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ブルックリン・ネッツのBig3誕生の裏側とポテンシャル

どうも。3週連続でジェームズ・ハーデンとブルックリン・ネッツについての記事となってしまうが、あらためてブルックリン・ネッツの、ケビン・デゥラント、カイリー・アービング、ジェームズ・ハーデンのBig3誕生の軌跡とハーデンのトレードリクエスト、カイリー問題から、チームの今後について考えていきたい。

 

1. KDとカイリーによるネッツ移籍

オクラホマシティ・サンダーから批判を受けながら強豪チームのウォーリアーズに移籍し、最強チームを結成して2連覇とファイナルMVPも2年連続受賞したKD。然し、どんなに勝ってもウォーリアーズはステファン・カリーのチームであり、圧倒的な成績を残しても彼へのメディアとファンからの批判が止まらなかったことで、デゥラントは不満を溜めていく。そして、3年目のシーズン中には移籍すると騒がれ続け、チームメイトのドレイモンド・グリーンと試合中に口論にもなったりして、1年中話題となった。プレイオフ中にケガをし、優勝も逃したKDは、結局オフシーズンにネッツに移籍することになる。

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そこで一緒に移籍したのが、KDの親友で同じくボストン・セルティックスで不満を溜めていたカイリー・アービングである。クリーブランド・キャバリアーズではレブロンの永遠のNo.2になってしまうことが嫌だったカイリーはトレードを要求し、ボストンに移籍をした。然し、2年目の時点では既にチームケミストリーに問題が出始め、プレイオフでもやる気があまり見られないようなプレーで敗退し、ボストンファンからも大きな批判の対象となっていた。シーズン途中からFA行使の噂がたっていたが、予想通りKDとタッグを組み、ネッツに移籍をすることになる。(当初はずっと2人でニックスに行くと言われてはいたが、、、)

 

然し、ウォーリアーズ時代のNBAファイナルでアキレス腱を断裂したKDはネッツ移籍後1年目は全休、カイリーも20試合だけの出場に留まり、新生ネッツの姿は実質見ることができなかった。

 

2. ジェームズ・ハーデンのトレードリクエス

ヒューストン・ロケッツで8シーズン過ごし、名実ともに2010年代のベストシューティングガードかつ史上最高のオフェンシブプレイヤーの一人となったハーデンは、毎年プレイオフには出ていたが優勝には届かずにいた。2017-18シーズンはクリス・ポールをチームメイトにし、リーグ最高勝率となり、プレイオフでもカンファレンス・ファイナルでデゥラント擁するウォーリアーズを3勝2敗と追い込んだが、クリス・ポールのケガの影響や、第7戦でリードしながら27連続スリーポイントを外す等あり、ファイナルには進出できなかった。その後クリス・ポールと馬が合わなくなったハーデンは、昨年ポールと引き換えにラッセル・ウエストブルックを獲得するように要求したが、ウエストブルックとのフィットは完璧ではなく、プレイオフでもレイカーズに敗北した。

 

今シーズンに向けて優勝のチャンスがないと見たハーデンはプレシーズン開始前にトレードをリクエストする。しかも移籍先はKDとカイリーのいるネッツ一本で要求したのだ。そもそものネッツへの移籍希望した理由も、オフシーズンに元チームメイトのKDとピックアップゲームをして一緒にプレーしたいなという話をしたからというものであり、ネッツのトレードアセットを考えると最初は現実味があまりないように見えた。

 

ここで問題なのがトレード要求の仕方である。まずそもそもロケッツは在籍中にかなりハーデンを好きなようにさせており、彼だけ特別なスケジュールを認めたり、チームで試合のビデオを分析する際にハーデンが遅刻するのをみんなで待たなきゃいけないといったことが日常茶飯事であったようである。更に、ハーデンは、ポールやウエストブルックのように自分が欲しい選手の獲得を要求しては1~2年目で仲が悪くなって、その選手の放出を希望することを繰り返していた。

 

それだけでも批判を受けやすくはなっていたのだが、更に状況を悪くしたのは、ハーデンがチームキャンプ初日に来なかっただけでなく、自らのInstagramで、ラッパーのlil babyとクラブで一緒にいる写真を投稿したのである。しかもこのコロナの状況でマスクをしていない写真を投稿したことで、彼のプロ意識についてメディアでは多くの議論がなされた。この後もハーデンがマスクなしで違うパーティーに参加しているところが報道され、更に批判が高まった。

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コロナの中で大人数でマスクなしでパーティーするハーデン (12/3のアトランタ)

