ディープなNBA・バスケトーク+アメリカ文化

NBAとアメリカンカルチャー中心のブログ

ウエストブルックのトレードは失敗するか

どうも。オリンピックが盛り上がりを見せており、様々な競技で話題を呼んでいるが、バスケも例外ではなく、各国でNBA選手もたくさん参加している。なんといっても注目はアメリカ代表なわけだが、初戦でフランスに敗れ、全体的にまとまりなく、1 on1を繰り返すか、シュートをためらいすぎてパスのしすぎてターンオーバーになるなどちぐはぐな感じが強いのは否めない。逆にゴルベアやフォニエがオフェンスで大活躍していた感じがやっぱりNBAと国際試合の違いだなと思ったりする。ロスターの観点から見ると、まともなビッグマンがバム・アデバヨしかいないような状況がまず問題だし、ガードは一杯いるが、試合を落ち着かせてプレイメイクに徹する選手がいない為、流れが悪くなったときに歯止めがきかない。ビッグマンと司令塔は国際大会ではまだまだ必要な選手達であり、そのコマが揃ってない印象である。また、NBAではオフェンスが優遇され、ここ数年のファウルハンティングの横行がすごいが、そういった優遇が国際ルールだとされないのものアメリカが苦しんでいる原因かもしれない。

 

一方、ドンチッチ擁するスロベニアは日本と戦って結構バズったりしていたが、ルーカの活躍だけでなく、周りを固める選手もシュート力が高く、結構順調な様子で、あわよくば優勝してもおかしくないんじゃないかとさえ思える。とはいえ、アメリカが優勝候補であることに変わらないので、決勝戦まで目が離せなさそうである。

 

NBAに話を戻すと、先日は2021年度のドラフトが行われ、ケイド・カニングハムや、ジェイレン・グリーン、エバン・モーブリーといったTop3の選手がそれぞれオールスターレベルの選手になると期待されている。今年のドラフトクラスは総合的なレベルが高いと言われている中、彼らがどういったポテンシャルを見せてくれるか見ものである。

 

そんなドラフト当日のビッグニュースはラッセル・ウエストブルックのレイカーズへのトレードである。ウィザーズではウエストブルックではなく、生え抜きスターのブラッドリー・ビールのトレードの噂がずっとささやかれていたが、逆にビールはウィザーズに満足していると報道され、1年だけ在籍したウエストブルックが移籍することになった。

 

これでウエストブルックは4年間のうちにサンダー→ロケッツ→ウィザーズ→レイカーズと1年毎にチームが変わっており、彼にとっても正念場となる。サンダー時代はデゥラントとポール・ジョージ、ロケッツ移籍後はハーデン、ウィザーズではビールと常にトップスターとプレーしてきたのは彼の運の良さかもしれないが、デゥラントと一緒にいた時期を除いて、毎年プレイオフの初期で敗退している。(プレイオフに出るだけでも評価されるべきなのかもしれないが) しかも、サンダーから移籍を求めて旧友のハーデンと一緒になったと思ったら1年でお互いのプレーにフラストレーションを溜め、ビールとも仲は良かったようだが、結局移籍の要求をしたということで、トレードのサイクルが繰り返されており、ここで成果を残さなければ彼の名声に大きく影響がでるのではともう。逆に言えば彼の超高額な契約金を考えた際に、それだけ受け入れ先があるということ自体、各スター選手のRussへのリスペクトが伺えるのではあるが。

 

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とはいえ、今回のレイカーズへの移籍がフィットするかどうかは正直微妙である。レイカーズはこのトレードでクーズマ、ハレル、KCP、ドラフトピックをトレードしたわけだが、貴重な3ポイントシューターであったKCPが抜けたことで、レイカーズはとにかくシュート力が弱くなった。エストブルックの一番の弱点はアウトサイドショットであり、一方レブロンのチームメイトに最も必要なのもシュート力であることで摩擦が生まれる気がする。現在のレイカーズロスターを見ると一番アウトサイドが上手いのはマーク・ガソル、もしくはデイビスかもしれないという状況であり、現代NBAでこのシュート力の無さは結構重大である。ロケッツ時代に数か月ウエストブルックがセンターのようにプレーして機能していた時期もあったが、それは彼以外がハーデン含めて高いシュート力を持っていたことも大きい。スペーシング主流の現在NBAにおいて、メインプレイヤー3人がシューターでないというのはギャンブルであると考えている。

 

次に彼のメンタルとプレイスタイルがレブロンと亀裂を生むのではという気もする。ウエストブルックはボールを保持する時間が長い選手であり、それはレブロンも同様である。レブロンもRussもボールを保持しない時にカットやスクリーンをかける選手でもないので、どっちかがボールを持っていたらどっちかは動かない。正攻法で考えたらバスケIQが突出しているレブロンが色んな判断をすべきなのだが、ウエストブルックはそんなことはお構いなしに、自分がベストプレーヤーだと常に思っており、試合終盤に30%しか決まらない3ポイントをショットクロック20秒残して打ってきたりする。そして、チームメイトが得点できないと自分でやらなきゃという気持ちが一層強くなるタイプで、ディフェンダーがペイントに固まっている中突進していったりする。これはある意味彼のメンタルタフネスと強みになることもあるのだが、失敗することの方が往々にして多い。

 

また、ディフェンスでも同様に無謀にスティールを狙って自分のディフェンダーをワイドオープンにすることもしばしばあり、オフェンス、ディフェンスともに彼のDecision Makingには常に疑問が残る。(Russは常に100%で全力を尽くす希有な選手と各メディアで言われるが、ディフェンスは決していつも全力ではないということをここで言っておきたい) こういったギャンブル性が高く、スマートとは言えないプレイスタイルはレブロンが最も嫌うタイプであり、果たしてどこまでレブロンが辛抱強くできるかが成功のカギの1つとなりそうである。一昨年に同じくシュート力のないロンドとプレーして成功したじゃないかという意見もあったりするが、ロンドとウエストブルックは全く違うタイプの選手であり、頭脳明快プレーヤーの筆頭であるロンドはその時その時の状況を分析できるパスファーストなプレイスタイルなのに対して、ウエストブルックはシュートファーストであり、上述の通り判断力に欠けることが多いので、この二人の比較は適切ではない。

 

ボール保持率とクラッチな場面での判断力でレブロンと馬が合わなくなりそうなだけでなく、エストブルック自体現在Top25の選手とは言い難い。成績だけ見たらトリプルダブルを4年間のうち3年間出しているのに何を言うんだと思われるかもしれないが、アシストやリバウンドをチームメイトを差し置いてスタッツを狙っているのは見ていて明らかだし、オフェンスの面でもフリスロー、3ポイント、ミッドレンジどれもどんどんと確率が落ちている。そしてドライブしてのリムでのフィニッシュ力も下がってしまっており、32歳となっての衰えは確実に見られている。その上、頑固d今まで1つのプレイスタイルで猛進してきたが彼が、この時点で自分のプレイスタイルを変えることもなかなか考えづらい。もちろんレブロンという絶対的な存在がいることで彼のメンタリティが変わることはあり得るかもしれないが、その可能性は低いと思った方がいい。

 

色々とウエストブルックの批判が重なってしまったが、彼が未だにいい選手である事には変わらない。(ベストプレーヤーの一人ではないだけで) 自分への絶対的な自信、頑固さ、ギャンブル性が彼をここまで押し上げた要素ではあり、それが強みとなる場合もある。特にレギュラーシーズンにおいて、どんな試合でも自分の感情を全面に押し出してプレーするウエストブルックがチームを鼓舞して勝利に導く回数は結構多いだろう。ただ問題なのはプレイオフに入ってからであり、ここ数年の成績が示すように、彼はベストプレイオフパフォーマーであるとは言えない。ディフェンスがよりタイトになり、スローペースとなるプレイオフでは彼の猪突猛進、シュートファーストなスタイルが有効でなくなってくることが多いからである。

