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オールNBAチームとマーベリックスの失望

どうも、レギュラーシーズンもとうとう終了し、いよいよ今週からプレイオフがはじまる。プレイインの行方、プレイオフマッチアップも気になるところだが、加えてシーズンアワードをどうするべきか、またプレイオフを逃したチームの再建プランなど話題には事欠かない。

 

MVPについては前回の記事でエンビードがなるのではないかと書いたが、その後数週間若干チームもアップダウンがあったこともあり、ヤニスとヨキッチにもチャンスがあるのではと一瞬思われた。しかし、シーズン終盤で強豪ボストン相手に52得点を記録したことでエンビードがMVPをほぼ手中に収めたといってもよさそうである。

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- All NBA Team -

一方オールNBAチームについては、特にガードポジションの選手層が厚すぎて、選出が非常に難しくなってきており、MVP同様に大きな議論を呼びそう。ここで完全に主観でチームを選んでみたい。

 

<1st Team>

C: ジョエル・エンビード

F: ヤニス・アデトクンボ

F: ジェイソン・テイタム

G: シェイ・ギルジャス=アレクサンダー

G: ドノバン・ミッチェル

 

<2nd Team>

C: 二コラ・ヨキッチ

F: ジェイレン・ブラウン

F: ジュリアス・ランドル

G: ジャ・モラント

G: ルカ・ドンチッチ

 

<3rd Team>

C: ドマンタス・サボニス

F: ジミー・バトラー

F: レブロン・ジェームズ

G: ステファン・カリー

G: ディアロン・フォックス

 

All NBAは未だにポジションの指定があるので、エンビードをMVPとするなら同じセンターのヨキッチが自動的にセカンドチームになってしまうことが残念だが仕方ない。(来年以降はポジションレスになる予定である) MVP投票で3位、4位となるであろうヤニスとテイタムは異論なくファーストチームフォワードに入るだろう。

ガードが一番難しいところで個人成績やチーム成績、出場試合数など考えるとかなり悩みどこである。総合的に判断するとチームの絶対的エースとし再建チームのサンダーを引っ張ったSGA、昨年から飛躍しリーグトップクラスのチームのエースとして引っ張ったミッチェルを選んだ。

 

2ndチームのガードはどちらもいわくつきで、後述の失望度高いチームNo.1のマブスのドンチッチ、以前に記事にも書いた通りオフコートで警察沙汰を起こしたモラントを選らんだ。正直どちらもサードチームでも良かったが、ルカは圧倒的な個人成績、モラントはウエスト2位のチームのエースである点を考慮した。

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フォワードについても悩んだが、個人的にはプレイインに参加するチーム所属の場合は相当個人成績が良くないと選ばないとしているので、セルティックスのブラウン、ニックスからランドルを選んだ。彼らがTop10プレイヤーであるかというとそうではないが、どちらもイーストの強豪でチームのNo.1 or No.2であることが大きかった。

 

3rdチームセンターとガードは今年超久しぶりにプレイオフ進出を決めたチームの二大エースである、サボニスとフォックスを選出。もう1つのガードは、ジェームズ•ハーデン、デイミアン•リラード、ダリアス•ガーランド、ドリュー•ホリデー、ジェイレン•ブロンソンなど早々たる顔ぶれが揃ったが、出場試合数は少なめながら個人成績とチームへの貢献度合でカリーとした。

同様に未だにリーグトップレベルの実力を持つレブロンも試合数は少ないが、総合的に判断してサードチームに食い込んだ。個人成績とチームへの貢献度で言えばセカンドチームでもおかしくなかったバトラーは、ヒートが第7シードとなったことでサードチームに格下げした。

 

こうして考えるとオールNBAチームの選出がいぁに難しいかわかるが、一番の驚きはシーズン通してリーグMVPのトップ5になりそうだったドンチッチがセカンドチームとなったことである。その理由は何よりダラス•マーベリックスのお粗末なシーズンの終わり方に他ならない。

 