この後チームに戻ることには同意したのだが、上記の行動はもちろんNBAのコロナ規則にひっかかり、1週間隔離を余儀なくされる。結局トレードはシーズン前にはされずに、ハーデンがプレーすることにはなったのだが、実際にコートに立ったハーデンはどう見ても太っており、ベストシェイプには程遠かった。そんな彼が太って見える写真は、SNS上で大いに笑いのネタになった。

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こんな体系でも最初の数試合は30得点以上を連発しさすがの実力を見せつけたが、少し経つとやる気をなくしたのか、得点も20点を切るようになり、ディフェンスも一切参加せず、ベンチプレイヤーからもやる気のなさを指摘されるなど、チームへの悪影響は目に見えていた。

 

これまでのPlayer Emopowermentは様々な形で行われてきたが、ここまであからさまにチームへの不満を明らかにし、コロナのルールも違反して、チームにも迷惑をかけ続けるというパワームーブはハーデンがリーグ史上はじめてといえる。個人的にはハーデンがトレードをリクエストすること自体に異論はないが、チームメイトやこれまでずっと守ってくれたチームやスタッフに対する一定のリスペクトは示す必要があったと思っており、今後もこれがリーグの慣習にならないことを祈っている。

Player Empowermentの歴史については直近の記事で前篇と後篇でまとめているので是非ご覧頂きたい。

atsukobe.hatenablog.com

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3. ハーデン獲得に至ったトリガー

ハーデンがカイリーとKDと一緒にネッツに移籍してプレーしたがっていたのに対して、ロケッツにとってハーデンのトレード対価となるアセットがネッツにはなかった。リーグ1のオフェンシブプレイヤーを獲得するには、それなりの選手か、たくさんのドラフトピックの組み合わせが必要である。その為当初はシクサーズのベン・シモンズ+1ののトレードが両チームにとってもっともWin-winではないかと言われていた。ネッツもKDがアキレス腱のケガから復帰してほぼ100%の状態に近く、カイリーとのコンビネーションもスムーズであった。更にネッツは、スペンサー・ディンウィディー、カリス・ラヴァ―ト、ジャレッド・アレン、ジョー・ハリスといったスターを固めるロールプレイヤーが揃っていた為、ハーデンというボール保持率が高い選手を獲得するのは逆にリスクが高いと思われた。

 

然し、その後状況が若干変化する。まずディンウィディーがシーズン序盤にケガをし、今度はNBAメディアでも大騒ぎとなるカイリーの失踪事件が起こる。1/6に白人至上主義のトランプサポーターがアメリカ議会で暴動を起こした後、チームと連絡がつかなくなったのである。(この事件については下記の記事参考)

atsukobe.hatenablog.com

 

カイリーはヘッドコーチのスティーブ・ナッシュや、ネッツGMにも連絡をせずに、試合直前にチームメイトに連絡しただけであった。カイリーについては以前から、頭の良さや黒人差別、社会問題に対する関心の高さが賞賛される一方、同時に気難しい性格でも知られている。キャブス時代から、ある日はすごい機嫌が良いが、次の日はチームの誰とも口を聞かないといったアップダウンがあると言われていた。

 

その後も数試合チームはカイリーと連絡がつかず、今度は彼が妹の誕生日パーティーにマスクをつけないでいる姿が目撃される。もちろん1/6の件は多くの人にとって衝撃だったし、メンタルブレイクが必要なことは理解できるが、休みが欲しいのであればチームに連絡する義務はあるし、不在中にマスクを着けずにパーティーにいったことは単純に無責任で批判されるべきであることだと思う。彼の考えや社会貢献は素晴らしい一面もあるが、こういったいわゆる一般的な常識から外れた行動をしてしまうのが、カイリーの欠点であると言える。

 

このカイリーの失踪によりネッツが最終的に動いたという見方が強い。そもそもカイリーはケガが多い選手であり、今回のようにいきなり消えてしまう事を考えた場合、カイリーが万が一またいなくなっても優勝できる可能性を残す為に、ある意味の保険としてハーデン獲得に動いたのである。個人的にもネッツが重い腰を動かし方最大の要因はカイリー不在に焦ったからであると思っている。また、ロケッツとの1対1トレードでは必要なアセットがなかったが、複数チームと話し合い、4チーム間でのトレードにすることによってハーデンのトレードが成立した。インディアナ・ペイサーズでチームと馬が合わなくなっていたヴィクター・オラディポや若手選手を欲しがっていたキャバリアーズを絡めたのである。これによって、KD、カイリー、ハーデンというBig3が誕生し、ハーデンのトレードのニュースのすぐ後、カイリーもチームに戻ることが決まる。