 

今回のトレードでレイカーズはネームバリューで言えばBig3なる選手を集めたが、37歳になるレブロン、全盛期を過ぎたウエストブルック、アンソニーデイビスのトリオは、2004年のシャック・コービー・ペイトン・マローンや2013年のコービー・ガソル・ドワイト・ナッシュを彷彿とさせるネガティブな意味でのスーパーチームになるのではないかという懸念が拭いきれない。但し勝とうが負けようがレイカーズの注目度が更に高まったことは言うまでもなく、こんなネガティブな予想を裏切るような適応と活躍をRussが見せてくれるのが非常に見物である。

レジェンドになったGiannis <NBAファイナル総括>

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どうも。NBAファイナルが第6戦で終わり、バックスの優勝で幕を閉じた。今回のファイナルは単純に面白かった。特に4〜6試合目は全て接戦で最後まで結果が分からず、両チームが互角の近くを持っていたことがわかる。そして、この4-6戦、更にはファイナル全体で最も輝いていたのは紛れもなく、Giannis Antetokounmpoである。初のNBAファイナルで、35点、13リバウンド、5アシスト、61FG%を記録しただけでなく、第4戦ではザ・ブロック、第5戦ではザ・アリウープ、そして第6戦では50点、5ブロックとまさにスーパーヒューマンの活躍をした。第6戦に関してはファイナル史上最高のパフォーマンスのランキングでもTop5には絶対入ると思うし、個人的には彼のディフェンスでの貢献も考えたら、Top3、もしくはベストかもしれないと思っている。50点を取りながら、ブロックだけでなく、ルーズボールへの執着や、スイッチしてポールやブッカー相手の1 on 1ディフェンス、ヘルプディフェンスと全面的にバックスのディフェンスをカバーすることは並大抵の選手では絶対できない。

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そして突出すべきは彼の得点の仕方である。バックスは前半彼のチームメイトがボビー・ポータス以外全くステップアップせず、ミドルトンも微妙、ホリデーは散々なシューティングパーセントであり、ヤニスのみオフェンスのリズムがある状況だった。そんなことに嫌気がさしたのが、第3Qは俺に任せろという感じで一気に20点を獲得し、バックスのオフェンスを一人で動かした。英語でPut the team on his backというが、第6戦のパフォーマンスはまさにそれにあたる。更に、プレイオフ期間ずっと問題になっていたフリースローも第5戦で4-11しか決められなかったのに、超重要な試合で17-19とステファン・カリーみたいな確率で決めまくったのである。これをクラッチと言わずになんと表現できるだろうか。ヤニスは勝負弱いとか、第4Qで信頼できないという意見を一気に粉砕し、まさにゾーンに入っていた。

 

この優勝を決める試合での圧倒的なパフォーマンスによってはGiannisはまさにNBAレジェンドとなったのだが、今回は彼のこれまでの軌跡とレジェンドレベルについて考えたい。

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ダンクも凄いが、レブロンのエージェントと付き合っていると噂される歌手のアデルの反応も面白いw

<誰も想像していなかったヤニスの超絶的成長>

既に多くの人が知っているだろうが、ヤニスのNBAへのジャーニーは非常に特殊である。ナイジェリアからの移民の両親の間に生まれたヤニスと兄弟はギリシャで育ったが、移民だった両親はなかなか定職につけず、貧しい生活を強いられた。その為子供たちもストリートでDVDを売ったりして少しでも家計を支えて、なんとか毎日しのぐ環境だった。ただそういった生い立ちにも関わらず、彼は生まれ持った身体能力と身長の高さがあった為、高校生の頃ギリシャのバスケ界に目が留まり、プロチームでプレーするようになる。そして、まだまだ超粗削りで身長も206センチ、ひょひょろだった中、NBAのスカウトの目に留まり、半ばギャンブルで全体15位で18歳の時にバックスにドラフトされたわけである。そしてNBAに入ると数年で身長が5センチぐらい伸び、ウェイトルームにこもって筋力もつけまくって現在の身体にトランスフォームしたわけである。(2つの写真を比べたらその差は明らか)

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バックスに入団してルーキーからポテンシャルは所々で見られたが、まさかMVPになるとはだれも想像をしていなかっただろう。ルーキー時の平均得点は6.8、2年目は12.7、3年目で16.9と着実に成長はしていたが、この成績からはス―パスターになることは考えづらかった。ところがみるみる筋肉とスキルがついてくると、7シーズン目までには1試合30点近くとり、リバウンドも確実に毎試合10以上、更にはリーグトップクラスのヘルプディフェンダーとなったわけである。それはもちろん彼の生まれ持った背の高さ、筋力、圧倒的な身体能力が揃ったエイリアンみたいな身体によるものが大きいが、加えてコービーを彷彿とさせるWork Ethicの賜物とも言えるだろう。特に全盛期のレブロン以上にパワーと足の長さによって繰り出されるバケモノみたいな一人ファストブレイクの威力はリーグトップに違いない。

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<栄光と高まる批判>

ヤニスは4年目からオールスターに選ばれて、6年目にはMVP、7年目には2年連続MVPだけでなくDefensive Player of the Yearも獲得するなどリーグトップクラスの選手となり、チームも2年連続レギュラーシーズン勝率1位となった。ヤニス以外にスーパースターがいない中でその成績を残すだけでも十分すごいのだが、メディはそれで満足しない。どんなスーパースターもプレイオフでの勝敗が評価の対象となるのが常である。2019年は順調にカンファレンスファイナルに進出し、ラプターズ相手に0-2とリードしていたのだが、その後4連敗を喫っする。その大きな理由の1つが、ラプターズが行ったヤニスへのディフェンスであり、彼がドライブできないように、”壁"を作って苦手なアウトサイドショットを打つように仕向けた。ヤニスがドライブしてそのまま決めるか、チームメイトにキックアウトするかがパターン化していたバックスのオフェンスは封じられてしまい、そのままアジャストメントがされず負けた。

 

そして昨年は同じようなプレイスタイルを保ち続け、レギュラーシーズンで更に良い成績を残しながら、カンファレンスセミファイナルでヒートに0-3と追い込まれ、ヤニスも怪我をして1-4で負けてしまった。これにより彼とバックスへの批判が更に高まり、ヤニスの契約も残り1年となったことでバックスを移籍するのではという憶測も高まった。

 

然し、ここでヤニスと他のアメリカ出身のスーパースターとの違いが出る。最近のアメリカの選手は小さいときからバスケ漬けの毎日を過ごし、自分の所属チームへの帰属意識よりも自分がやりたいことを優先する。また、小さいうちからバスケチームで友達ができ、NBAに入ってからもそのコネクションで一緒にスーパーチームを作ろうとする。ネッツがこれ最たる例である。一方ヤニスはまず自分の家族とコミュニティを大事にする。彼にとっては、他のスターと組んでビッグマーケットで複数優勝するより、自分をドラフトし、はじめてのアメリカ都市で成長させてくれたミルウォーキーでチャンピョンを取りたいという気持ちのほうが強かった。また昔ながらの考えを持つ彼は自分と同じレベルかそれ以上の選手と一緒にプレーするより、そいつらを倒すことに注力してい。結果として彼はバックスとシーズン前に延長契約を結び、バックスがプレイオフで勝てるようになるよう自分のプレイスタイルを変えることにもポジティブに取り組んだ。そのため今年のレギュラーシーズンはチームのディフェンスの仕方やラインアップも実験的なものが多く、勝率自体はリーグ3位だったが、以前よりプレイオフへの準備ができていたと言える。

