシューターであるカリーの存在は大きい。今年優勝狙えるかはデゥラント次第のとこはあるだろうが、何も見返りなしに、ハーデンが移籍することを防げたのは良かったと言える。

 

このトレードについては書きたいことが一杯あるのだが、とても長くなってしまうので、(すでに長いが、、、)また次回詳しく見ていきたい。

 

<Trade Grade>

シクサーズ:B 

ネッツ: A-

 

2. マーベリックスとウィザーズ

主なマーベリックス獲得:スペンサー・ディンウィディー、ダービス・ベルターンス

主なネッツ獲得:クリスタス・ポジンガス

 

このトレードを最初に見た感想は、マブスは正気???である。確かにポジンガスは怪我がちであり、今年も途中から欠場が続いていた。更にドンチッチとの仲が悪いことも度々報道されていたし、大型契約を結んでいる為放出が難しいということもあったので、チャンスがあればトレードしたかったという気持ちもわかる。

 

但し、リターンがこれでは全然説明がつかない。今年ウィザーズで全く活躍できておらず、チームメイトからも不評だったと言われるディンウィデイーと、一昨年大型契約延長を結んでからやる気が見られず、今年はひどい成績のベルターンスを獲得してどうするつもりなのだろうか。ボール保持するのが好きなディンウィディーとルカの相性がいいとは思えないし、確実に逆効果な気がしてならない。

 

ウィザーズからしてみたら今すぐにでも手放しなたかった2人の代わりに、1人の大型契約選手と交換したことはスマートではあるし、このトレードの中では一番実力のある選手を取れた。ただポジンガスを獲得したところでウィザーズがどうしたいかは不明である。ブラッドリー・ビールが今シーズン絶望となった中でプレイオフへのプッシュを考えているのか。それでも結局プレイインにも入れない可能性も高く、なんとも中途半端な気もする。どちらにとってもそれほど得とは思えない不思議なトレードであった。

 

<Trade Grade>

マーベリックス:D 

ウィザーズ: C

f:id:atsukobe:20220214224912j:plain

 

3. ペイサーズとキングス

主なペイサーズの獲得:タイリース・ハリバートン、バディ・ヒールド、トリスタン・トンプソン

主なキングスの獲得:ドマンタス・サボニス、ジャスティン・ホリデー、ジェレミー・ラム

 

またキングスがやってくれたかという感じのトレードである。もうここ15年ぐらい組織としてリーグ最低レベルのキングスは、2010年にオーナーがVivecに変わってから特におかしくなった。いつも実現不可能なプレイオフを目指しては、上位のドラフトピックを獲得できず、補強もちぐはぐなのだが、今回もその例外ではない。

 

ハリバートンは2年目の序盤の不調から回復してNBAファンから非常に期待の高い選手となってきていた。今では珍しいプレイメイクに長けた彼はどのチームにもフィットする存在ではあり、最近はステップバックスリーの技術も向上して、まだルーキー契約な為、キングスが彼を手放すわけはないという予想が大方だった。

 

然し、キングスは同じくポイントガードでより実績のある5年目のディアロン・フォックスをチームの中心とする方針を取り、(+高額年俸からトレードも難しいのもあるが)シュートが苦手でアドバンススタッツ寄りのアナリストから批判されがちな彼をキープ、アドバンススタッツから評価されるハリバートンをトレードしてしまった。2年目でこれから後数年でフォックス以上の選手となると思われるポテンシャルを持つハリバートンを選ばないところがいかにもキングスらしい。

 

とはいっても、サボニスが素晴らしい選手であることには変わらない。インサイドでの得点力の高さとパス能力はリーグトップクラスであり、確実にキングスはレベルアップできる。ただじゃあキングスがプレイオフでセカンドラウンドを望めるような位置に行くかと言ったらそんなことはない。チームビルディングの考えでいったら全くセオリー通りでなく、中途半端な補強で終わるのが見えている。

 

ペイサーズからしたら、チームに不満を持っていて、マイルズ・ターナーとのダルビッグマン体制に限界が見られたサボニスの代わりに、ハリバートンをゲットできたのは儲けものである。ペイサーズもそろそろタンクをして上位ドラフトピックを狙うべきな気もするが、まだ2年目のPGを獲得できたのは今後のチーム計画にとってすごいポジティブになるだろう。ついでにシューターのバディ・ヒールドが加わったのも悪くない。

 

<Trade Grade>

キングス:C

ペイサーズ: A-

f:id:atsukobe:20220214225009j:plain

 

4. 四チームトレード (キングス、クリッパーズ、バックス、ピストンズ)

主なキングスの獲得:ダンテ・ディヴィンチェンゾ、ジョッシュ・ジャクソン

主なクリッパーズの獲得:ロドニー・フッド、セミ・オジュレ

主なバックスの獲得:サージ・イバカ

主なピストンズの獲得:マービン・バグリーJr

 

このトレードに関しては正直キングスは結構いい動きをしたのではないか。ディヴィンチェンゾは怪我から復帰して今年不調だが、本来はオフェンス、ディフェンスともに優れた選手であり、フォックス、サボニスを支える第3、4の選手として機能するだろう。4年前のドラフト2位のバグリーは、ルーキー時代からキングスと上手くフィットしておらず、チームのお荷物となっていただけに、キングスとしては全く傷がつかないトレードだし、リーグ最低レベルのロスターピストンズからしても、まだまだ若いバグリーにチャンスを与える価値もあるだろう。

 

このトレードの一番のキーはバックスである。ブルック・ロペスが腰の怪我で今シーズン復帰できるか微妙と言われている中、イヤニス以外のビッグマンがいないバックスはバックアップセンター・フォワードの獲得が急務であった。最近はケガも多いため、ラプターズが優勝した際に、非常に重要な役割を担った時のレベルからは程遠いが、少なくともディフェンス面での貢献は期待できるのではないかと思う。ミドルトン以外の強力なウィングがいないバックスなだけに、ディヴィンチェンゾを手放すのはベストではないかもしれないが、パット・コナトンやグレイソン・アレンといた同ポジションの選手がいるので、マストキープとなくなったことが大きい。

 

クリッパーズの方はどうしたいかがイマイチ分からない。ポール・ジョージ、クワイ・レナ―ドともに今シーズン絶望の可能性が高く優勝を狙えない中で、デットライン直前にはノーマン・パウエルとロバート・カミントンといった即戦力を獲得している。そんな中でバックスでほぼローテション外になっていた2人を獲得したりと若干ちぐはぐである。おそらくサラリーキャップの調整を図っていると思われるが、チームを強くも弱くもしない補強でなんともうーんといったデットラインであった。

 

<Trade Grade>

キングス:B 

ピストンズ: B

バックス:B+

クリッパーズ: D

f:id:atsukobe:20220214225116j:plain

 

5. ペリカンズとブレイザーズ

主なペリカンズの獲得:CJ・マコラム、ラリー・ナンスJr

主なブレイザーズの獲得:ニケル・アレクサンダー=ウォーカー (後にジャズに更にトレード:これも謎)、ジョッシュ・ハート

 

このトレードは完全にペリカンズのパニックトレードである。なおかつブレイザーズは完全にRebuildモードでもある。そしてどちらのチームのこの動きには?がつく。昨年大活躍したザイオンがケガで今シーズン1試合も出場しておらず、オーバーウェイトかつ、チームに不満もあると言われている彼が復帰するか分からないまま、チームも低迷中であるため、マコラムを獲得してプレイオフを狙いたいのだろうが、果たしてどこまでチームが強化されただろうか。頑張ってもぎりぎりの第10シードぐらいになるだろうし、マコラムの高額年俸と契約期間の長さを考えると今後このトレードがチームの将来に大きなダメージを与える可能性もある。プレイオフを狙えるかも分からない中で、過去の怪我もあり、大型契約持ちのこれから全盛期を過ぎるTop40レベルの選手の獲得はかなりリスキーであったと言える。(Top10レベルでなく、Top40レベルなのが肝)

 

ブレイザーズの観点からも、もっといいトレードがあったのではないかと思う。最近までベン・シモンズとのトレードもあると言われてきたマコラムの見返りが、ほぼサラリーダンプのようなトレードではスーパースターのリラードが納得しないだろう。リラードが今シーズン絶望と言われる中で、今年は諦めるという点は理解ができるが、もう少しまともなリターンがないと、いくら上位のドラフト選手をゲットできたり、サラリーキャップを空けても、タイトルを狙えるチームになっていくのは難しく、最終的にリラードのトレードリクエストが待っている気がする。

 

