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NBAトレードデッドライン総評(個人的5大トレード)

どうも。NBAのトレードデットラインが終了した。ここ数年は、NBAのシーズンの中で、クリスマスデー、NBAファイナルに匹敵する重要な日であり、アメリカのスポーツメディアもトレードへのリアクションで大忙しとなる。プレイヤーの力が強くなり、シーズン中のビッグトレードが起きやすくなったことに加え、Twitterの力でWojやShamsなどのインサイダーが速報を伝えられるようになったことで、10年前と比べてこの日が一大イベントとなった。そんなデットラインを目前として今年も大いにゴシップで盛り上がったが、最終的に期待を裏切らない結果となったのではないか。そこで今回はデットライン直前で起きた5大トレードを振り返ってみたいと思う。

 

1. シクサーズとネッツ

主なフィラデルフィアの獲得:ジェームズ・ハーデン

主なネッツの獲得:ベン・シモンズ、セス・カリー、アンドレ・ドラモンド

 

今年のデットラインをこのトレード無しには語れない。昨年のプレイオフで戦犯扱いとなり、チームのいう事全て無視するという強行手段に出たベン・シモンズ、1年前にロケッツを人質に取りネッツへのトレードを強行したハーデンというイメージ悪い2人がトレードされるというリーグ史上最もプレイヤーエンパワーメントを象徴するトレードとなった。それぞれの悪態については下記の記事をご参考。

atsukobe.hatenablog.com

atsukobe.hatenablog.com

 

シクサーズの方から考えると結構なギャンブルである。元ロケッツのGMで現在シクサーズGMであるダリル・モレーは、アナリティックスとハーデンが超大好きな為、ひたすらハーデンに賭けてはいるが、ロケッツ時代のハーデンと比べて今年は明らかに衰えが見られている。未だに数試合に一回爆発はできるが、毎試合の安定を彼に求めることはもうできなさそうである。

 

彼はチームをセットアップする能力や、アシスト面では引き続きエリートだが、元来ボール保持時間が長く、周りにシューター、ピックアンドロールでロールするビッグマンとしか一緒になったことがないハーデンが、エンビードとマッチするかは微妙である。エンビードは、ポストアップから時間かけてゴール下でスコア・ファールを誘う、アウトサイドからも自分のペースでクリエイトすることが多い。更にハーデンは自分がボールを持ってないと全く動かないので、エンビードがボールを持った時のオフェンスのシステムを改善する必要がありそうである。

 

更にディフェンスの面でもハーデンは全く動かないし、常にスイッチディフェンスを求める彼と、ペイントエリアに居座ってスイッチを好まないリーグ屈指のディフェンダーであるエンビードがフラストレーション溜めることは十分考えられる。

 

色々ネガティブな要素はありつつ、一切プレーをしておらず今後も復帰するつもりはなかっただろう選手とセス・カリー、ドラモンドの代わりにハーデンが加わったことを考えたら、まあいいトレードと言わざる得ないだろうし、イーストの優勝候補の1つに確実になった。

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ネッツ側も考えてみると、デゥラント、カイリー、ハーデンが結成されて3人一緒にプレイしたのは合計16試合だけと考えるとなんとも悲しい。ハーデンを獲得する為に、ジャレッド・アレンやカリス・レヴァートといったアセットを手放したのに、その1年後にはハーデンをトレードするというのはチームとしては大きな痛手である。

 

とはいってもベン・シモンズがもしちゃんとプレイするならこのトレードは吉とでるかもしれない。デゥラントの怪我は心配だし、カイリーが未だにワクチンを打ってない為アウェイゲームしか出場できないという懸念点はあるが、もしこの2人が揃った状態に、セス・カリーとシモンズが加わるとなれば結構バランスがいいチームとなる。

 

ハーフコートオフェンスは常にKDとカイリーを中心に回るわけで、シモンズは苦手なシューティングを気にせずにトランジションでの爆発力とリーグ屈指のディフェンス力を披露できる。KD以外ディフェンス力が貧弱だったチームに、ガードからフォーワードまでストップできるシモンズが入るのは大きなプラスである。更に、シューターのジョー・ハリスがケガでシーズン絶望かもとも言われる中で、リーグ屈指のシューターであるカリーの存在は大きい。今年優勝狙えるかはデゥラント次第のとこはあるだろうが、何も見返りなしに、ハーデンが移籍することを防げたのは良かったと言える。

 