 

 然し、ファイナルまでの道が簡単だった訳ではない。ファーストラウンドでは天敵のヒート相手に4連勝をしたが、次の対ネッツ戦で大きな試練が待ち受ける。2連敗を喫し、特に第2戦では40点差で負けるという屈辱的な形となり、バックスはもうだめなのかとも思われた。第3戦を僅差で勝利したが、バックスのオフェンスはレギュラーシーズンのようなスムーズさがなく、全く見ていてい美しいものでなかった為、勝利したのにも関わらずバックスのポテンシャルへの疑問がより強まってしまった。その後第4戦も勝利し、第5戦も終盤までリードしておきながらデゥラントの神がかり的活躍と、またまたオフェンスが機能しなくなり、結局負けて追い込まれしまった。この試合で終盤オフェンスの活躍ができなかったこともあり、またヤニスに対する批判が高まった。ヤニスが怪我で片足しか機能していないハーデン相手にポストからフェイダウェイを打って外したのはこれを象徴するようなプレーであった。これについては酷評されて当然ではあり、もっとアグレッシブに攻めるべきであった。

 

もちろんもっといいショットを狙うべきだし、まだまだ経験不足もあったわけだが、このシリーズ中には、彼がNo.1オプションでは優勝できない、彼はロビンで、ミドルトンがバットマンだというアホみたいな議論もアメリカで起こるようになる。(ケンドリック・パーキンスが最たる例で彼の分析はとにかくひどい)  これはヤニスがミッドレンジジャンパーやフリースローを決められないから接戦の第4Qでは頼りにならないというものである。この批判は一理あるかもしれないが、そんなこと言ったらシャックだってフリースローが決められないからコービーやウェイドが必要だった。でも誰もが彼をチームのベストプレイヤーと認めていいたし、同じようにバックスが強豪となり、各試合で接戦に持ち込めるのはヤニスのプレーによるものであり、それを忘れてはいけない。これはおそらくヤニスがシャックのようなビッグマンでなく、ウィングプレーヤーのプレーに近かったことから起きた認識の相違かもしれない。

 

<レジェンドへの道>

話をカンファレンスセミファイナルに戻すと、第6戦で勝負強さを見せてホームで勝利し、シリーズは第7戦までもつれたわけだが、ここでヤニスは覚醒し始める。この試合で負けたら3年連続プレイオフ敗退となりコーチのブーンホーザーは解雇、バックスのコアの解体、ヤニスへの更なる批判が避けらない中、彼は40点、13リバウンドとの大活躍をし、デゥラントと対等に張り合ったのである。この試合も上述のファイナル第6戦のようにホリデーとミドルトンのショットが全然入らない中、ヤニスが安定した活躍をし続けてチームを引っ張った。特にオーバータイムとなってみんなが疲れまくっている中、同点となるフックショットを決めたのは、彼のオフェンスのバリエーションが増えてきている、そして試合終盤でも物怖じせずシュートするという姿勢が見られた成長のサインであった。

 

オーバータイムでネッツとの激戦を制した訳だが、ヤニスとバックスは引き続き懐疑的な目で見られた。ネッツはハーデンとカイリーが怪我をし、最後はデゥラントの独壇場となっていたからである。然し、おそらく昨年までのバックスだったら、そんなことは関係なく第5戦で負けた時点でカムバックできなかっただろう。そんなところからもバックスとヤニスの精神的タフネスと成長が見られた。

 

それ以上にネッツとのシリーズの中で、ヤニスのプレーにも変化が見られるようになる。類まれなスピードとパワーを持ちながら、ペイントを攻めるより、ペリメーターからドライブだけすることが多かった彼がようやくセンターのようにプレーし始めたのである。今まではチームもメディアも彼をデゥラントやレブロンのようなボールを保持して1 on 1から攻めるスタイルにさせようとしていたのだが、やっと自分より身体に恵まれた、インサイドで止められる選手はいないと気づいたようである。更にどこでパスを出すか、どこで攻めるか、ミドルトンやホリデーとのピックアンドロールをするタイミングなどがゲームの理解力が高まっているように見えた。

 

然し、カンファレンスファイナル第4戦で膝を怪我し、怪我の仕方からは靭帯断裂か、今シーズン絶望かと思われ、ネッツ戦での活躍が水の泡になることもあり得た。ただヤニスはただの人間ではなくエイリアンである。残りの2試合は欠場したわけだが、チームメイトがなんとかステップアップしファイナル進出を決める。するとファイナルの第1戦から早速ヤニスは復帰する。普通の人間だったら確実にそんなことはできないはずなのだが、彼の体は何かが他と違うのだろう。ファイナルの初戦は少し膝を気にしている様子も見えたが、その後の活躍は最初に書いた通りで、膝が反対側に曲がってから2週間半後にはファイナル王者というだけでもレジェントの武勇伝の1つとなるだろう。

 

<レジェンドの地位へ>

このプレイオフを通してヤニスは選手として一気に飛躍した。チームが苦しいときに自分の力でなんとかする精神力の強さ、自分の強みを理解しインサイドを攻めまくるプレイスタイルの確立、いつ自分で攻めて、いつチームメイトとセットアップするかというゲームの理解など、全ての側面のレベルが一段階上がった。そしてビッグマーケットでスーパーチームを作ることが主体となってきたリーグで、スモールマーケットであるバックスに所属し、ヤニスが唯一のスーパースターとして優勝した価値はデゥラントやアンソニーデイビスなど他のどのチャンピョンシップより重みがある。(レブロンもスーパーチーム候補だが何回も優勝しているので) ダーク・ノビツキーはマーベリックでの20年間で1度しか優勝しなかったが、その1勝はNBAファンとダラスにとって非常に印象に残るものになっており、今年のヤニスの優勝も同等の価値があると言えるだろう。

 

現時点でもし引退したとしても、優勝、NBAファイナルMVP、レギュラーシーズンMVP2回、ディフェンシブプレイヤーオブザイヤー、オールスターMVPと文句ない結果を残しており、殿堂入りは確実、NBA史上Top30の選手として名前を連ねるのは間違いない。然しヤニスはまだ26歳であり、全盛期は後2年後となるかもしれない。既にリーグトップかトップ3の選手であるが、これから数段階レベルアップしてレブロンのようにリーグを支配する日が来るのではないかとすら思えてくる。もしそうなれば、リーグ史上トップ10のスターになれるかもしれないし、彼のポテンシャルは計り知れない。ヤニスの生い立ちとバスケの出会いを考えたら、映画でも描けないようなストーリーである。

 

ただ、ヤニス自身はこういった過去の栄光や自分のステイタスに捉われることがない。ファイナル期間で有名となったインタビューの発言のように、常に現在進行形で謙虚にかつ着実に前に進み続ける彼には無限の可能性があり、我々は彼のGreatnessの目撃者となるのである。

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クワイ・レナードはNBAの最恐ディーバか

どうも。NBAファイナルがかなり面白い。バックスが2連敗の後3連勝し、第4戦と5戦は最後まで見逃せない接戦となった。デビン・ブッカーの2試合連続40点 (かつ1試合7ファウル)もすばらしい活躍であったが、最も印象に残るのはイヤニスのブロックとダンクであろう。この2つのプレーはどちらもファイナルの歴史に残るスーパープレーであった。

 

第4戦のエイトン相手のブロックは、2016年のレブロンチェイスダウンブロックに匹敵する。レブロンのブロックは第7戦残り1分半という超重要なモーメントだったので、どちらがベストブロックと言われればレブロンだろうが、どちらがより難しいブロックかといえばイヤニスではないかと思う。ピックアンドロールでボールハンドラーのブッカーをカバーしつつ、アリウープが投げられたと同時に体をひねって7フッターのダンクをブロックできるのは、イヤニスと昔のデイビット・ロビンソン、ハキームとかぐらいではないか。