<Trade Grade>

ペリカンズ:D 

ブレイザーズ: D

f:id:atsukobe:20220214225212j:plain

 

全部で16あったトレードのうち、大きな5つのトレードをまとめるだけでかなり長くなってしまったが、その他にもセルティックスやサンズがミニ補強をしたのは評価できる。ホーネッツにモントレズ・ハレルが加わったのも興味深い。

 

今年も大いに盛り上げてくれたトレードデットライン。これからオールスターの後はあっという間にプレイオフに突入していく。今シーズン特にイーストが大混戦となっており、今回のトレードが吉と出るか凶と出るか、最後まで目を離せない展開となりそうである。

NBAオールスター選出の問題とリザーブ候補を考える

どうも。いきなりだが、NBAオールスターが迫ってきたので、今回はここ最近ずっと問題になっているオールスター選出方法と今年オールスターに選ばれるべきプレイヤーを考えてみたいと思う。現地時間の1/28にオールスターのスターターが発表され、10人中9人は納得のいくものだったが、NBAコミュニティを大いに騒がせたのはアンドリュー・ウィギンズの選出である。

 

<なんでウィギンズ???>

NBAメディアやある程度ちゃんと試合を見ているファンならウィギンズがスターターであることはおかしいと普通に思うだろう。現在リーグ2位のウォーリアーズでそれなりに安定した活躍をしており、平均18得点を記録し、相手のベストプレイヤーにマッチアップできるディフェンス力も持っている為、オールスター候補の1人として考えることはできるかもしれないが、スターターにふさわしいかと言われた絶対違う。同じウォーリアーズならドレイモンド・グリーンの方がチームへのインパクトは大きく、他チームのフロントコートで言えば、ジャズのルディ―・ゴルベア、ティンバー・ウルブズのカール=アンソニー・タウンズの方がふさわしいと誰もが考えるだろう。

f:id:atsukobe:20220130001117j:plain

オールスターになっちゃったメープル・ジョーダンことウィギンズ

これだからファン投票を廃止すべきと言われてしまうわけで、熱心にバスケを見ている人達をおちょくっているみたいである。特にファン投票がツイッターで可能になってからは、ひたすらリツイートして投票数を稼ぐ事が出来てしまう為、日本のAKBファンが自分の推しメンバーの投票数を増やすのにCDを大量買い占めするのと同じ現象が起きてしまっている。

 

実際にウィギンズが選出された大きな理由の1つは、ウォーリアーズがK-PopスターのBamBamをグロバールアンバサダーとして、彼が960万いる自分のフォロワーにウィギンズに投票にするように呼び掛けたからだと言われている!これが事実なら、現在人類で最も団結力と忠誠心が強いであろうK-Popファンがバックアップをしてしまったことで、ウィギンズがスターターになったといっても過言ではない。。。

www.sbnation.com

 

<ファン投票と選手投票の適当さ>

ファン投票が信頼ならないのは今に始まったことではない。もちろんNBAはファンがあってのエンターテイメントであり、各選手は人々を楽しませるのが仕事である。ただ、以前もロールプレイヤーのザザ・パチュリアがファン投票で上位になったりと面白半分の投票もよく見られ、本当に実力のあるプレイヤーが選ばれづらいという問題が起きていた。そういったこともあって、2017年以降はより客観的な意見を重視して、ファンの意向を50%、メディア投票を25%、選手投票を25%で合算するようになる。

 

ここで更に問題になるのが、プレイヤーによる投票である。実際にコート上で対戦している選手達はよりリアルな視点で優れた選手を判断できるという希望もあって選手投票も加わったわけだが、蓋を開けてみたら選手はファン以上にテキトーなのである。今年1試合も出場していないベン・シモンズが2投票獲得したり、昨年や一昨年はタコ・フォールが投票ゲットしており、完全に遊んでいるとしか思えない人達がいる。それ以上に、選手達は基本的に自分のチームを贔屓しがちな為、同じチームの人だけ投票するとかいった事もある。なので、結局選手に任せると全然公平なプロセスにならない。

atsukobe.hatenablog.com

 

<ポジション制度の限界>

もう一つ現行のオールスターで課題となるのはポジション別の選出の限界である。これはオールNBAチームにも当てはまることだが、ゲームが進化しどんどんと固定されたポジションに当てはまらない選手が出てきた中で、フォワードとセンター、ガードの境界線はかなり曖昧である。例えば、レブロンはリーグに入った当初からスモールフォーワードであるが、実質ボールを常に保持するポイントガードであったし、今となってはレイカーズでスモールボール5としてセンターの役割も担う。また、今回ガードとしてオールスターに選出されたデローザンだが、ブルズはロンゾ・ボールとアレックス・クルーソがいるので、彼は今シーズンほぼフォワードとしてしかプレイしてないにも関わらず、オールスターではガードとして登録されている。つまりポジションなんて意味ないのである。

 

以前はセンター1人、フォーワード2人、ガード2人となっていたのがセンターの弱体化で2013年からフロンコート3人となったことで少しは改善されたが、更にゲームが進化した今、そろそろポジションの枠を超えて各カンファレンスのベスト5を選ぶべきなのではないかと思う。現代NBAはガードの層がものすごいので、ポジションレスの選出ならウィギンズがスターターになることはなかっただろう。

 

実際ウエストのガードを見てみても、カリーとモラントに加えて、サンズのポールとブッカー、ジャズのミッチェルなどよりふさわしい候補がいるし、リーグトップの勝率を誇るサンズを支えるポールが選ばれるべきだったというのがが個人的な意見である。

 

個人の実績を他の選手と照らし合わせる上でオールスター選出回数は必ず検討される点であり、リーグは制度を整え、ファンも選手も真剣に候補者を検討してもらいたいのである。

f:id:atsukobe:20220130213002j:plain

未だにリーグトップレベルのPGであるポール

 

<今年のオールスター選出候補>

既に前のセクションでティザーしてしまったが、最後に今回オールスターに選ばれるべきだと思う選手を改めて考えてみたい。まずはイーストから。

 

イースタンカンファレンス・

スターターは下記の通り。トレイ・ヤングは、昨年カンファレンス・ファイナルまで進出し期待されたホークスが苦しんでいる為本当にふさわしいかとも考えたが、彼の個人成績は通常スタッツ、アドバンス・スタッツともにリーグトップクラスであり、大きな異論はない。

<スターター>

・ケビン・デゥラント (ネッツ:ケガで欠場予定)

・イヤニス・アテテクンポ(バックス)

・ジョエル・エンビードシクサーズ

・デマー・デローザン(ブルズ)

・トレイ・ヤング(ホークス)

 

リザーブについては下記の選手でどうだろうか。デゥラント欠場予定も考えて合計8人選んでみた。

<リザーブ>

・ザック・ラビーン(ブルズ)

・ジェームズ・ハーデン(ネッツ)

・フレッド・バンブリート(ラプターズ

・ダリアス・ガーランド(キャバリアーズ

・ジミー・バトラー(ヒート)

・ジャレッド・アレン(キャバリアーズ

・ジェイソン・テイタム(セルティックス)

・ドリュー・ホリデー(バックス)

 

ビーン、ハーデンに異論は少ないだろう。それぞれリーグトップクラスのチームを支えるNo.2であり、スタッツも文句はない。衰えが見られるハーデンだが、オフェンスの面ではまだまだやれる。バトラーもリーグトップクラスのヒートのNo.1プレイヤーとして申し分ない成績である。欠場も多いがそれを上回る貢献度である。プレイオフ圏内で頑張っているラプターズのエースとなったバンブリートもオフェンス、ディフェンスの両面で手薄なチームを支えている。彼がドラフト圏外だったことを考えるととんでもない躍進である。

 

今年の一番のサプライズチームのキャブスからそれぞれ初選出になるガーランドとアレンを選んでみた。ルーキーのエバン・モーブリーのチームへのインパクトもすごいのだが、スタッツも考慮して最近アシスト繰り出しまくりのガーランドとディフェンスと圧倒的なFG%を誇るアレンを重視した。

f:id:atsukobe:20220130220902j:plain

キャブスを一気にプレイオフチームに押し上げたガーランドとアレン

最後の2スポットはホリデー、テイタム、チームメイトのジェイレン・ブラウンで検討したが、イースト10位ギリギリのセルティックスから2人選出はおかしいという基準から、チームのエースとしての重責があるテイタムに絞った。(ブラウンも個人成績はテイタムと相違がないのだが、、、) バックスからは、今年ちょっと微妙なクリス・ミドルトンよりオフェンス好調なホリデーの方が貢献度高いと判断。