このトレードについては書きたいことが一杯あるのだが、とても長くなってしまうので、(すでに長いが、、、)また次回詳しく見ていきたい。

 

<Trade Grade>

シクサーズ:B 

ネッツ: A-

 

2. マーベリックスとウィザーズ

主なマーベリックス獲得:スペンサー・ディンウィディー、ダービス・ベルターンス

主なネッツ獲得:クリスタス・ポジンガス

 

このトレードを最初に見た感想は、マブスは正気???である。確かにポジンガスは怪我がちであり、今年も途中から欠場が続いていた。更にドンチッチとの仲が悪いことも度々報道されていたし、大型契約を結んでいる為放出が難しいということもあったので、チャンスがあればトレードしたかったという気持ちもわかる。

 

但し、リターンがこれでは全然説明がつかない。今年ウィザーズで全く活躍できておらず、チームメイトからも不評だったと言われるディンウィデイーと、一昨年大型契約延長を結んでからやる気が見られず、今年はひどい成績のベルターンスを獲得してどうするつもりなのだろうか。ボール保持するのが好きなディンウィディーとルカの相性がいいとは思えないし、確実に逆効果な気がしてならない。

 

ウィザーズからしてみたら今すぐにでも手放しなたかった2人の代わりに、1人の大型契約選手と交換したことはスマートではあるし、このトレードの中では一番実力のある選手を取れた。ただポジンガスを獲得したところでウィザーズがどうしたいかは不明である。ブラッドリー・ビールが今シーズン絶望となった中でプレイオフへのプッシュを考えているのか。それでも結局プレイインにも入れない可能性も高く、なんとも中途半端な気もする。どちらにとってもそれほど得とは思えない不思議なトレードであった。

 

<Trade Grade>

マーベリックス:D 

ウィザーズ: C

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3. ペイサーズとキングス

主なペイサーズの獲得:タイリース・ハリバートン、バディ・ヒールド、トリスタン・トンプソン

主なキングスの獲得:ドマンタス・サボニス、ジャスティン・ホリデー、ジェレミー・ラム

 

またキングスがやってくれたかという感じのトレードである。もうここ15年ぐらい組織としてリーグ最低レベルのキングスは、2010年にオーナーがVivecに変わってから特におかしくなった。いつも実現不可能なプレイオフを目指しては、上位のドラフトピックを獲得できず、補強もちぐはぐなのだが、今回もその例外ではない。

 

ハリバートンは2年目の序盤の不調から回復してNBAファンから非常に期待の高い選手となってきていた。今では珍しいプレイメイクに長けた彼はどのチームにもフィットする存在ではあり、最近はステップバックスリーの技術も向上して、まだルーキー契約な為、キングスが彼を手放すわけはないという予想が大方だった。

 

然し、キングスは同じくポイントガードでより実績のある5年目のディアロン・フォックスをチームの中心とする方針を取り、(+高額年俸からトレードも難しいのもあるが)シュートが苦手でアドバンススタッツ寄りのアナリストから批判されがちな彼をキープ、アドバンススタッツから評価されるハリバートンをトレードしてしまった。2年目でこれから後数年でフォックス以上の選手となると思われるポテンシャルを持つハリバートンを選ばないところがいかにもキングスらしい。

 

とはいっても、サボニスが素晴らしい選手であることには変わらない。インサイドでの得点力の高さとパス能力はリーグトップクラスであり、確実にキングスはレベルアップできる。ただじゃあキングスがプレイオフでセカンドラウンドを望めるような位置に行くかと言ったらそんなことはない。チームビルディングの考えでいったら全くセオリー通りでなく、中途半端な補強で終わるのが見えている。

 

ペイサーズからしたら、チームに不満を持っていて、マイルズ・ターナーとのダルビッグマン体制に限界が見られたサボニスの代わりに、ハリバートンをゲットできたのは儲けものである。ペイサーズもそろそろタンクをして上位ドラフトピックを狙うべきな気もするが、まだ2年目のPGを獲得できたのは今後のチーム計画にとってすごいポジティブになるだろう。ついでにシューターのバディ・ヒールドが加わったのも悪くない。

 

<Trade Grade>

キングス:C

ペイサーズ: A-

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4. 四チームトレード (キングス、クリッパーズ、バックス、ピストンズ)

主なキングスの獲得:ダンテ・ディヴィンチェンゾ、ジョッシュ・ジャクソン

主なクリッパーズの獲得:ロドニー・フッド、セミ・オジュレ

主なバックスの獲得:サージ・イバカ

主なピストンズの獲得:マービン・バグリーJr

 