- 順風満帆な昨シーズン -

昨年マーベリックスは、ルカがリーグに入って以来初めてプレイオフのファーストラウンドを突破したと思ったら、カンファレンスファイナルで第1シードのサンズを木っ端みじんにして、カンファレンスファイナル進出と非常に明るい未来が感じられたシーズンの終わり方をした。ネッツとバックスでHCとして微妙な実績だったジェイソン・キッドマブスのHCになったことで懐疑的な目も強かったが(私含めて)、ルカというディフェンスの穴がいながらリーグトップレベルのディフェンスを築き、オフェンスはルカを絶対的な存在として使いながら、周りにある程度のレベルのシューターを配置しつつ、ジェイレン・ブロンソンやスペンサー・ディンウィディが第2のスコアラーとして彼をサポートしていた。

 

その前に2年連続ファーストラウンドでクリッパーズに敗退しながら、圧倒的な数字を残していたルカが、23歳にしてカンファレンスファイナルまで進出したことで、レブロンのように個人としてもチームとしてもリーグのトップに君臨する日が近づいたと思われた。

 

- なぜ歯車が狂ったか -

<チームロスター>

今年の問題として、まず第一に昨年のNo.2プレイヤーだったブロンソンがいなくなったのが大きい。数々の報道によると、ブロンソン自体はマブスに残りたいと考えていたが、プレイオフで大活躍することを予測してなかったマブス側はその前にオファーをなかなか提示せずに、オフシーズンの時点では交渉金額が跳ね上がってしまったことでマブスが更に難色を示したと言われている。結局ブロンソンは自分の父親がスタッフにいるニックスに移籍し、マブスは何もアセットの見返りがなくルカの次に大事な選手を失うことになる。その後ブロンソンのニックスでの大活躍は皆さんご存じの通りである。

ニックス復活の立役者のブロンソン

ブロンソンがいなくなったことに対して、各チームで問題児となりがちなクリスチャン・ウッド以外補強をしなかったマブスロスター完全にドンチッチ頼みとなる。そのおかげもあってか、彼は今シーズンキャリアハイの得点を上げたが、どうしてもサポート人が弱く、勝利に結びつかないケースも多かった。

 

<チームディフェンス>

昨年の快進撃の大きな理由の1つがリーグトップクラスのデイフェンスだったのだが、今年はそれが一気に退化したこともマブスが苦しんだ要因である。昨年リーグ6位だったDefensive Ratingは今年になってリーグ下位レベルの24位まで落ち込み、マブス相手ならどのチームでも130点取れる印象すらある。ルカのやる気のないディフェンスは見てられないし、センターとしてディフェンスの要にならなければいない選手がクリスチャン・ウッドでは話にならないということもある。また、チームNo.1ディフェンダーだったドリアン・フェニー・スミスが後述のカイリーのトレードでシーズン中盤に移籍したことも大きい。どんなにいいオフェンスがあっても相手を止められなければ勝ち目がないのがバスケットボールの定説である。(今年のキングスは別だが)

 

また、ジェイソン・キッドは毎度就任の最初のシーズンはそこそこチームが良い成績を残すのだが、途中から一気に求心力がなくなるという特徴ある。最初のネッツでは就任時に5割以上の成績を残したが、ネッツのフロントと折り合いがつかず1年で辞めてしまい、いきなりバックスのHCとなる。当時弱小だったバックスでは。1年目は5割の勝率と良い兆候が出たのだが、そっから負けが重なり、彼の変なコーチングスキームとスタイル、フロントやプレイヤーとの心理合戦は混乱を招き、結局4年で解雇された。マブスについてもバックスの時と同じようにならないかというのが私の予測であり、彼が啓蒙するディフェンスのアイデンティがもうチームに受け入れらなくなったのではないかと疑っている。これが事実であればキッドのHCの座も安泰では全くない。

真面目そうに見えて少々エキセントリックなことで知られるキッド

<カイリーのトレード>

ブロンソンの放出、弱体化したディフェンスもあってか、マブスは5割程度の勝率で推移していく。このままでは昨年の勢いが途絶えてしまうと恐れたフロント陣は博打にでる。ネッツからトレードリクエストしたカイリーの獲得に名乗り出たのである。

 

カイリーは実力は誰もが認めるとこだが、ボストン、ネッツと立て続けにチームケミストリーを乱すことを散々やってきた。今シーズンだけでもユダヤ人を差別的に描写する映画をプロモートしたことでネッツから出場停止処分を受けたり、コンスピラシーセオリーをツイートしたりとニュースに事欠かない。そして、諸々のゴタゴタの後ネッツと落ち着いたと思ったら、トレードデッドライン前に唐突にトレードリクエストを申請し、またリーグを驚かせる。カイリーの凄いところはいつ何をしでかすか分からない予測不能の行動パターンにあろう。