 

・ウエスタンカンファレンス・

エストのスターターについては下記の通り。今年スーパースターに名乗りを上げたモラントについては先日ブログでまとめたのでご覧頂きたい。

atsukobe.hatenablog.com

 

<スターター>

レブロン・ジェームズ (レイカーズ)

・二コラ・ヨキッチ(ナゲッツ

・アンドリュー・ウィギンズ(ウォーリアーズ)

・ステファン・カリー(ウォーリアーズ)

・ジャ・モラント(グリズリーズ

 

リザーブでドレイモンド・グリーンを選んでいるが、彼もケガで欠場になりそうなので、ウエストも8人選んでみる。

 

<リザーブ>

クリス・ポール(サンズ)

・デビン・ブッカー(サンズ)

・ドノバン・ミッチェル(ジャズ)

・ルーカ・ドンチッチ(マーベリックス

・ルディ・ゴルベア(ジャズ)

・カール=アンソニー・タウンズ(ティンバーウルブズ)

・ドレイモンド・グリーン(ウォーリアーズ)

・デジャンテ・マレー(スパーズ)

 

ポールとブッカーは文句なしの選出であろうし、前述の通りミッチェル、ゴルベアも安定したジャズのそれぞれオフェンスとディフェンスのエースとして選ばれて然るべきである。シーズン前半コンディションの悪さと成績の不調で批判を浴びたドンチッチも一気に調子を上げてきて、チームも最近好調なので順当であろう。ビッグマンとしてのオフェンスレパートリーは歴代屈指のタウンズも手薄なウエストのフロントコート陣では妥当であろう。

 

グリーンはオフェンスの成績は全く目を見張るものはないが、チームの実質ポイントガードとしての役割を担っており、モーションとカットからなるウォーリアーズのオフェンスの組み立ては彼の頭脳が無ければ成立しないし、チームディフェンスへのインパクトは言うまでもない。彼が欠場した場合のスポットを誰にするかは、マレーかアンソニーデイビス、サンダーのSGAかで悩んだが、今年の出場試合数、チーム成績を総合的に考慮してマレーを選んだ。スパーズのエースとして若手だらけのスパーズの大黒柱となった彼はオフェンスのレパートリーが増え、今後更なる活躍が期待される。正直実力と個人成績でいったらデイビスの方がふさわしいのかもしれないのだが、やる気があまり感じられないプレイとケガでの欠場数が大きな減点となって選出しなかった。

f:id:atsukobe:20220130223839j:plain

知名度は高くないが、マレーがオールスターになっても驚かないように!

今はNFLのプレイオフが大盛り上がりしていたり、トム・ブレイディの引退報道などバスケに目がいきづらいアメリカスポーツ界だが、スーパーボールの翌週にオールスターということで本格的なバスケシーズンになっていくのが待ちきれない。

日本の偏差値至上主義の問題

どうも。いつもはNBAアメリカ文化について語っていくこのブログですが、本日は少し違う視点で日本の教育の問題について個人的な経験とそこから見える社会の不条理を含めて考えたいと思う。きっかけとしては、先日東大前で起きた高校生2年生による刺傷事件について、個人的にも非常に考えさせられたこと、自分と少し重ねる部分もあったことからである。

 

もちろん、人を刺す、電車を放火しようとする行為は全く許されるものではなく彼が厳しく裁かれるのは当然だと思うのだが、この原因は決して彼一人の問題ではなく、日本の教育システムが学生に与えるプレッシャーと、いい学校に行くことでステータスが決まってしまう世の中を表す事象だと改めて感じた。日本の教育の問題について6つのセクションに分けて考えていくが、今回記載する内容はあくまで私の個人的な経験をベースにしており、大学まで行くことを想定した教育の内容であることをご了承頂きたい。

f:id:atsukobe:20220123234936j:plain



<レールにしかれる学歴主義>

これについては私が小学生の時から疑問に思っているし、個人的にも経験したことだが、日本である程度知名度のある会社に就職する為には往往にして大学でフィルターがかかる。そしていわゆるいい大学=偏差値の高い大学に入るには、往々にしていい中高に行かなければ行けないとなる。私立の多い東京だと特に中学でどこにいるかが非常に重要になってきて、中高一貫を狙う場合が増える。(更に凄い人は小学校から、はたまた幼稚園から私立というケースもあるが) もちろん中学で公立に行く優秀な人材もいるのだが、教育の水準が私立と公立で大きく違ってきてしまう。そうすると私立に入れなければ行けないと考える親が多くなり、塾に行かせるわけだが、小学生で自ら塾に行きたいという人は少ないだろう。(これまた特別な学生や帰国子女などはまた別であるだろうが)

私が小学生だった時から今でも変わらず、とりあえずいい学校に行かせるのが親の目的になりがちである。

 

<塾の存在>

ここで問題になるのが、日本の受験システムと塾の存在である。特に小学校に置いて、学校の難易度と塾の難易度は雲泥の差がある。受験で出てくる問題に立ち向かう為には塾に行く必要があるのだが、まだ10歳前後の子供にはそれが大きな負担となる。私自身も小学校4年で塾に行きはじめ、学校のレベルとの違いに驚愕したと同時にどうしてこんな勉強をしなければいけないのだとものすごくストレスがかかったことを覚えている。何せストレスからやけ食いをして、野球をやりなが3か月で7キロ太ったほどである。私はとにかく塾に行く意味、塾に行かなければ受験で成功できない構造に納得がいかなかった。塾にとっては難関校の合格人数がビジネス拡大となるわけだし、別に勉強する意味などを教えてくれない。それは中学受験に限らず、高校・大学受験でも同じである。塾なんて行かなくて良い成績を出せるようになるのが本来の教育であり、根底から塾のレベルと学校教育のレベルの差を狭くすることが日本の教育で最も大きな課題の1つだと私は考えている。

 

<偏差値という物差し>

そして塾が存在する最大の理由は日本の偏差値大好きな社会にある。いい学校に行っている事がその人の価値となるというのが当たり前になっており、学校に入った後の事は一般的に大きな指標にならない。クイズ番組の高学歴芸能人などが最たる例で、偏差値の高い大学に行くことが偉いという風潮にずっとなっていると思う。メディアや周りの大人がそうやって学歴高い人を持ち上げるのであれば、視野が狭くなりがちな学生時代なんて、とにかく学校の偏差値で物事を考えてしまうことが多いはずである。親も、学校の先生も、塾もそれを人の物差しに使っているのだから。

 

私個人の話では、従弟含めて親戚に高学歴な人間が揃っていた。塾に数年行ったことで小6の時点ではそれが当たり前になってしまった私も偏差値の高い中学を狙っていた。然し受験本番で第1、第2志望で失敗してしまい、周りの親戚より偏差値の低い学校に行くことになってしまた。これが私自身のもの強烈な劣等感に繋がり、大学だけはいいとこに進学したい、皆を見返したいと超ガリ勉となるのである。中学に入ってから私の親からは特に勉強しなさい、いい大学行きなさいと強制されたことは一度もなかったのだが、偏差値という価値観でしか物事を考えられなかった私はとにかく一心不乱に突っ走しった。

 

<将来の目標を教えない日本の教育現場>

学歴至上主義に加えて、日本の教育で一番問題だと感じるのが将来どうなりたいかを教えないことである。私も無我夢中で勉強をしたのはいいが、じゃあ大学に入ってどうなりたいか、将来どういった仕事をしたいかというビジョンを全く考えていなかった。いい大学に行くのだということが最終目標になってしまい、その後の事が全く頭になかったのである。視野の狭い学生が陥りやすいこの罠を大人がちゃんと諭してあげることができればいいのだが、塾でも学校 (特に進学校) でも大学への進学が全ての目的になってしまい夢や人生の目的を教えてくれない。個人的にも中高時代の先生に将来どうなりたいのかという質問を投げかけられることなかったし、自分の友達にごく一部しか夢を持った人はいなかった。何が何でもいい大学にいくことだけが良きとされ、結局学歴が神格化されてしまうのである。

 

今回事件を起こした高校生も東大の理三に行くことだけが目標になってしまっていたのだろう。彼の学校や家庭での様子は分からないのであくまでの推測だが、本来であれば医者になることが目標でなければいけないところ、あくまでステップである東大の医学部ということだけがフォーカスになったことで必要以上のプレッシャーを自分にかけたのだと思う。東大の理三なんて本当にバケモノのような学力の人間しか入れない場所にだけ焦点を当ててしまったのは、彼も周りの人間もその後のビジョンが見えてなかったことによるだろう。医者になるには他の大学もたくさんあるわけだし、(学費はもちろん私立だとバカ高くなるが)、東大に行ったから優秀な医者になるとは限らない。そこを事前にしっかりと伝えてあげられることができなかったのは日本の社会と教育現場の責任でもあると思っている。