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更に第5戦のアリウープダンクの決め方もイヤニスじゃなきゃできないフィニッシュであった。ホリデーのスティールが最も重要なパートではあるのだが、1点リード残り10秒の場面でアリウープを狙い行くこと自体がものすごい勇気のいることである。少しでもパスがずれたり、ジャンプのタイミングがおかしかったらバックスは負けていたかもしれない。然し、結果としてはとっても記憶に残るかつ、サンズに大きなダメージを与える一撃となった。

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さて、私の予想していたサンズの4勝2敗が見事に外れたファイナルとなっているが、より詳細はファイナル終了後に総括させて頂くとして、今回は先日クワイ・レナードがACL (膝前十時靱帯) の怪我の手術したというニュースにフォーカスしたい。

 

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<今年のクワイの怪我と手術>

彼はカンファレンスセミファイナルのジャスとの第6戦で膝をケガしたと報告されたが、その際は心配ないと彼自身が言っていた。然し、カンファレンスファイナルになって蓋を開けてみると、結局一度も対サンズ戦でプレーすることはなかった。クワイ抜きで第6戦まで善戦していたクリッパーズを見ると、もし彼が数試合でも出場できていたら、おそらくクリッパーズがファイナルに進んでいたのではないかと思う。

 

しかも最初からカンファレンスファイナルに出場できないと発表されたわけではなく、毎回試合の数時間前まで出場するかが分からず、期待をさせた上でプレイしないということが続いた。ここで問題なのは彼の怪我のハンドリングの仕方である。まず、彼は自身のパーソナルメディカルスタッフをそろえており、その人たちの診断がどうなっているかが、チームにちゃんと伝わっていなかったとのことである。その為クワイがプレーできる可能性があるかないかがチームで判断ができない状態が続いた。個人的にこれはとてもアンプロフェッショナルであると思う。どんなに優れた選手であってもバスケはチームスポーツであり、試合の戦略を立てるにあたり、スーパースターがいるかいないかで全く組み立て方が変わってくる。どんな仕事をしていても、自分が休みを取るかどうかは上司に必ず報告する必要があると思うが、スポーツでもそれは変わらない。それを怠れば自分のチームが不利になるだけでなく、チームケミストリーにだって影響する。

 

それだけでなく、レナードはケガの間最終戦を除いて、ホームコートでベンチからチームを応援するのではなく、スタンドのVIP席から観戦していたのである。これは賛否があるかもしれないが、私的にはNGである。そもそもチームのスターがケガの時に、アリーナに来ていながら、観客席から試合を見るとか聞いたことがない。普通はそもそもアリーナに来ないか、ベンチからサポートする。しかもプレイオフの重要な試合で、スタンドから観戦するとなると、自分はチームメイトより上だといいたいのかとも思ってしまう。出場ができなくてもベンチから応援や戦略の助言をすることはできるし、その他サポートできることはいくらでもある中、彼はそれをしなかった。これではチームメイトにとって面白くない。

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さらにさらに、レナードはオフシーズンになってすぐに手術を受けなかった。クリッパーズが敗退してから2週間後にACLの手術をしたことがレポートで分かったのである。もしケガした直後に手術をしていたら1か月の違いがある。

 

Partially Torn ACLはFull ACLでのリカバリーの時期はほぼ変わらず、復帰に10か月はかかると言われる。コロナで後ろ倒しになっていたスケジュールが来年の2021-2022シーズンで元に戻る予定であり、その場合10月末にレギュラーシーズンが始まり、4月末からプレイオフとなる。となると、単純に彼が現実的に復帰可能なのは5月であり、元々慎重派であることを考慮したら来シーズンは絶望の可能性が非常に高いだろう。スパーズ時代からケガに悩まされ、ラプターズクリッパーズでもロードマネージメントという調整方法でレギュラーシーズンは休み休みプレイしていた彼が、この大きなケガの後にどのような状態で復活するか不透明である。しかもこのままオフシーズンにFAになるので、クリッパーズが長期契約を結ぼうとするのか、はたまたレナードがまた移籍するのか予想が難しい。

 

<クワイのディーバの歴史>

1. スパーズ時代

レナードと言えば、常に無表情で感情が表に出ず、トラッシュトークもせずにメディアにも面白い発言はしないで選手である。いわゆるスーパースターと呼ばれるグループの中でここまで静かなプレイヤーは滅多にいない。そのイメージが強いせいか、元々はレナードが所属チームでドラマを起こすとは全く考えられなかった。ティム・ダンカンという史上最も寡黙で特別扱いを嫌ったスーパースターで一時代を築いたスパーズに入団し、2014年にはファイナルMVPとなり、必然的にレナードがこのスパーズのトラディションを受け継ぐと思われていた。

 

状況が一転したのは2017-18シーズン時の怪我とスパーズのメディカルスタッフとのいざこざである。前腿をケガしてた彼は9試合のみ出場したのだが、チーム側は彼はもっと早く出場できると診断していたのに対して、クワイ側はもっと回復に時間が欲しいと思っていたようである。更に、レナードは自分で様々な医者と相談をして、スパーズの言う事を聞かなかった。この確執はシーズン中どんどんと広まっていき、レナード側はスパーズを信用できず、スパーズ側もチームの指示に従わない彼に嫌気がさしたようであった。

 

ここで凄いのが、レナードが何を考えているか、トレードを希望しているのかといったことが全くマスコミにリークしなかったことである。それほど彼の周りはタイトなグループで口が固い人を固が集まっており、彼の周りで何が起こっているかが分からない。とはいえ、シーズンが進むにつれて両者の溝が縮まることがないことは明らかとなっており、結局シーズン終了後には、彼がトレードを希望していることが公に伝えられ、最終的にトロント・ラプターズに移籍となった。

 

2. ラプターズ時代

ラプターズにトレードされることになったのはいいのだが、レナードの契約年数は残り1年となっており、出身のサンディエゴに近いロサンゼルスのチームへの移籍を希望していると言われていた。このレナードの要望によって、彼がどこに移籍しても実質1年しかプレーすることがないと思われ、トレードするには非常にリスキーだと思われていた。そんな中、優勝経験がなく、数年連続プレイオフで苦渋を舐めていたラプターズは賭けに出ることにした。

 

移籍したレナードはプレイオフで大活躍をし、見事ラプターズを優勝に導いたわけだが、そのプロセスは大変だった。彼のロードマネージメントが話題になったのはこの年が最初であろう。今までもスター選手が怪我ではなく休養かねて数試合休むことはあったが、シーズンを通して出場と欠場を繰り返したスーパースターは彼が初である。怪我をしていた太ももに負担を掛け過ぎないようにという彼の考えではあったが、試合に出るか出ないかの決定権がレナードの一任であったところが注目すべき点である。チームではなく個人の都合でそのチームの方針が全てが決まるというのはプレイヤーエンパワーメントの新たな形であったと言え、寡黙なスターが絶対的パワーを持っていたのである。

 

もちろんチームに優勝をもたらした為、このロードマネージメントは成功だったと言えるだろうが、もしプレイオフの初期で敗退かつレナードがオフシーズンに移籍していたら、プレイヤーを自由にさせすぎた悪い例として批判の対象になっていたかもしれない。

 