 

然し、その圧倒的な1on1能力はどのスカウトも認めざる負えず、魔法のようなボールハンドリングとフィニッシュ能力から選手達からの指示も厚い。そこで、ブロンソンの穴埋め・スケールアップを図り、カイリーをゲットしたわけだが、その代償としてブロンソンの代わりとして一定の成績を残していたディンウィディー、上述のディフェンスの要であったスミス、加えて将来のドラフトピックをトレードすることになる。ブロンソンをキープさえすればこんなことにならなかった訳でパニックトレードと言えるだろう。

 

カイリーの加入によってオフェンスは強固になったかもしれないが、どちらの選手も力を最大限発揮するにはボールが必要で、特にドンチッチはレブロンやKDよりも圧倒的なボール保持率が高いしアービングがオフェンスをハンドリングしている際にカットするなどをほぼしない為、シナジーが生まれにくい。何よりルカとカイリーの2人がバックコートでは相手オフェンスを止めるすべがなく(ウィングのレジ―・ブロックじゃ心細い)、ペイントで彼らをサポートしてくれる強力なビックマンもいない為、ディフェンスの弱体化が進んでしまった。キッドの戦術も上手く2人を使いこなせておらず(ガードとガードのスクリーンをかけるなど)、特に接戦での敗北が重なるようになる。

 

マブス入団後のカイリーについて、オフコートではこれといった問題は発生しておらず良いチームメイトであるようだが、彼はオフシーズンにFAになる為、ブロンソンと同じようにマブスにとって見返りなくいなくなる可能性は十分にあり得る。ドラフトピックもろくにないマブスはトレードの補強が難しく、FA選手もあまりダラスに来たがらないので、来年以降も苦しい戦いが見込まれる。

 

- ドンチッチにも問題あり -

ここまでの記事の内容を読んで頂ければ、私個人がドンチッチも批判されるべきだと思っていることが伺えただろう。実際チームの支配者である彼にも大きな問題はある。プレイスタイルから、レブロンの後継者と目されており、既にリーグトップ5の選手と認識されているスーパースターがレイオフおろかプレイインすら逃すとはかなりの異常事態なのである。過去にもコービーの2004-2005シーズンのように、スーパースターがプレイオフを逃すこともあったが、アービングという2人目のスーパースターが加わった上でのこの結果はかなりキャリアレジメにおいて痛手である。

 

今シーズン、個人成績だけで言えばリーグ2位、自己最高の32得点をあげたが、昔から指摘されるコンディションの悪さは改善されず、今年は更に一回り太ったようにすら見える。オフェンスが重労働な上にコンディショニングも微妙であれば、ディフェンスでフル回転できるはずもなく、昨シーズン向上したディフェンスへの努力は一気に落ちてしまった感がある。

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ルカのディフェンスへの努力不足は、彼がしょっちゅうレフリーに文句を言っているから、ディフェンスに戻るタイミングを逃すということにも関わってくる。彼はほぼ毎プレーでレフリーにファールだと文句をつけており、正直彼ほどComplainばかりする選手を今まで見たことがないレベルである。彼が文句を言い続けることでディフェンスに戻らなければマブスは4対5で勝負せざる負えないし、他の選手達に負担をかけているのは明らかである。

 

レフリーへの不平不満に付随するが、彼のボディーランゲージもリーダーとしてふさわしいものではなくチームの士気を下げるジェスチャーが多い。コービーやジョーダンも味方選手に厳しかったが、ドンチッチのように常にフラストレーション溜めている様子が見える選手は珍しいし、リーダーが常に不満そうな雰囲気を出していれば、チームメイトもやる気が下がってしまう。試合を見ていてマブスのベンチの活気があまり感じられないのは、ルカの態度が少なからず影響しているはずと考えられる。

 

とはいっても彼もまだ24歳であり、これから本当の全盛期を迎える選手である。肉体的にも精神的にも更に一回り成長し、真の意味でリーグを牽引するようになるのか、そしてマブスは果たしてそれを支えるチームを作ることができるのか、もしくはルカのチームへの不満が高まりトレードをリクエストしてしまうのか、オフシーズンから来シーズンにかけての行方が気になる