 

<高校3年生の実績で決まる違和感>

学歴社会の更なる違和感は、高校3年生の受験の結果で色んな事が決まってしまう点である。上述の通り、現状の新卒入社の制度では学歴でフィルターがかかることが多い。特に大企業になればなるほど学歴フィルターはかなり厳しい。然し、そのフィルターは高校3年生の時のものであり、本来であれば大学4年間で何をしたかの方が重要であるはずである。大学院に行けば最終学歴で更に上のとこに行ける可能性もあるが、4年間の大学生活だけであれば、あくまで高校生の実績が社会人で重視される。

 

また、学部についても大学入学時点で決めることは、学生にとっては負担が大きすぎると思う。大学生活を続ける中で自分はこれをしたいんだと考える機会もあるはずだが、入学後に学部を変えるとなるとかなり大変である。塾や高校が将来の目標の大事さをろくに教えてないにもかかわらず、高3の時点で学部を決めろというのは酷である。医者を目指していた人間だって、大学に入ってみて授業を受けたらやっぱり違うとなることはあるかもしれないし、より精神も成熟していく中で自分の選択肢を考えられる方が余裕を持って人生を過ごせるではないかと思う。

 

そして何より特に文系の学生は大学時代勉強を全然しなくて卒業できてしまうのはどう考えてもおかしい。せめて受験時のレベルとプレッシャーを少しでも緩め、大学でも勉強や研究をして実績を作っていく制度を形成することが必要であり、成人前の実績でその後の人生が決まってしまうのは社会の欠格であると思う。

 

<アメリカの大学から参考にできる事>

中学から大学受験に向けてまっしぐらに勉強してきた私だったが、途中からアメリカ文化に非常に興味を持ち、更に高校に入って改めて受験制度の違和感を感じたことで、アメリカの大学に行くことを決意する。親の反対など諸々あったが、運良くアメリカの大学に進学できて、無事卒業することもできた。アメリカの教育も、半端じゃない学費の高さなど色々と問題もあるが日本が参考とすべき点もある。

 

1. 公立の学校に行くのも当たり前

2. 自分の意見を発表する機会が多い (ひたすら教科書ベースで聞くことがメインの日本との違いは明確)

3. 日本の一発受験ではなく、高校自体に何をしたかを大事にし、学校の成績と成績以外のアクティビティ、センター試験のようなSATも複数回受けた中でのベストスコアを出せて、総合的な判断で合否が決まる

4. 大学入学時に学部が決まることは稀で、大学1年目や2年目で進路を決められる

5. 大学名ももちろん重要だが、それ以上に何をしていたかを評価する

 

ポイント4については、例えば医者志望の人も、学部時代は医学部である必要はなく、その後メディカルスクールに行ける。その分お金と時間はかかるが、じっくりと自分のやりたいことを考えた人間が医者を目指せることは、高校3年までに医者になることを決めなきゃいけない日本と大違いである。ちなみに、日本の医学部の質は高いかもしれないが、医師国家試験の合格率が90%なのも、高3時点の学力で進路が決められる実態を大いに表している。また、日本の進学塾のような存在はなく学校での勉強をベースにする点も大きく違う。それだけで成熟段階の学生にかかるプレッシャーを少しでも軽減できるのではないか。

 

日本の高校までの教育レベルの高さは評価されるべきであるし、現状のシステムでも。自分で考えて夢をかなえられる人もたくさんいる。然し、その人を評価する物差しとして、学歴を振りかざす社会とそれを持ちあげるメディアの体質が変わらない限り、その環境にいる教師、学生、保護者の思考は凝り固まってしまう。それは成長の時間と付随するサポートが必要な10代の人間にはものすごいストレスをかけることになり、精神的に追い詰められた受験生によって今回のような事件が繰り返えされることは十分にあり得る。

 

取り入れられる海外の考えを活かしつ、全ての人が質の高い教育を受けられ、学歴に縛られない教育システムに日本が根本的に変わることを切に願っているし、変えていかなければならないと改めて決意させられた。

ジャ・モラントとグリズリーズの覚醒

どうも。オミクロン株の感染者数が日本でも大量に増えているが、NBAでも猛威を振るい、選手だけでなくコーチやスタッフも隔離を余儀なくされている。それにより、知らない選手や昔懐かしい選手がどの試合でも登場してきており、ゲームのクオリティはかなり下がってしまっている気がするが、なんとか試合を続けられる以上NBAがシャットダウンすることはなさそうである。特に10日契約の選手が激増しており、先週はこのチームでプレイしていたのに、次の週では全く違うチームにいたりとびっくりすることの連続があったりする。個人的には"Born Ready"ことランス・スティーブンソンが3度目のペイサーズ復帰で結構活躍していることにわくわくする。色々と問題がある選手ではあるが、必要以上に派手なプレーは健在で、紛れもないエンターテイナーである。

www.youtube.com

 

また順位を見ていくと、イーストでは最近はネッツやバックスが調子を落としている。それにより好調をキープしているブルズがとうとうイースト1位になった。ブルズの躍進とその最大の貢献者であるデマー・デローザンについては先日書いたので是非見て頂きたい。

atsukobe.hatenablog.com

 

エストにおいては、ウォーリアーズとサンズが1つ抜けている感はあり、ウォーリアーズにはクレイ・トンプソンが2年ぶりに帰ってくるということで、既にNo.1シードを争っている中で大きな起爆剤となるだろう。サンズは昨年のファイナル進出の勢いをそのままに非常に安定した成績を残している。そして、安定と言えばユタ・ジャズも隙が少なく、3ポイントを打ちまくるオフェンスとドノバン・ミッチェルのスターパワー、ゴルベアのディフェンスによってリーグ3位はほぼ確定だろう。

 

そんなウエストTop3に食い込んでくるような大躍進をしているのがメンフィス・グリズリーズである。昨年プレイイントーナメントでウォーリアーズを破ってプレイオフに進出し、第1シードのジャズ相手に善戦をしたグリズリーズではあるが、今年もプレイオフ進出ギリギリぐらいのレベルではないかと予想された。それが蓋を開けてみたら第5シードと大きな差をつけての第4位と、このままシーズン終了までホームコートアドバンテージ確保が行けるのではないかと思う。今年はナゲッツクリッパーズがケガ人続出、レイカーズはドラマだらけで戦力が弱く、ブレイザーズもプレイオフ圏外と過去に強かったチームが苦戦していることも追い風にはなっている。

 

然し、他チームが脱落しているからというのはグリズリーズに失礼である。このチームの躍進は紛れもなくリアルで、その最大の貢献者は今年3年目のジャ・モラントである。2019年にドラフト3位で入団した彼は1年目から平均18点、7アシストといきなり活躍をして新人王を獲得すると、2年目はプレイオフに進出して、ファーストラウンド第2戦では47得点を記録し、今後のポテンシャルを大いに示した。そして、今年は平均得点を25点まで上げ、数々のハイライトプレイとチームが強豪の仲間入りをしたことで、スーパースターへの道を着実に駆け上がっている。リーグに入った当初は、皆の大注目選手だったザイオン・ウィリアムソンばかり取り上げられていたが、ザイオン以上にアクロバティックでエキサイティングなプレイヤーであるのがモラントであり、やっと彼へのフォーカスがされるようになったのは単純にうれしい。

f:id:atsukobe:20220110220420j:plain

 

ジャの凄さをまとめてみるとこんな感じである。

1) 圧倒的な身体能力

モラントを見てまず目につくのが彼の並外れた身体能力である。バケモノだらけのNBAの中でも彼のスピード、ジャンプ力、切り返しのクイックネスはリーグで5本の指に入るレベルであり、全盛期のデリック・ローズやラッセル・ウエストブルックを彷彿させる。ただ高くジャンプするだけでなく、パワーも兼ね添えており、ビッグマン相手に数々のダンクをトライすることができ、どんな相手でもポスターを狙ってくる。ジャンプ力がありすぎる為、ダンクに失敗した時の落下の際大きなケガをしてしまわないかと心配になってしまうほどである。

www.youtube.com

 

直近のレイカーズ戦では、バックボードに頭をぶつけるほどジャンプしながらゴールテンドを避けてブロックをしており、単純なジャンプ力でいったら現在リーグトップかもしれない。(このブロックはマジですごい)

www.youtube.com

 