3. クリッパーズ時代

ラプターズで見事優勝したら、予想されていた通り、クリッパーズに移籍したわけだが、この移籍の仕方もなかなか衝撃的だった。クリッパーズには入団するが、そのチームメイトにポール・ジョージを指名して、クリッパーズにジョージを獲得するようにプレッシャーをかけたのだ。ジョージは前年にサンダーと4年契約を結んだばかりであり、普通に考えたらトレードしづらい。然し優勝経験がなく、レナード獲得に必死なクリッパーズは大量のドラフトピックと若手ホープのSGA (シェイ・ギルジアス=アレクサンダー) を放出してジョージ獲得に踏み切った。ス―パスターがフリーエージェントで加入することはもちろん当たり前だが、そのチームに対してスターがこいつも一緒にトレードしろと要求することが前例がない。これもクワイのプレイヤーエンパワーメントが発揮された瞬間である。しかも、このジョージがトレードされるという話は直前に誰も報道しておらず、レナードが裏でずっと動いていたと考えると恐るべしである。

 

ところがクリッパーズはプレイオフで予想された結果を残せず、ナゲッツ相手に3-1リードの跳ね返され、特に第7戦は大量リードを奪っていた中で第4QはまさにChoke Jobであった。そしてシーズンが終わるとクリッパーズのチームケミストリーの問題が色々と取り出されるようになる。その中で挙がったのが、クワイのスーパースター扱いである。もちろんどんなスター選手もロールプレイヤ―より権力を持つのは当たり前だが、クワイの場合は、ラプターズ時代と同様に自分が好きな時に出場するだけでなく、家のあるサンディエゴからLAに行き来していた為、彼の到着をチームメイトが待たなければならずチーム内で不満が溜まっていたという報道もされていた。

Report: Some Clippers 'Bristled' at Kawhi Missing Games, Being Late for Flightsbleacherreport.com

 

そして、上述の今回の怪我の対応の仕方と、レナードのディーバエピソードは予想以上に多い。彼が特別なのはメディアに何も語らないし、チームメイトにすら何が起きているか伝えないので、誰も彼が何を考えているか分からない点である。これは出たがりの傾向があるはずの一般的なスター選手とは大違いである。だが、プレイオフでの怪我のアップデートのように、誰ともコミュニケーションを取らないことでチームとしては彼の真意や状況が分からず、どうしたらいいか分からなくなる。それではただやりにくいだけである。彼のお父さんはレナードが高校の時に射殺されて亡くなっており、そういったこともあってもしかしたら人を信用しづらいのかもしれない。(あくまで憶測だが) ただバスケットボールがチームスポーツである以上最低限のチームワークとコミュニケーションが求められるのも事実である。

 

もちろんどの業界のトップスターはハイメンテナンスでわがままである。現在のNBAスーパースターの中で誰が最も扱いづらいと考えたときに、多くのファンがレナードの名前を挙げることはないだろう。然し、常に顔色を窺わなければならず、何を考えているかがはっきりせず、チームの将来を不安にさせるという観点で見ると、実はレナードが最強かつ最恐のディーバなのかもしれない

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ベン・シモンズの問題とシクサーズはどうするか + NBAファイナル途中経過

どうも。とうとうNBAファイナルがはじまり、なかなか面白いシリーズとなっている。ここまで3戦が終わり、第1、2戦とも最終的なスコアは10点以上ついていたが、決してバックスとサンズで大きな力の差があるようには見えなかった。結果として第3戦はバックスの圧勝となり、第4戦次第では今後の行方はわからない。ただ引き続きサンズが優勢なことには変わりなく、先日プレビューをした際にも言及したが、総合力では確実にサンズの方が上で、弱点が少ないのが彼らの強みであり、ディアンドレ・エイトンがファールトラブルにならなければ、最終的には勝利する確率が高いと見る。

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一方バックスは、イヤニス以外の選手がステップアップしない限りは勝機は少ない。ホークスとのカンファレンスファイナルで膝をケガした際はシーズン絶望かと思われたイヤニスがわずか9日後のNBAファイナルに出場しているだけでもまさにGreek Freakなのに、2戦目の第3Qでマイケルジョーダン以来の1クオーター20点をあげたと思ったら、3戦目も41点と、まさに全盛期のシャックのような数字を叩き出しており、オフェンス・ディフェンスともに圧倒的な活躍である。にも関わらず、まだバックスが1勝しかできていないのでは、ホリデー、ミドルトンのアップダウンが激しすぎるからであり、彼らが残りどこまで安定して活躍ができるかでバックスの運命は決まる。

 

 

いずれにしてもこのファイナルでイヤニスが到達したレベルは歴史的であり、彼についてはまた別途記事にしたいと思う。私の予想は引き続きサンズの4-2だが、イヤニスがこの予想を覆してくれることをひそかに期待している。

 

さて、ファイナルはこれからの行方に注目していくとして、今回はトピックをガラッと変えて、オフシーズンに動きがあるだろうシクサーズのベン・シモンズのとトレードの可能性を探ってみたい。

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<トレード話の発端>

ご存じのとおり、今シーズン第1シードだったシクサーズはカンファレンス・セミファイナルで4-3でアトランタ・ホークスに負けてしまったわけだが、その戦犯となっているのが、元ドラフト1位のベン・シモンズである。彼のオフェンススキルのなさについては入団当初からずっと言われてきており、過去3回のプレイオフでも毎回大きな議論となっていたが、今シリーズでは特に彼の弱点が顕著に表れた。なんと対ホークスの合計7試合で、第4QのFGが3/3と7試合で僅か3本しかシュートを放ってないのである。(3本全部決めてはいるが。。。) しかもシリーズ終盤の第4戦以降は1回もシュートを打ってないというのは衝撃的なスタッツであり、一応チームNo.2の選手なのだから批判されても仕方がない。

 

更に、フリースローにいたっては、対アトランタのシリーズ合計15-45と僅か33%であり、これはもう全盛期のベン・ウォーレス並である。シュートも打たないわ、フリースローも決められないでは、接戦の試合の終盤にいる意味がなくなる。(HCのドック・リバースは最後まで使い続けたが)

 

<シモンズの問題>

シモンズのオフェンスにおける問題は色々あるのだが、何よりもシュートを一切打とうとしないのが致命的で、これはもはやメンタルの問題である。ボールを持っていたとしてもジャンプショットは決めらないし、フリースローを決めることができないからそもそもボールを持ちたくないのは見てて明らかであった。第7戦の超重要局面、ゴール下でワイドオープンでダンクができたのに、それをパスしたのはまさにこのメンタルの問題を顕著に表した象徴的なプレーであった。

 

では、なんで彼がこんなにオフェンスの自信を持てないのかというと、入団当初からスキルが全然向上していないからである。圧倒的なサイズと身体能力を持ち、トランジションではレブロンの全盛期のようなパワーとスピードですごい威力を発揮するのだが、じゃあハーフコートになった場合どうなるかというと、ジャンプショットは一切打たない、ポストプレーもできないのだからなかなか使い勝手が悪い。ポストアップは一応右手のフックショットがあるのだが、ジャンプショットについては先程の通りそもそも一切打とうとしない。メディアやファンはよく3ポイントに拘るが、3ポイントといわずフリースローエリアからのジャンプショットだけでも取得してくれたら大分スペースが広がるのだが。。。練習やたまーに放つジャンプショットを見る限り、それなりにスムーズなフォームではあるので、ほんとにメンタルブロックが一番強いのだとは思う。

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入団してもう5シーズン経ったのだが、入団当初から若干フックショットがよくなったぐらいで、ほぼバリエーションが増えていないのはとっても大きな問題である。実はこの原因の1つは、彼が左手の使い方が苦手だからじゃないかという説もある。実際のとこ、フックショットも常に右手だし、レイアップの7割ぐらいも右手なのである。そもそも彼は利き手は右手で、シモンズの父親が幼い時に、ベンを左手シューターにさせたのである。利き手とシューティングハンドが逆の選手はいるのだが (レブロンやウエストブルックは実は利き手が左で、ショットは右である) 、もしかしたらシモンズは逆にジャンプショットを利き手の右手にしたら、もっと自信を持てるようになるのかもしれない。