このトレードに関しては正直キングスは結構いい動きをしたのではないか。ディヴィンチェンゾは怪我から復帰して今年不調だが、本来はオフェンス、ディフェンスともに優れた選手であり、フォックス、サボニスを支える第3、4の選手として機能するだろう。4年前のドラフト2位のバグリーは、ルーキー時代からキングスと上手くフィットしておらず、チームのお荷物となっていただけに、キングスとしては全く傷がつかないトレードだし、リーグ最低レベルのロスターピストンズからしても、まだまだ若いバグリーにチャンスを与える価値もあるだろう。

 

このトレードの一番のキーはバックスである。ブルック・ロペスが腰の怪我で今シーズン復帰できるか微妙と言われている中、イヤニス以外のビッグマンがいないバックスはバックアップセンター・フォワードの獲得が急務であった。最近はケガも多いため、ラプターズが優勝した際に、非常に重要な役割を担った時のレベルからは程遠いが、少なくともディフェンス面での貢献は期待できるのではないかと思う。ミドルトン以外の強力なウィングがいないバックスなだけに、ディヴィンチェンゾを手放すのはベストではないかもしれないが、パット・コナトンやグレイソン・アレンといた同ポジションの選手がいるので、マストキープとなくなったことが大きい。

 

クリッパーズの方はどうしたいかがイマイチ分からない。ポール・ジョージ、クワイ・レナ―ドともに今シーズン絶望の可能性が高く優勝を狙えない中で、デットライン直前にはノーマン・パウエルとロバート・カミントンといった即戦力を獲得している。そんな中でバックスでほぼローテション外になっていた2人を獲得したりと若干ちぐはぐである。おそらくサラリーキャップの調整を図っていると思われるが、チームを強くも弱くもしない補強でなんともうーんといったデットラインであった。

 

<Trade Grade>

キングス:B 

ピストンズ: B

バックス:B+

クリッパーズ: D

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5. ペリカンズとブレイザーズ

主なペリカンズの獲得:CJ・マコラム、ラリー・ナンスJr

主なブレイザーズの獲得:ニケル・アレクサンダー=ウォーカー (後にジャズに更にトレード:これも謎)、ジョッシュ・ハート

 

このトレードは完全にペリカンズのパニックトレードである。なおかつブレイザーズは完全にRebuildモードでもある。そしてどちらのチームのこの動きには?がつく。昨年大活躍したザイオンがケガで今シーズン1試合も出場しておらず、オーバーウェイトかつ、チームに不満もあると言われている彼が復帰するか分からないまま、チームも低迷中であるため、マコラムを獲得してプレイオフを狙いたいのだろうが、果たしてどこまでチームが強化されただろうか。頑張ってもぎりぎりの第10シードぐらいになるだろうし、マコラムの高額年俸と契約期間の長さを考えると今後このトレードがチームの将来に大きなダメージを与える可能性もある。プレイオフを狙えるかも分からない中で、過去の怪我もあり、大型契約持ちのこれから全盛期を過ぎるTop40レベルの選手の獲得はかなりリスキーであったと言える。(Top10レベルでなく、Top40レベルなのが肝)

 

ブレイザーズの観点からも、もっといいトレードがあったのではないかと思う。最近までベン・シモンズとのトレードもあると言われてきたマコラムの見返りが、ほぼサラリーダンプのようなトレードではスーパースターのリラードが納得しないだろう。リラードが今シーズン絶望と言われる中で、今年は諦めるという点は理解ができるが、もう少しまともなリターンがないと、いくら上位のドラフト選手をゲットできたり、サラリーキャップを空けても、タイトルを狙えるチームになっていくのは難しく、最終的にリラードのトレードリクエストが待っている気がする。

 

<Trade Grade>

ペリカンズ:D 

ブレイザーズ: D

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全部で16あったトレードのうち、大きな5つのトレードをまとめるだけでかなり長くなってしまったが、その他にもセルティックスやサンズがミニ補強をしたのは評価できる。ホーネッツにモントレズ・ハレルが加わったのも興味深い。

 

今年も大いに盛り上げてくれたトレードデットライン。これからオールスターの後はあっという間にプレイオフに突入していく。今シーズン特にイーストが大混戦となっており、今回のトレードが吉と出るか凶と出るか、最後まで目を離せない展開となりそうである。