そして彼は滞空時間が圧倒的で、ジャンプしてからディフェンダーも一緒にジャンプして、ディフェンダーが先に着地した後に彼がレイアップをするシーンも多々見られる。ただ滞空時間が長いだけでなく、ディフェンダーにぶつかりながらや空中でバランスを崩さないボディコントロールはカイリー・アービングを彷彿とさせる。彼はこの恵まれた身体能力を存分に生かし、ペイントで得点を量産している。(現在ペイントの得点数第3位!!)

www.youtube.com

 

2) コートビジョン

ジャの凄いところは、単純に運動神経がいいだけでなく、ポイントガードとして必要なコートビジョンとパス能力も備えているところである。これについてはローズやウエストブルック、カイリー以上のものを持っている。ルーカ・ドンチッチやトレイ・ヤングのようなコートビジョンとまではいかないが、エリートPGとして必要なレベルは兼ね備えており、ペネトレーションからのキックアウト、ペイント内でカットしてきた選手を見つけるなどを得意としている。また上述のような空中での長い滞空時間の間にシュートかパスを決めて、パスを選択してアシストにつなげることも多々ある。最近はとにかくスコアファーストのポイントガードが増えているが、彼は自分の得点とチームメイトのセットアップをうまく組み合わせたハイブリット型である。

www.youtube.com

 

3) 一人よがりにならない

ポイント2)にも共通することだが、彼は最近の若手スターと違いボールを独占しすぎない強みもある。決してカリーのように常に動き回ることはしないが、ヤングやルーカのようにボールを独占しまくり、ボールを持たない時は全く何もしないといった傾向は見れない。チームメイトにボールを渡して、他のガードがオフェンスのポイントになることを嫌がらず、接戦のクラッチの状況でもボールを手放すことを拒まないのは、3年目のスター選手としては評価されるべきである。

 

4)競争心とリーダーシップ

宇宙レベルの身体能力とバスケセンスを持った選手は他にもいるが、皆が成功するわけではない。NBAのスター選手とその他の選手を隔てるのは負けず嫌いな性格とメンタルのタフさである。どんなにセンスがあっても、自分は誰にも負けない、絶対に勝ってやるという精神と努力が伴わなければ一流にはなれない。モラントはこの競争心とタフさをリーグに入った時から兼ね備えていた。彼のインタビューや試合中のしぐさなどを見れば明らかだが、ジャは誰も恐れていないし、自分の目の前に立ちはだかる壁を全部打ち破ろうとしてくるのである。

www.youtube.com

 

ただ競争心が強いだけでなく、周りを鼓舞しようというリーダシップスキルもルーキー時代から持っており、現在最もケミストリーがいいチームであろうグリズリーズのまとめ役となっており、真のリーダーと言えるだろう。グリズリーズのベンチを見れば、誰もがチームメイトを応援していることが垣間見え、非常に雰囲気の良いチームであるとことがすぐわかる。その中心に彼がいるということは、彼の求心力の高さを表していると言える。

 

<モラントが向上しなければいけない点>

モラントの良い事ばかり書いたが、決して完璧な選手ではなくまだまだ改善の余地がある。まずは、ジャンプショットの安定度であろう。今年は3ポイントが38% (1/10日時点) と昨年の30%から大いに向上はしているが、まだまだ2ポイント含めてすごい安定しているかというとそうではない。但し3ポイントが改善されてきているように、モラントは常に努力をする選手であるので、今後数年でジャンプショットも平均以上レベルになる可能性は十分ある。

 

それ以上にレベルアップしなければいけないのがディフェンスである。彼のディフェンスはリーグ平均以下であり、注意力や頑張りも正直あまり高くない。ディフェンス時はオフェンスのように足が動いていないし、自分のマークマンのカットを見逃してしまうなどがしょっちゅう見受けられる。今年彼がケガで12試合欠場した際に、グリズリーズはリーグトップのディフェンス力を誇っていたのに対して、彼が欠場する前のチームはリーグ最下位のディフェンスであった。不在時に相手チームのシュート確率がたまたま低かったということもあるし、サンプルサイズも少ない為、一概にモラントが全ての原因とは言えないが、現状彼の存在がディフェンスにおいてはネガティブな影響をもたらしている。今後ジャが新のスーパースターとなるには、ディフェンスへの取り組みが重要となるだろう。

 

<グリズリーズの底力>

グリズリーズはモラントばかりに注目が集まりがちではあるが、チームの総合力が高いのも特徴である。なにせ彼が12試合不在の間、グリズリーズは10勝2敗という快進撃を見せた。上述のジャ抜きのディフェンス力は本物で、各ポジションに優れたディフェンダーが揃っている。また、ロスターの各選手の実力が高く、リーグでもトップクラスの若手の選手層とベンチ力の高さを誇っている。2年目のデズモンド・ベインは得意のシュート力を活かして安定したスコアラーとして成長をしているし、ディロン・ブルックスも得点力と相手を追いかけますタフなディフェンスが健在である。4年目のジャレン・ジャクソンJrはオフェンスはまだまだ成長段階だが、高さと機動力を生かしたディフェンスは確実に向上している。更に新加入のベテラン、スティーブン・アダムスはディフェンスとリバウンドに加えて、これまで見せてこなかったパスセンスも開花しており、ポイントセンター的な役割を担っている。

 

更にヘッドコーチのテイラー・ジェンキンスの存在も見逃してはいけない。モラントと同じく3年目のヘッドコーチであり、まだ若いコーチだが、彼の戦術やインバウンドプレイのクリエイティビティはもっと注目されるべきだし、若い選手ばかりのチームを束ねるコーチング力はリーグトップレベルであると言える。

 

<グリズリーズのポテンシャル>

現在ウエスト4位のグリズリーズが今年の優勝候補の1つかと言われるとそうではなく、上位3チームとのギャップはかなり大きい。ウォーリアーズ、サンズ、ジャズはいずれも選手層の厚さに加えてプレイオフ経験が豊富であり、まだまだ若手ばかりのグリズリーズとは実力の差は明らかである。またファーストラウンドでレイカーズナゲッツとマッチアップになったら、敗退することも十分考えられる。然し、今シーズンの飛躍は確実にチームの自信につながるだろうし、今後数年でモラントがスーパースターの座をに着くとともに、グリズリーズは長年リーグが恐れるチームとなっていくだろう。

デマー・デローザンの活躍とミッドレンジゲームの進化

どうも。コロナのアウトブレイクは年末に向けて更に加速しており、一大イベントのクリスマスゲームも試合自体は非常に面白かったのだが (5戦中4試合が接戦) 、デゥラント、ヤング、ルーカなどスター選手が多く欠場したこともあって物足りなさも残った。NBAとコロナの闘いについては先日まとめたので、そちらを是非ご覧頂きたい。

atsukobe.hatenablog.com

 

そんなコロナの影響を非常に大きく受けたチームの1つであるシカゴ・ブルズは、昨シーズンまでプレイオフ圏外が続いた今シーズン躍進しており、現在イースト2位の勝率である。ザック・ラビーンというスコアラーに加えて、プレイメイクとディフェンスに優れたロンゾ・ボールやアレックス・カルーソが加入したことでオフェンスとディフェンスのバランスが優れたチームに進化したが、最もインパクトがあったのがデマー・デローザンの加入である。

f:id:atsukobe:20211226001835j:plain

 

デローザンと言えば、ラプターズ時代にスコアラーとして台頭をしたが、プレイオフレブロン擁するキャバリアーズに散々苦しめられ、プレイオフに弱いというレッテルがついてしまった。そして何より3ポイントの革命が起きた現代NBAにおいて、3ポイントライン内のミドルレンジのジャンパーは非効率だと考えられ、3ポイントが苦手でミッドレンジで勝負するデローザンの評価が落ちてしまっていた。ただここにきてミドルレンジジャンパーの考え方も変わってきており、デローザンもMVP候補の一人にまでになった。そこで、今回はデローザンの個人としての進化とリーグ全体の2ポイントショットの進化について考えてみたい。

 

ちなみに3ポイントの進化と歴史については、つい最近記事にしたのでそちらも是非ご参考頂きたい。

atsukobe.hatenablog.com

 

<デマー・デローザンの評価の変化>

前述のようにデローザンはラプターズ時代からスコアラーとして台頭を表し、平均20点以上をコンスタントに記録する。同時にラプターズイーストの強豪となっていき、2015-2018年まで毎年プレイオフの上位シードとなる。その間にデローザンは着実に実力を上げていき、類まれな身体能力に加えて、リーグ屈指の中距離ジャンパーとフットワークを生かして、リーグトップクラスのミッドレンジの使い手となる。

www.youtube.com

 