 

<シクサーズの問題>

シモンズのオフェンスについて、色々と批判してきたが、それ以外は素晴らしい選手なのである。上述のサイズと身体能力からレブロン級のクリエイティブなパスを出せるバスケセンスは、そう毎年現れる才能ではなく、それだけで各チームにとって価値がある。また、さっきからオフェンスの課題をずっと言っていたが、ディフェンスについては毎年向上しており、今年はDefensive Player of the Yearで第2位となったぐらい、PGからパワーフォワードまで様々なポジションをカバーできる能力はリーグでもトップクラスである。

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そんなシモンズの長所を最大限に生かすには、彼がメインプレーヤーとなって、周りにシューターを揃えてスプレッドアウトするというスタイルが必要になってくる。ただシクサーズジョエル・エンビードという今年のMVPでNo.2のセンターがペイントを陣取る。エンビードもソフトなタッチで3ポイントも全然決められるのだが、彼の強さはペイントにあり、巨体とパワーで圧倒できるだけでなく、ハキーム・オラジュワンのようなフットワークとジャンプショットを持つ革命的なセンターである。

 

エンビードとシモンズのフィットは昔からベストではないと言われてきたが、脇を固める選手のバランスでなんとか保たれてきた感はある。しかし、現在のシクサーズはペリメーターでオフェンスを作れる選手が少なく、トバイアス・ハリスはプレイオフで姿を消す傾向があり、セス・カリーは良いロールプレーヤーだが、彼がオフェンスの中心となるには荷が重すぎる。その為、プレイオフでは最終的にエンビードがオフェンスをひたすら作り出していたのだが、センターにそれを任せるのは酷だし、エンビードは昔からスタミナ不足で必ず第4Qに息切れしてしまう。(エンビードの怪我とコンディショニングもずっと入団時からの課題である)

 

現在どちらの選手がシクサーズにとってキーピースかとなると確実にエンビードであり、シクサーズロスターにはエンビードを支えるオフェンス力を持つ強力なウィングやガードが必要になる。その選手にシモンズが今すぐに成長することは100%ないので、となると彼をトレードするしかなくなるのである。

 

<トレードの可能性>

ただまたここで問題になるのが、シモンズのトレードバリューである。レギュラーシーズン中は、ディフェンスの飛躍もあり、おそらくこれまでで最も高いトレードバリューを持っていたはずだが、プレイオフに多くの人が失望し、かなり価値が下がってしまっている。彼を欲しがるチームと、シモンズをトレードしたことでシクサーズが得られる選手のレベルに乖離が生まれてしまうのが現状ではある。シーズン前にジェームズ・ハーデンがロケッツからトレードリクエストをしたときに、シクサーズはベン・シモンズともう一人の選手をオファーして、ほぼトレードが成立する寸前までいったぐらいシモンズの評価は高かったが、今じゃそんな話はできないであろう。

 

また、例えばついこの間までは、もしブレイザーズがデイミアン・リラードをトレードすることにしたら (現在トレードの噂あり)、シモンズが対価となっていただろうが、今はおそらくCJ・マコラムでないとトレードは成立しないだろう。ということで、ここで何個か個人的にあり得ると思われるトレードの可能性を考えてみたい。

 

1. ラプターズからカイル・ラウリー

このトレードはお互いにとって利益がありそうである。一昨年の優勝からチーム再建を狙うラプターズにとって、35歳のラウリーをキープする意味はあまりない。シクサーズにとっても、シモンズが担っていたプレイメイクに加えてシュート力を持つラウリーが入ればオフェンスのバランスもよくなる。ラウリーが高齢とはいえ、まだ2年ぐらいは活躍できると思われ、エンビードの全盛期を無駄にしない為には、あり得るトレードではないかと思う。

 

2. ブルズからザック・ラビーン

今年オールスターとなったラビーンの爆発的オフェンス力はシクサーズには大きなプラスとなるのは確実である。ただ、プレイメイクは下手なのでプラスでポイントガードの獲得は誰か必要にはなってくるだろう。逆にブルズがラビーンを手放すして、シモンズを取りたいかが微妙だが、オフェンスガードのコービー・ホワイトが既にいるのであり得なくはないと思う。

 

3. ペイサーズからマルコム・ブログドン

ちょっと格が下がってしまうが、現実的にはブログドンぐらいの選手の獲得になってしまう可能性もあるだろう。このトレードは実際に最近話があったとレポートされたぐらいである。ケガがちなのが欠点ではあるが、シュートもでき、ドライブもでき、ディフェンスも信頼できるブログドンの加入は確実にシクサーズにとってプラスとなる。ペイサーズにとってはスター選手を獲得できるチャンスではあるが、既にサボニスというローポストからのパスもうまいビッグマンがいる中で、シモンズが必要となるのかは疑問ではある。

 

4. スパーズからデマー・デローザン

2年連続プレイオフを逃し、とうとうチーム再建期を迎えているスパーズ。これから若手のチームにシフトしていく必要はあり、ベテランスターのデローザンをそろそろ放出するのではと個人的に考えている。シクサーズにとっても、ミッドレンジで一人でオフェンスを作り出せ、最近はプレイメイクのレベルも上がったデローザンはいいピースとなるのではないか。(3ポイントが打てないのが痛いが、、、) シモンズも名将グレッグ・ポポビッチの手にかかれば、何かが開花するのではと期待したい。

 

5. ブレイザーズからCJ・マコラム

上述したトレードで、マコラムはデローザンのように一人でオフェンスを作り出せるだけでなく、3ポイントも上手い。ディフェンスが弱くなるのが難点ではあるが、シクサーズが必要なスキルは持っている。ただもしブレイザーズがリラードをキープするなら、ボールが必要なシモンズとリラードのコンビが機能する気はしないので、可能性は低そうである。

 

6. キングスからディアロン・フォックス

キングスとのトレードではバディー・ヒールドの名があがっているが、彼はシューターなので、オフェンスを作り出すという意味ではちょっと違うかもしれない。であれば、ポイントガードのフォックスはどうかと思う。彼はシュートよりドライブが優れているが、ジャンプショットも年々向上しており、シクサーズとのフィットは悪くはないとは思う。キングスとしてもルーキーだったタイリース・ハルバートンが素晴らしい活躍を見せ、ポイントガード兼シューターの役割をこなるので、シモンズとのコンビでも十分存在感を見せられると思う。

 

色々とトレードの可能性を探ってきたが、シクサーズGMであるダリル・マレーはロケッツ時代に数々の大物トレードを実行してきた手腕があるかつ、今のロスターに満足しているわけはないので、オフシーズン何かしらの動きは必ず起こると思っている。彼らの動向には大注目である。

 

サンズ対バックス:NBAファイナルプレビュー!