 

4. 新たなBig3の実力と優勝のチャンス

新ネッツが誕生して10試合近くが経った。まず言えることはネッツのオフェンスは半端ないBig3の爆発力は目に見張るものがあり、各選手がどんな状況でもオフェンスを作り出すことができる。一般的にオフェンス力が高い選手が3人揃った場合には、誰か一人が犠牲を払う必要がある。例えばマイアミ・ヒートであればクリス・ボッシュ、ボストンではレイ・アレンが自分が得点するチャンスを減らして、3番手のポジションに落ち着いたことでオフェンスが機能しやすくなった。ネッツでは、ハーデンが一歩下がったプレーをしているのが今のところ印象的である。ハーデンは3年連続得点王になってはいるが、プレイメイクやアシストの質も非常に高い選手である。その為、彼が基本的にオフェンスのセットアップをしてアシスト役に徹している。ロケッツ自体の2018年は1試合平均24.5回のシュート数が、ネッツ移籍後は15.5回、フリースローも平均10回以上が当たり前だったのが、現在は7本程度と彼が自ら得点を狙う機会を減らしていることが分かる。

 

一方で、ハーデン以上の希代のスコアラーであるKDはこれまで通りのシュート数を打っているのは納得だが、カイリーも全く引かずに得点を狙っているのも目に止まる。カイリーとハーデンであれば、正直得点力はハーデンの方が上であり、ハーデンが今後もずっとプレイメイキング優先でいくのか、カイリーに譲らずアイソレーションプレーを増やしていくのかは見ものである。(個人的な見解だが、ハーデン移籍当初に、カイリー抜きでハーデンとKDのBig2で数試合プレーしていた時の方がオフェンスはスムーズには見えた)。3人のバランスがこれからもずっと保たれるのかは未知数ではあるが、いずれにしても、Big3にシューターのジョー・ハリスを加えたオフェンスの破壊力はどのチームにも負けない。

 

問題は、ディフェンス、特にリムディフェンスである。ハーデンやカイリーは決して優れたディフェンダーとは言えない。(特にハーデンはやる気のないディフェンスをずっと批判されてきた) デゥラントは比較的ディフェンス力は高く、ビッグマンとしてのリムプロテクションも適宜できるが、ケガから復帰したばかりであることを考えると負担をかけきれない。一番の問題は、トレードでジャレッド・アレンを放出したことで、真のビッグマンがディアンドレ・ジョーダンしかいないことである。5、6年前はクリッパーズで非常に高いディフェンス力を持っていたジョーダンだが、ここ数年は運動神経が落ち、どう考えても平均以上のディフェンダーとは言えない。その為ペイントを守れる選手が全然おらず、更にペリメイターのディフェンスストッパーもいない状況で果たしてプレイオフで勝ち抜けるのかは疑問である。プレイオフでは通常各チームのディフェンスのレベルが上がり、得点を挙げることが難しくなる。ディフェンスのプレッシャーが高まる中で、オフェンス便りのチームが勝ち抜けくことができるかと考えると、これまでの歴史上はNoと言える

 

最後にもう1つ気になるのはチームケミストリーである。これまで記述してきた通り、カイリーは非常に扱いづらい性格であり、ハーデンもわがまま気質であり、ポールやドワイト・ハワードといったスターと対立してきた。更にデゥラントも気分屋で、チームメイトやメディアからの批判に敏感である。最初は上手くいっていたウォーリアーズのチームメイトとも結局仲別れしている。3人とも友達であるとはいえ、決して模範生とは言えないグループが集まっていることで、どこかで問題が起きないか気がかりではある。また、3人ともアルファと呼ばれるチームを引っ張るリーダータイプではない為、チームが苦境に立たされた時に誰が回りを鼓舞するのかも不明である。なんだかんだでチームケミストリーは優勝にとって不可欠な要素となるので、果たしてどこまでチームとして機能するのかも?マークがつく。

 

ス―パスター3人が集まったネッツはオフェンスについては疑いの余地はない。他方、穴だらけのディフェンスと気分屋3人が率いるチームがプレイオフで成功を収められるかは疑わしく、更なるトレードがない限り、筆者はネッツは今年優勝できないと読む。いずれにせよ、ネッツは今シーズン最も注目のチームであり、目を離すことはできない。

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