ロサンゼルスのコンプトン生まれで、コービーがアイドルだったデマーは彼のプレイスタイルを継承していき最も安定したスコアラーの一人とはなるのだが、3ポイントがとにかく苦手で、確率低いし、本数も少ないままだった。彼がスターになったのは、ステファン・カリーが丁度MVPと優勝でリーグに旋風をし、アナリティクスがリーグを支配した時代である。ミッドレンジのジャンパーを中心にしたデマーのスアイルはアナリティックスの標的にされて、彼の評価を下げる要因となった。また、デマー自身もプレイオフで爆発できずに、毎プレイオフラプターズが苦戦を強いられたことで悪評を覆せなかった。更に追い打ちをかけるように、彼がスパーズにトレードされた代わりに加入したクワイ・レナードが2019プレイオフで大活躍をしてラプターズフランチャイズ初の優勝に導いたことで、比較対象となったデマーの評価がもっと下がってしまった。(彼がディフェンダーとして平均以下なことも大きいが)

 

スパーズに移籍後はラプターズ時代よりもプレイメイクに力を入れ、事実上のポイントガードとしての役割を担い、ミドルレンジの技術もどんどんと向上し、クリス・ポールやデゥラントと肩を並べるレベルとなっていた。然し、引き続き彼の3ポイントが上達せず、そもそもAttemptが現代NBAでは信じられない1本以下と打つ気すらなかった。そして彼が優勝争いから程遠いスパーズに所属していたこともあり、目立たない選手となったかつ個人の評価も上がらなかった。その為、彼がオフシーズンにシカゴ・ブルズと3年85億円の契約をした際は、多くの識者がお金払いすぎ、ブルズのスターのザック・ラビーンとプレーの相性が合わないと懐疑的な見方だった。私個人もディフェンスが弱いブルズにデローザンが入るのは更にディフェンスを弱体化させ、オフェンスにおいてもラビーンとのフィットが微妙だと思っていた。ブルズへの移籍が決定する前に、レイカーズやニックスも候補に囁かれていたが、昨シーズンまでの彼の評価が影響して両チームとも結局契約に向かわなかった。(今のデローザンの活躍を見たらどちらのチームもすごい後悔しているだろう、、、)

 

<ブルズでの開花>

そんな期待値低めで結成された新生ブルズであったが、蓋を開けてみると今年最もエキサイティングなチームとなり、デローザンがその中心となっている。ラプターズ時代に築いたミドルレンジとスパーズで鍛えたプレイメイキングの能力が交わり、更には4Qの得点数もリーグトップとクラッチ力にも磨きがかかっている。今年で32歳の彼だが今が全盛期と言っていいだろう。

 

スリーポイントもスパーズ在籍時よりはトライしているが、今でも基本ミッドレンジが主戦場となっている。それでも上手くいっているのは彼の周りにシューターが揃っているからだろう。ボールとカルーソはスポットアップから打てるし、センターのブサビッチもシュートが比較的うまいセンターであり、デローザンがシューターじゃなくてもフロアが開く。また、第2スコアラーのラビーンもスリーとドライブが得意な選手かつハーデンのようにボールを支配しないので、思った以上にコンビネーションが上手くいっている。つまりデローザンがボールを保持している時に、全員スリーポイントラインで待機、もしくはゴール下にカットできるのである。特にラビーンとはお互い信頼し合っているようで、2人とも優勝経験がないためか、それぞれ一定の犠牲を払いつつ、お互いの強みを活かそうとしているのが伺える。実際デローザンが平均26点、ラビーンも平均25点とそれぞれがリーグトップ10に入る得点数と非常に強力なデゥオとなっている。

 

デローザンはチーム構成とこれまで培ってきたスキルによって、ブルズ内でボールを一番保持するようになったわけだが、特に第4Qの活躍が凄まじい。3ポイントレボリューションによって、どのチームもがんがんスリーを狙うようになったわけだが、それでも接戦の第4Qはディフェンスがタイトになることにより、簡単にオープンスリーは狙えない。そうすると1on1オフェンスが非常に重要になるのだが、その時にミッドレンジからジャンプショットを確実に決められる選手が重宝される。スリーの一辺倒は爆発しればすごいが、ステファンカリーでもない限り確率が落ちる。そこで、ある程度安定した2点の確保が必要なのである。更にデローザンは、ターンオーバーも少なく (平均2以下)と、上達したプレイメイクによって安心してボールを任せられる。(ラビーンはタフショットを決めるのがすごい上手いが、デシジョンメイキングでまだ不安が残る) こうして、デローザンは過去最高の成績と評価を今シーズン残してきている。

www.youtube.com

 

<ミッドレンジの考えの変化>

ミッドレンジショットは3ポイントラインが79年に出来て以降、長らくトップスコアラーだけでなく各選手の要となる手段であった。特にマイケル・ジョーダンが大得意とし、ブルズ後期3連覇の時はミッドレンジでのポストアップフェイダウェイ、ドリブルからの2ポイントショットが彼の主戦場となっていた。彼のフットワーク、ショットの正確性と美しさによってその後のスター選手の多くがこのスタイルを真似するようになる。ジョーダンは引退するまでスリーの取得にはあまり重きを置かなかった。

www.youtube.com

 

その後ジョーダン2世として、コービーがフェイダウェイとミドルレンジのマスターとなり、その他トレイシー・マグレディポール・ピアースなどもフェイダウェイを得意とした。また、ビッグマンでもケビン・ガーネットやダークノウィツキ―、ラマーカス・オルドリッジが主にミッドレンジをベースに多くの得点を稼いだ。(ダークはスリーもたくさん決めたが、シグニチャームーブはフリースローラインからのフェイダウェイであろう)

www.youtube.com

 

それが2010年に入るとアナリティクスとカリーの登場によりどんどんとスリーが強調されるようになり、スター選手もスリーをどんとんと打っていくようになる。(というかスリーが得意な選手がスターになりやすくなっていく) 同じ2ポイントでもジャンプショットよりレイアップやダンクの方が高確率な為、各チームがスリーとレイアップばかり狙うオフェンスにシフトにする。(それを個人として最も体言したのがロケッツ時代のハーデンである) そうしてデローザンのように2ポイントしか稼げない選手が悪者かのようにメディアでも否定的な意見が増えるようになる。2015年から2019年頃まではある意味アナリティックスが行き過ぎた感があった。

 

そこがここ数年また変わってきているような気がしており、ミドルジャンパーもそれがかなりの高確率であれば狙うべきだという風潮に戻ってきたのでないかと思う。ラプターズで優勝した際、レナードは試合終盤多くのミッドレンジを決めてジョーダンを彷彿とさせる活躍をしたし、リーグベストスコアラーのKDも一番得意なのはスリーではなく中距離ショットである。デビン・ブッカー、ジミー・バトラー、クリス・ミドルトンなどのスコアラーはミドルレンジからオフェンスを始めることは多いし、クリス・ポールはミスター・ミッドレンジで有名である。要はジャンプショットでも精度が高い選手が打てば、レイアップを狙うのと同じぐらいの確率で決められるのである。であれば、彼らが打っても問題ない。反対にスター選手でない人がスリーの代わりに2ポイントを打っても非効率だから彼らはスリーにフォーカスすべきということである。一時は"Midrange is dead"などと言われていたが、決してなくなったわけではない。

www.youtube.com

 

ディフェンスがタイトな中で簡単にドライブできない試合終盤、特にお互いを戦術を出し尽くしたプレイオフでは、最終的に誰が得点を決められるかが勝負になるわけで、1on1からのジャンプショット試合を勝ち抜く手段となる。それを圧倒的確率で決められる選手がいる限り、ミッドレンジの芸術は死なないだろう。

www.youtube.com

NBAのコロナアウトブレイクと今後への影響

どうも。NBAもシーズンの3分の1ぐらいが終了してきたが、コロナのアウトブレイクが止まらない。最初はシカゴ・ブルズで始まりはじめ、イヤニスやハーデン、KDなどのスーパースター含めて各チームで多くの選手が隔離を余儀なくされている。これにより、ロスターの半分ぐらいしか出場できないチームが出てきているだけでなく、一部のマッチアップは延期され始めている。既にオミクロンの感染者がNBA関係者に発見されているという事で、感染拡大は必至となっていたが、ここまで感染が進んでいるとなるとシーズンの中断も検討をし始めないけどいけないレベルになってきている。

f:id:atsukobe:20211222002542j:plain

今年躍進のブルズはデローザン、ラビーンのスターがコロナで試合も延期になった

<各試合への影響>

NFLなどでもアウトブレイクが起こっているが、バスケは15人しかロスターがいないという所が問題で、スターにとって代われる選手そうそう出てこれないのである。そうすると、NBAの「品質」が問題になってくる。最近の試合を見ていると、割と選手名たくさん知っている方の私ですら聞いたことない名前が両チームで出揃うことが増えている。それにより必然的にプレーのレベルは落ちてしまうし、何よりNBAファンの興味も落ちてしまう。特に現代NBAはスターが物を言うリーグである。知らない選手ばかり出てきて楽しめるのは本当のNBAジャンキーだけであろう。