どうも。2020-2021年シーズンがとうとう残り僅かとなり、NBAファイナルの進出チームも決まった!プレイオフでは過去に例がないほどケガ人が続出し、今年のプレイオフアスタリスク (注釈) がつくと主張するアナリストも見られる。確かに今年の怪我人の数は異常で、カンファレンスファイナルでもクリス・ポールのコロナ感染 (ワクチンを打っていたのに!) から、クワイの膝の怪我、イーストではイヤニスとヤングが同時に不在となるなど、カジュアルNBAファンとしては興味がわきづらいかもしれない。

 

然し、過去のプレイオフも振り返っても、キープレーヤーにケガがなかったことはほとんどない。例えば、昨年のファイナルでも、ヒートからバム・アデバヨや ゴーラン・ドラギッチがケガで欠場し、一昨年のファイナルにおいても、ケビン・デゥラントとクレイ・トンプソンが欠場しなかったらラプターズのchampionshipはなかったかもしれない。確かにその時には、スターの怪我について言及する人はいたが、数年もたてば誰も別に覚えていないのである。皆がPrisoner of the momentになっているだけだと考えると、後2年もすれば今年の優勝チームがラッキーだったという議論はなくなるだろう。

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今年のプレイオフに話を戻すと、サンズとバックスのマッチアップということで、予想外という識者もいるが、 お互いレギュラーシーズンから安定した実績を残していたので妥当な結果と個人的には思ってる。サンズはチャールズ・バークレーがMVPを獲得した93年以来のファイナル、バックスはカリーム・アブドゥルジャバーが大エースだった74年以来のファイナル進出ということで、どちらのチームにとっても超久しぶりの舞台であり、バックスは30年ぶりの優勝、サンズにいたっては過去に優勝経験がないということで両チームにとって非常に大きなチャンスなわけである。

 

サンズはファーストラウンドでアンソニーデイビスがシリーズ途中から怪我、セカンドラウンドではナゲッツのジャマール・マレーが不在、カンファレンスファイナルでは、クワイが不在ということで、3連続で相手チームの怪我の恩権を受けたことは確かだが、各シリーズでチームの総合力の高さとオフェンスとディフェンスのバランスを見せつけた。サンズの突出すべきところは、弱点がほぼないというとこであり、Point Godことクリス・ポール、エースのデビン・ブッカー、プレイオフで急成長したセンター権アンカーのディアンドレ・エイトン、ウィングのミケル・ブリジッズ、ジェイ・クラウダ―、安定したベンチとスキがないロスターが揃っている。

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一方のバックスは、ファーストラウンドのヒートは問題なくスイープしたが、セカンドラウンドのネッツ以降は、アップダウンがとっても激しかった。カイリーとハーデンがシリーズ途中でケガし、ほぼデゥラントのワンマンショーのネッツに大苦戦し、第7戦にぎりぎり勝利したと思ったら、ホークス相手にも試合毎に予想がつかないパフォーマンスで安定感が欠けていた。それでもトレイ・ヤングが第4戦以降欠場したことも追い風となり、バックスファンをひやひやさせながらもなんとか勝ち抜いた。特にカンファレンス・ファイナル第4戦でイヤニスが膝をケガした中、第5、6戦にイヤニス抜きでミドルトン、ホリデー、ポータス、ロペスなどチームメイトがステップアップしたことは賞賛に値すると思う。(特にホリデーとロペスのディフェンスは素晴らしかった)

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ということで、どちらが優勝してもエキサイティングな結果となる今回のNBAファイナルの展望を予想していみたい。

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1. イヤニスの怪我の状況

言うまでもなく、今回のファイナルで一番大きな争点が、バックスのスーパースターのイヤニスの怪我の状況である。現状ではday to day basisとのことではあるが、ホークスとの第6戦前のレポートでは、もし第7戦があった場合に出場できる可能性が高いということだったので、ファイナルの第1戦に間に合うかもしれない。

 

然し戻ってきたとしても、100%の状態になるのか、80%、70%の状態なのかによってもチームの攻め方が全然変わってくる。トレイ・ヤングも足首のケガをおして第6戦に出場したが、本来の姿からは程遠かった。もし同じぐらいのレベルでしかイヤニスが戻ってこれないなら、むしろ彼をベンチに置いたままの方が、バックスのオフェンスは機能しやすいだろう。特にイヤニスのプレイスタイルは、シュート力ではなく、身長に見合わない圧倒的なスピードとパワーをベースにしているため、全速力や体に体重を思いっきり乗せられる状態でない場合、彼の威力は半減してしまう。

 

対ホークスの第5、6戦で見たようにバックスのオフェンスはイヤニスがいるかいないかで大きく変わってくる。ビッグマンのブルック・ロペスが3ポイントシューターからよりペイントに近づいてプレーするようになり、ホリデーもよりバスケットにアタックしていた。(イヤニスがいる場合、彼がリムに突進できるようにスペースを空けなければいけない為) これがホークス相手にはうまく機能していたのは確かなのだが、ホークスよりもディフェンスが3段階上で、ビッグマン、ウィングともに優れたディフェンダーが揃ったサンズ相手に、常に30点15リバウント、ディフェンスの支配力を持つイヤニス抜きではどうしても限界がある。イヤニスが少なくとも第3戦から復活できるならバックスのチャンスはあるが、もし丸々出場できない、ファイナル後半からしか復帰できないとなると、バックスの勝機はかなり低いと考える。

 

2. レギュラーシーズンのマッチアップ

ここからはイヤニスが最初から出場できると仮定して、レギュラシーズンを見ていこう。実はこの2チームの対決は超接戦で、レギュラーシーズン2試合とも1点差でサンズが勝利しているのである。と考えるとこの2チームの実力はほぼ互角だったと言えるだろう。(2試合目の最後のレフリーの判定に疑問が残るが。。。)

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サンズ側から見ると、両試合ともクリス・ポールが大活躍しており、スコアリング、アシストの面からゲームをコントロールしていた。また突出すべきはディアンドレ・エイトンがまだまだ成長段階だったレギュラーシーズンで、17点、20点と着実な成績を残している。一方バックスからはイヤニスが大活躍しており、特に初戦で47得点とペイントを支配している。ミドルトンとホリデーはそこそこの数字を残したが、ロペスは抑え込まれていた。ここから言えることは、バックスにとっては、ホリデーとポールのマッチアップ、エイトンとロペスのマッチアップで互角に持ち込めるぐらいにする必要があり、サンズにとってはイヤニスを抑え込み、ミドルトンのhot streakを防ぐディフェンスが大事となってきそうである。

 

3. 両チームの実力

具体的なマッチアップを見ていくと、まず両チームともディフェンスが優れている。サンズはガードとウィングのバランス、ボールプレッシャーを得意としており、エイトンのペイントディフェンスも向上している。バックスはペイントの支配力が群を抜いており、ロペスとイヤニスのリムプロテクションは一流であるかつ、どのポジション相手にもロックダウンできるホリデーとタッカーの個人レベルの1 on 1ディフェンスも素晴らしい。その為、どちらのチームともオフェンスをしっかりと組み立てて相手を崩せるかが大きなカギとなると思われる。

 

その上でオフェンスを考えると、サンズはポールとブッカーがボールを支配し、ゲームのペースをコントロールすることが多いが、ボールムーブメントにも優れており、ロールプレイヤーは3ポイントだけでなく、バスケ下にカットするなどオフェンスの動きが多い。対して、バックスはイヤニスがオープンコートでプレッシャーをかけ、ハーフコートでは比較的1 on 1が多く、ロールプレイヤーが3ポイントを狙いにいく。その為スリーが入ってるときはアンストッパブルだが、スルーが外れると一気にオフェンスのリズムが崩れがちなので、安定感という意味ではサンズに軍配が上がる

 

ただバックスがサンズオフェンスを苦しめることは確実にでき、現在ガードディフェンダーNo.1のホリデーとデゥラント相手に善戦したPJタッカーがブッカーとマッチアップするなるとお互いスコアするのに苦労はするだろう。後はバックスのディフェンスがスイッチをするかしないかも大きなポイントとなる。ポールはピックアンド・ロールからセンターとのマッチアップを見つけて、ミッドレンジジャンパーを決めるマスターであり、バックスがスイッチをしたのを見て。ポールがブルック・ロペスを狙いまくるのか、それともバックスがスイッチをせずにエイトンを自由にさせるのかといった、ディフェンスストラテジーは見物である。(ちなみにバックスは元々はスイッチをしない一択のチームだったが、最近変わってきている)

 

