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レブロン・ジェームズがオールスターウィークエンドを壊したか。

どうも。諸々忙しかったこともありとても久しぶりの記事となりますが、NBAは今年も面白く、オフェンスの爆発によりスタッツのインフレーション、MVP争いの質の高さ、デゥラント、カイリーをはじめとしたトレードデッドラインの白熱など話題にこと欠かない。ジャ・モラントの精神的なメルトダウンなどネガティブなニュースもあり、それについても近々記事を書きたいと思っているが、今回は少し前の話題で、先日のオールスターウィークエンドの盛り上がりの欠如、特にオールスター本戦のクオリティの低さについて考えてみたい。

 

今回のオールスター本戦を大きなバッシングを受けたのだが、本来であればシーズンの中で最も盛り上がるべき数日であるオールスターのレベルの低さはここ何年も指摘されており、数年に1回いい試合はあっても、それ以外はかなり緩いただのお遊びで、正直に見るに堪えないことも多い。リーグにとってはファン離れを防ぐためには改善が急務なはずなのだが、そもそもなぜこんなにオールスターが面白くなくなってしまったのだろうか。

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<いつもお祭りではあったオールスター>

オールスターはそもそもファンのためのイベントなので、プレイオフのようなIntensityがないのは当たり前である。それは今に限った話ではなく、80年代から昔からディフェンスは若干緩めでダンクを中心としたお祭り試合であったことは間違いないが、多少なりの努力が各選手から出ていたし、スターの祭典であるからこその、ライバルには負けたくないというスーパースターの競争心も垣間見れた。この理由の1つには、今のように敵チームの選手同士がとても仲良くするという風潮は昔はなかったことがあるだろう。また、League Passやケーブルなどファンが気軽に試合が見れる回数は2000年代序盤までは少なく、全国放送される数少ない機会であるオールスターで自分達のスキルセットを見せつけるという意思があったのかもしれない。

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<レブロン世代の台頭以降明らかにやる気が下がる>

昔の世代の方がオールスターが真剣だったのは、トップスターの競争心によるところもあるかもしれない。ジョーダンはどんな試合で手を抜かない事でも有名だし、その後オールスターを牽引をしたコービーも手抜きをすることを嫌ったことで有名である。その為、まだ2010年前後ぐらいまではそれなりにちゃんとした試合構成になっていた気がする。スーパープレーの中にもディフェンダーがいることで、彼らをかわしてのクロスオーバー、ダンクと言うのが生まれていた。然しこれが今となってはディフェンダーが全くいない状態での大したことないダンク、シューティングプラクティスのようなスリーの連発により、ファンがエキサイティングできるスーパープレイがほとんどなくなってしまったのである。

 

これは何故かと考えると、カリーによって開拓されたスリーポイントを他の選手が真似しまくったという事が1つある。スリーの連発はカリーやリラードがやるから面白いのであって、他の選手がやっても何の見ごたえがないということを彼やリーグが分かっていない気がする。ダンクについてもただダンクすればいいということではなく、ウィンドミルや360などフレーバーを入れる事に意味があるのだが、特に今年は両手で味気のないダンクをする選手が目立った気がする。

 

こういったオールスター中に本気を出さない風潮は明らかにレブロン世代が天下を取り始めたころに影響すると考えられる。レブロンNBAに残した功績は計り知れないものがあるが、ネガティブな面もある。彼がもたらしたプレイヤーエンパワーメントは、オーナーではなく自分達が主導権を握るという新たな風をもたらし、ある意味リーグの思い通りオールスターで頑張らなくも罰を受けない慣習が出来上がってしまったと思う。

 

また、レブロン自身が自分のイメージの保護を非常に大事にする人間でもある為、リーグの他のスーパースターという構造を作りたがらないということもある。その為チームの勝ち負けにも拘らず、1オン1マッチアップなどを仕掛けずといった安定したプレーに終始することが多い。絶対的存在であるレブロンが低めのモチベーションでオールスターに参加するとなると他の選手達もこれに続くわけで、逆に彼がコービーや最近だとイヤニスぐらい常どんな時でも本気を出すタイプであれば、ここまで悲惨な試合内容にならないはずである。

 

オールスターゲームで頑張るインセンティブが減った理由は、ネットの普及による先週の注目度の上昇、給料の上昇などたくさんの要素もあるが、リーグで最も影響力のある存在として君臨するレブロンが手をぬくことよしとした責任も大きい。

 

<スラムダンクコンテストの停滞もレブロンが原因?>

ちなみに弱体化したのは何もオールスター本戦だけではなく、スラムダンクコンテストのクオリティの低下についても、もう10年以上のホットトピックである。そしてダンクコンテストはほんとにレブロン不参加が停滞を呼んだと言っても過言ではない。今年のダンクコンテストはマック・マクラングの活躍で結構な盛り上がりを見せたが、彼はあくまでGリーグの選手であり、NBAで実績を残しているスターではない。このスタープレイヤーが出場しないというのが最大の問題なのである。

 

ダンクコンテストが何故80年代に人気が出たかというと、ジュリアス•アービング、マイケル•ジョーダンやドミニク・ウィルキンスのようなスター達が自ら出場していたことに他ならない。90年代に一時低迷したが、2000年に復活できたのは当時現役No.1ダンカーだったビンス・カンターが参加したことも大きい。その後ドワイト・ハワードやブレイク・グリフィンといったスター選手が2000年代後半に優勝が、それ以外でスーパースターの地位を持った選手が出場したことはここ20年ないと言ってもいい。(ブレイクなんてダンクの質はそこまででもなかったのにハイプが高すぎたおかげで優勝できたようなもんである。ちなみにカーターもハイプの影響が多少なりともあったと個人的に思っている)

 

なぜこれがレブロンの影響が大きいかと言うと、レブロンが若手の時から全盛期は確実にTop3に入るインゲームダンカーだったからである。以前NBA歴代最強インゲームダンカーというランキングを作ったことがあるが、私的に歴代No.6に入るぐらいレブロンのダンクの迫力とスピード、パワーは凄いものがあった。

 

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そんな彼がダンクコンテストに出ていたらどれだけの注目、視聴率が取れていただろうか。彼だけなく同世代のウェイドも長らくリーグトップクラスのダンカーだったが出場しなかった。最高のダンカーであるだけでなく、最高の選手達がチャレンジしあったら歴代に残るイベントになっていたはずである。でも彼らは断固として拒否した。それは何故なのか。結局ダンクコンテストで負けるのが嫌、失敗して笑われるのが嫌だからである。そして、別に出なくも失うものはなく、出ることで恥をかく方を避けたいのである。こういった形でリーグを盛り上げるよりも自分のイメージの確保がレブロン世代にとっては大事となり、それが今の若手世代にも受け継がれ、モラントやザイオンなども出場する意欲を全く見せていない。

 

何とも悲しい現実であるのだが、この悪しき習慣を一般化したレブロンの罪は重いと個人的には思っており、次なるスーパースター達が抜本的改革をしない限り、オールスターからファンの心は大きく離れ、NBAの人気にマイナスとなっていくことは間違いない。数年前まで上昇傾向だったリーグの繁栄ががここにきて停滞気味と言われるNBAは打つ手を考えてくるのか。是非とも策を練ってもらいたいと切に願うファンとしての感想である。