 

例えば、先日ネッツはラプターズと対してOTでなんとか勝利したが、全く名前を聞いたことがなかった、ケスラー・エドワード、デイビッド・デゥークJr (なんとも言い難い名前だが、、、) がそれぞれ40分前後もプレーするというある意味全体未聞の試合であった。コロナのProtocoolに入る前のKDはこの試合で48分もプレイしており、選手層が薄くなくなることで、スター選手へのレギュラーシーズン中の負担がかなり大きくなっている。ここ最近のトレンドであったLoad Managementとは完全に相反する事態となっているわけである。スター選手への負担が強くなればなるほどケガのリスクも増えるわけで、レギュラーシーズンの終盤の怪我やプレイオフ中の負担が選手達の限界を超えるレベルになることも考えられる。

f:id:atsukobe:20211222003313j:plain

隔離を余儀なくされる前に凄まじい活躍をしていたデゥラント

 

<それでも強行されるシーズン>

上記のように、このままの状態でシーズンを続けることはリーグにとってもネガティブな話ばかりに見えるのだが、オーナー陣はシーズンをストップするつもりが全くない。なぜならどんなにプレーの質や有名な選手が出場できなくても、シーズンを続行し続けることでテレビのお金は一定入るし、何より収入の3分の1を占めるチケット代を手放したくないという気持ちが強いのだろう。コロナ直後の2020年のバブルプレイオフは結局リーグにとってかなり財政的にマイナスになったという話ではあるので、その二の舞を避けたい気持ちも分かる。ただ個人的には入れる観客の数を減らす、アリーナ内は必ずマスク着用を義務付けるなどしないと、観客だけでなくスタッフや選手がコロナにかかる可能性を高めってしまい、かなり悪影響であると考えている。観客席見渡してもマスクをしている人はほとんどいないし、それなのに満員で入っているのはどう考えてもリスクでしかない。(ポートランドだと結構みんなマスクしていて好印象だが)ちゃんとマスクをしている日本人と比べるとアメリカ人はやっぱり色々緩い。

 

頑なオーナーとリーグはどうにしかしてシーズンを続けようと、コロナで出場不可となったプレイヤーの数だけ各チームが新しい選手をサインできるようにルールを変更した。これによりGリーグの選手達が10日契約などを結んでいる。彼らにとってはまたとないチャンスではあるかもしれないが、コロナになった選手が完治したらまたGリーグに戻るだけで、チームスタッフは使い捨てとして見ていないだろう。

 

<議論を呼ぶカイリーの復帰>

先述のコロナ続出のネッツに話を戻すと、こんな状況の中、選手が足りないという理由でワクチン未接種のカイリー・アービングロスターに戻すと宣言した。カイリー対ワクチンについてはシーズン開幕前に言及したが、彼は一貫してワクチン接種を拒否し、現在も未接種である。

atsukobe.hatenablog.com

 

ニューヨーク市の法律でワクチン未接種の選手はホーム試合に出場できないという決まりがあり、ワクチン規制が緩いアウェイゲームだけ参加するか、完全にカイリーをシャットダウンするかの2択を迫られたネッツは当初は後者を選択した。(チームケミストリーや戦術の一貫性のためであると思うが)それがここにきてオミクロンだけでなくデルタ株も引き続き感染が続く状況で、選手不足の為にコロナを更に広める可能性がある彼を復活させるという決断には非常に疑問符が残るし、ネッツの倫理観を疑う。コロナが猛威を振るう中でコロナの脅威をリーグに戻すのは、ほんとちぐはぐであり、もっと非難されるべきであろう

 

そんなカイリーはチームに戻るという発表がされて僅か2日でSafety Protocoolで隔離される事態となったのはなんとも皮肉な話である。

 

<読めないシーズン>

コロナの終焉が見えない中、今年のレギュラーシーズンの勝率はコロナとケガの影響を最小限に受けたチームがトップになっていくだろう。今のところサンズやウォーリアーズはコロナの被害は少なめだが、いつ爆発してもおかしくない。イヤニスがコロナになる前好調気味になっていたバックスは、ミドルトンの怪我も重なりまた負けが込んでいるし、ブルズは2試合の延期を余儀なくされた。単純な選手層とチームの総合力以上に、今年は運が物をいうシーズンとなることは必至であり、予想のつかない恐怖が付きまとう何とも落ち着かない展開となるだろう。

ステファン・カリーとNBAにおける3ポイントの歴史

どうも。ステファン・カリーがレイ・アレンの持つ歴代3ポイントの数を後少しで上回りそうということで、アメリカのスポーツメディアが大騒ぎしている最近のNBAだが、その記念として今回はNBAにおける3ポイントの歴史ついてざっくりと書いてみたい。カリーの登場はNBAのオフェンススタイルに大きな影響を与えたことは皆さんご存じだろうが、どうやってここに辿りついたのだろうか。

 

そもそも3ポイントシュートはNBAの初期には導入されていなかった。その為60年代に活躍したレジェンドのジェリー・ウエスピート・マラビッチは3ポイントレンジから打っていたのに、2点としか計算されなかったわけである。2ポイントかフリースローだけのなか1試合平均30得点を叩き出していたかつ、ペースが今よりも全然クイックだった時代に3ポイントがあったら、彼らの総得点数は大きく変わっていただろう。

f:id:atsukobe:20211213002334j:plain

ロゴことジェリー・ウエス

 

また、70年代に活躍したボブ・マッカデゥ―はセンターながらロングレンジのショットを打つ選手の元祖のような存在で、その後のシューティング・ビッグマンの形を作った選手と言えるが、彼も3ポイントの歴史に埋もれってしまった一人である。

f:id:atsukobe:20211213002519j:plain

ビッグマンシューターの先駆けであるマッカデゥ―

 

3ポイント自体は、NBAのライバルとなっていたABA (よりエンターテイメント性に特化し、ダンクやスリー、派手なドリブルを全面に出したリーグ) で60年代から採用されていたが、NBAでは1979-80年シーズンからやっとのこと使われるようになったのである。

 

然し、2ポイントしかなかったNBAでは当然ながらリング下にいるビッグマンが近距離でショットを決めるのが当たり前の必勝法となっていた。その為、スリーが解禁された以降も、どんなに優れたシューターがいてもまずはセンターにボールを渡すのが慣例化した。今考えてみたらなんとも効率が悪い話なのだが、ビッグマン以外の選手も3ポイントの中に入ってミッドレンジショットを中心とするのが普通だった。奇しくもNBAがスリーを導入した年に入団したレジェンドことラリー・バードは80年代最高のシューターと言われた。然しそんなバードですら、入団当初は1試合平均1本以下、最も多かった年でも3本程度と全然スリーを打っていなかったのである。その当時は3ポイントを正確に決められるシューターが少なかったこともあるだろうが、スリーは確率が悪く、ジャンプショット中心では勝てないとリーグ全体が思っていたわけである。

f:id:atsukobe:20211213002634j:plain

バードはもっとスリーを打てばよかったのに。。。

 

バード以外のトップスターもほとんど3ポイントは打っておらず、スリーが登場して5年後の1983-84年シーズンの1試合のリーグ平均3PAは驚愕の2.4である!!今じゃベンチから出てくるロールプレイヤーの数である。10年後の1988-89シーズンですら6.6本と今年 (35.5) の約5分の1である。

 

バードの後にトップスコアラーとなったマイケル・ジョーダンも引退までミッドレンジが主戦場で最後までスリーの確率は良くはなかった。ジョーダンの登場で徐々にガードの影響力が強くなってはいたが、まだまだリーグはビッグマンの支配権が強く、90年代でもスリーポイントシューターはどこかスペシャリスト感はあった。また、80年代のレイカーズに象徴されるようなガンガン点を取りに行く時代からディフェンス中心のチームが多くなり、NBAのスコアリングの割合はどんどん下がっていたのが90年代の特徴であった。そんな状況に嫌気がさしてか、NBAは1994-95シーズンから1996-97シーズンの3年間、スリーの距離を本来の23.9フィートから22フィートに縮めるという暴挙に出る。これにより、前年の93-94シーズンでリーグ平均9.9本だったスリーの本数が一気に15.3本まで跳ね上がった。同時に、短くなった3ポイントラインの恩権を受けて、リーグ平均の割合が33%から35.9%と上昇した。

 

ここで面白いのが、歴代最高の45.4%というスリーの確率を誇るスティーブ・カーは3ポイントラインが短くなった3年間で52.4%、51.6%、46.4%と大恩恵を受けていることである。スリーがずっと同じ距離だったらおそらく平均42、43%に落ち着いていたのではないかと想像する。

 

90年代のシューターとしては真っ先にレジ―・ミラーの名前が挙がると思う。彼はいわゆるシューターのスペシャリスト的な存在ながらチームのエースでもあったという希有な存在である。スクリーンを多用してオープンな状態を作り出してからのシュートが多かった彼だが、それでもまだ2ポイントの割合の方が多い。スリーの距離が短かった3シーズンを除いて最も3PAが高かった年で5.5本と今年のカリーの半分以下である。アナリティックスがミラーの時代に登場していたら、彼のAttemptも倍になっていただろう。

f:id:atsukobe:20211213005431j:plain

希代のクラッチシューターであるミラー

 

他にも90年代に活躍したグレン・ライス、ミッチ・リッチモンド、クリス・マリンなどはシュート力が売りではあったが、3ポイントをアベレージで5本以上狙うことはなかったし、3ポイントラインが元に戻った97-98シーズン以降はリーグ平均の3PA1試合13本台に戻ってしまった。

 

2000年代に入ってもスリーについて大きな変化はなかったのだが、レイ・アレンが積極的に3ポインターを狙うスコアラーとして台頭してくる。身体能力も優れ、スラッシャーとしても活躍したアレンだが、史上最も美しいシュートフォームから3ポイントを1試合5本以上打ち始め、全盛期の2005-2007シーズン頃は平均8本以上スリーとなっていった。レジ―で最も多かったのが5.5前後だったのを考えると3本近くとかなりの増加ではある。また、アレンがこれまでの選手と違ったのは、これまでスリーと言えばミラーのようにスクリーンでオープンの状態を作ってもらってが基本だった中、ドリブルからスリーを打てた点である。3ポイントの確率が常に40%を超えていたわけではないが、現在のスリー偏重の流れを作った革命的な選手の一人と言えるだろう。

f:id:atsukobe:20211213233449j:plain

レイ・アレンのフォームはただただ美しい

 

そして、アレンが全盛期に入るにつれてNBAのプレイにも変化が起きる。ジョーダンが繁栄を築いた90年代は決して面白いバスケスタイルの時期ではなく、とってもペースが遅くディフェンスとアイソレーション中心のバスケであった。それによってジョーダンという絶対的な存在がいなくなった後のNBAは人気が落ちた。因果関係は証明できないが、ディフェンス重視のスローなバスケで興味をなくしたファンは少なからずいたはずである。そんなときに彗星のごとく誕生したのが2000年代中期のフェニックス・サンズである。イタリアンバスケのスタイルを取り入れたヘッドコーチのマイク・ダントーニと歴代屈指のPGスティーブ・ナッシュによって、ショットクロック8秒以内にシュートをするというラン・ガンスタイルを作り上げたサンズはとにかくどんどんシュートを放ち、隙あらばスリーも積極的に狙っていた。2004-2005シーズンのリーグ平均3PAが15.8だったのに対して、サンズは平均24.7と10本近く多くスリーを打っていたのだからその違いは明らかだった。(ダントーニはとにかく確率より数に重きを置いていた) このスタイルは他NBAチームに大きな影響を与え、より多くのチームがどんどん得点を狙う姿勢を見せるようになっていくのだが、カリー擁するウォーリアーズの原型とも言えるかもしれない。

f:id:atsukobe:20211213235931j:plain

ナッシュ自身も史上最高の3ポイントシューターの一人である

この時期の更なる変化がNBAもAdvanced Statsを徐々に利用するようになっていった点である。アナリティックス自体は元々野球で導入され、ブラッド・ピットが主演の「マネーボール」で描かれているように、オークランド・アスレチックスがアナリティックス重視で成功した例として他のスポーツでも注目を集めるようになる。2000年代初頭から何人かバスケットボールアナリティックスで有名になった人物もいるが、リーグに最も影響を与えたのが2007年にロケッツのGMとなったダリル・マレーであろう。マレーはバスケ経験のない人物として初めてNBAGMとなり、プレイぶりやベーシックな数字ではなく、とにかく定量的なデータを重視するチーム作りを行った。それに伴い、例え2ポイントより3ポイントの方が入る確率は低くても、できる限り3点を狙った方が最終的な得点数は多くなると説いた。また、2ポイントを狙うならリム下のレイアップ以外は非効率と考え、ジョーダンやコービーが天下の宝刀としたミッドレンジショットが最も効率が悪いショットと考えた。これを体現したのが2012年からロケッツに加入したジェームズ・ハーデンである。彼に常にボールを持たせ、ひたすら彼がドライブしてレイアップかファールを受ける、スリーを打つ、もしくは3ポイントラインで待つチームメイトにパスをするという3択しかないという手法は非常に極端で、個人的には見ていてつまらないが、効率性を究極に突き詰めたワンマンショーであったわけである。(ハーデンはミッドレンジでほぼシュートを狙わない)

f:id:atsukobe:20211214001546j:plain

2010年代のリーグを象徴するスタイルのハーデン

 

オフェンス重視の流れ、アナリティックスの導入と重なって時代の申し子となったのが今回の主役のステファン・カリーである。カリーが他の選手と一線を画すのが、その圧倒的なボリュームと正確性、そしてシュートの難易度である。ボリュームで言ったらハーデンも1試合平均13.2本打ったことあるし、正確性だけでいったらスティーブ・カーやカスティーブ・ナッシュの方が数字上は上かもしれない。ただハーデンは平均36%ぐらいの確率だし、カーやナッシュは基本オープンな状態しかシュートは打たなかった。カリーの凄さは巧みなドリブルで自らスペースを作り出し、異次元なスリーを正確に大量に決められるところであり、この3つが揃った選手は今まで誰もいなかった。キャリアで1試合平均8.7本の3PAで43.2%の3P%というのは驚異的な数字である。(しかもドリブルからのシュートが半分)

 

カリーがスターとして頭角を現した2012-13シーズンでは、アベレージ本数が7.7とレイ・アレンとそこまで大きな違いはなかったが、その年のリーグ平均は20まで上がってきてはいた。そして彼が満場一致でMVPを受賞したシーズンはカリーもスリーの割合が平均11.2まで上昇し、リーグ平均も24.1と一気に跳ね上がっている。これは、カリーとクレイ・トンプソンを中心としたウォーリアーズのプレイとアナリティクスの影響を受けたチームがウォーリアーズを真似しようと試みた結果でもある。

 

どのチームも次のカリーを探してスリーを大量に打つようになり、特にここ5年のスリーの多さは異常というぐらいで、カリーの2016年のMVPシーズンからリーグ平均の1試合の3PAは、24.1→27.0→29.0→32.0→34.1→34.6→35.5 (今年)と毎年どんどん増えている。そろそろスリーだらけすぎて嫌気がさすぐらいである。

 

但しどのチームがいくらスリーばかり狙ったり、カリーのプレイスタイルを真似しようとしても、彼を超える存在は誰一人として表れていない。というか彼のレベルに近い選手すら存在しない。よくデイミアン・リラードがカリーと比べられるが、シュートの難易度やボリュームが近いだけで、リラードのスリーの確率が最高だった年で40%に対して、カリーはキャリアで一回も平均41%を下回ったことがない。正確性で言ったらこの二人は比べてものにならないのである。

 

カリーがどこまで記録を伸ばせて、今後何年間彼が3ポイント王者に君臨できるかは気になるところである。もちろんいずれ破られるのが歴代記録の常なのではあるが、カリーほどのボリュームと正確性を持ったプレイヤーがこの10年出てきていないことを考えると、カリーのスリーポイント数がカリーム・アブドゥルジャバーが30年以上保持している歴代得点数のように一生破られない圧倒的な数値となることも十分考えられる。

f:id:atsukobe:20211212232914j:plain