サンズもブリジッズ、クラウダ―といった優れたウィングディフェンダーがミドルトンを苦しめることができるだろうが、エイトン含めたチームディフェンスでどこまでイヤニスの支配力を抑え込むかがが最も大事なポイントとなるだろう。

 

4. ファイナル勝者予想

色々と書いてきたが、私的な意見としては、ホームコートアドバンテージがあり、より試合毎の安定感があり、現状ケガの心配もなく、チームの総合力が高いサンズの優勝の可能性が高いと思っている。バックスが勝つには、まずイヤニスが100%の状態となること、そして安定感ゼロのミドルトンがファイナルの期間だけでも爆発すること、ロペスがオフェンス・ディフェンスの両方で存在感を見せること、ホリデーがポールを少しでもコントロールできることが多くの条件が必要となってくる。もちろんサンズも、ポールがケガをしない、ブッカーがコンスタントに得点すること、エイトンがロペス、イヤニス相手にペイントで圧倒されないことはマストとなる。

 

個人的にはずっとバックスを応援してきたので、彼らに勝ってほしい気もあるし、現状のチームの実力を考えるとサンズの優勢と言わざる負えない。

予想:サンズが4勝2敗で勝利

 

5. 2021年ファイナルの意義

前述の通り、このプレイオフはケガ人が続出したことでレイカーズやネッツといったビッグネームが出ないことに不満を言う人もいる。然し私は今回のファイナルはどちらが勝ってもNBAにとって非常に意義があるかつ、素直に称えたくなる。なぜなら両チームがビッグマーケットではないだけでなく、久しぶりに新しいチーム、新しい選手が優勝する機会を得られたのである。ここ10年は常にレブロンやデゥラント、カリーといった見慣れた顔ぶればかりだったのだが、今年はどちらのチームも優勝経験者が一人もいないのである。まさに新しい風と言っていいだろう。

 

更に、サンズが勝てば、希代のポイントガードであるクリス・ポールが移籍を繰り返しながら、16年目で初のチャンピオンになり、オールタイムベストプレイヤーのランキングで一気にTop30程度にのし上がるかもしれない。そして入団時から低迷し続けたサンズで孤軍奮闘したブッカーの苦労が初のプレイオフでいきなり報われることになるのである。

 

一方バックスが勝てば、イヤニスのアメリカンドリームが完結するのである。移民としてギリシャで貧しい暮らしをしていた痩せっぽちの彼が、NBAの舞台でスーパースターになり、今年のシーズン前にもっと強力なチームやビッグマーケットに移籍希望も出せた中、バックスと長期延長契約を結んで残留し、ここで優勝するということになれば、これ以上のストーリーはない。

 

最近はレブロンやデゥラントなどのベストプレーヤが移籍をしてスーパーチームを作って優勝をすることが多かったが、やはり生え抜きのスターがスモールマーケットで敗退を経験しながら数年かけて優勝する方が感慨深いものがある、ダラスで頑張り続けたダーク・ノウィツキ―が2011年に優勝した価値は他のスーパーチームの優勝よりも全然上だと思うし、各NBAチームに希望をもたらすことができる。ということで、どちらかが勝ったとしても素晴らしい結果になるこのマッチアップ、面白いシリーズとなることを祈りたい。

 

 

トレイ・ヤングの急成長と3年目プレイヤーの活躍

どうも。プレイオフ真っ只中で諸々忙しくなりブログが投稿できていなかったが、久しぶりに書かせて頂く。

 

<プレイオフ途中経過レポート>

カンファレンスセミファイナルでは、バックスとネッツが死闘を繰り広げ、改めてケビン・デゥラントの凄さ、現在のベストプレイヤーとしての地位を決定づけた気がする。2年前にアキレス腱を断裂したとは思えない復帰ぶりで、ハーデンがケガでほぼ動けない、カイリーが途中離脱という中、スコアリング、パス、ディフェンスの全てでハイレベルなプレーを披露した。つい10年ぐらい前では、アキレス腱をケガした人がその後100%の状態に戻ることなどなかったのだが、KDの信じられないような活躍を見ると医療の進歩を実感させられる。(もしくはKDがバケモノか) 彼のゲーム5とゲーム7のパフォーマンスはプレイオフの歴史でもかなり高レベルなものであったと思う。

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一方、バックスは多くの人の不信感を買った。もちろんKDが凄かったとはいえ、それ以外のスター選手がいない中で、第7戦で延長戦までもつれ込まれていたら、優勝を狙うチームとしてはいただけない。もちろん3勝2敗と追い込まれた中で、カムバックをし、第7戦でも苦しみながら勝利したことにはもちろん価値があり、ネッツという強敵がいなくなったことで、優勝への可能性は大いに高まったと言える。

 

エストも、クワイをシリーズ途中でケガで失ったクリッパーズが粘りと勝負強さを見せつけ、クワイなしで第5、第6戦を勝利したのは見事だった。Pandemic Pと揶揄され、ここ数年のプレイオフの不調でバスケファンから馬鹿にされ続けたポール・ジョージがステップアップし、チームを率いているのは感慨深く、ペイサーズ時代に見せたエースの才能を見せつけている。(まあアップダウンは未だに激しいのだが、、、)

 

そして、No.1シードだったジャズは、コンリーやミッチェルのケガがあったとはいえ、クワイなしのクリッパーズに2連敗したということで、チームの構成・方針を再検討する必要があるだろう。ゴルベアはレギュラーシーズンにおいては、ベストディフェンダーとして君臨できるが、毎年プレイオフでk繰り広げられるスモールボールで各チームに対抗され、巨体のゴルベアが3ポイントシューターを追い掛け回すことは不可能であり、この問題をどう対処していくか、ジャズの今後も気になるところだ。

 

また、サンズは対ナゲッツ相手に圧倒的な安定感を見せつけ、問題なくカンファレンスファイナルに進出した。クリス・ポールがワクチンをうちながらコロナになったり、ブッカーが鼻を骨折したりとカンファレンスファイナルでは災難続きだが、残りのチームの中では、オフェンスとディフェンスのバランスが一番取れたチームと言える。

 

そして、今年のプレイオフで最も驚くべき結果だったのが、アトランタ・ホークスの大躍進とシクサーズのCollapeseであろう。シクサーズの"Process"はジョエル・エンビードとベン・シモンズがチームのコアとなり、イースト屈指の強豪となったわけだが、4年連続でプレイオフ敗退となり、佳境を迎えた。ベン・シモンズが一切シュートできないなど課題が山積みではあり、このシクサーズをどうするよ問題はまた別の記事で言及したい。

 

サプライズが多い今年のプレイオフの中で、誰もが予想していなかったカンファレンスファイナルに進出したのがホークスである。シーズン当初は勝率も5割以下で、エースのトレイ・ヤングとチームメイトの確執がニュースになったり、コーチのロイ・ピアーズが解雇され、ネイト・マクミランが暫定ヘッドコーチとなるなど、チーム内の混乱が見られが、シーズン後半になると安定してきて非常にバランスの取れたチームへと変貌する。その勢いのまま第5シードでプレイオフに突入し、ニューヨーク相手に問題なく勝利し (多くの識者はニックス勝利を予想していたが、、、私はホークスが勝つと思っていた)、第1シードのシクサーズをアップセットまでしてしまう。正直私自身もホークスがシクサーズに勝つなんて思ってもいなかったし、シーズン途中の時点でホークスがカンファレンスファイナルに進出することなど誰が想像していただろうか。

 

<トレイ・ヤングの凄さ>

そんな誰もが期待してなかったホークスの快進撃の立役者は、紛れもなく3年目のスター、トレイ・ヤングである。しかもただ活躍するだけでなく、相手ファンを逆なでする挑発行為を幾度となく行い、久しぶりにNBAのVillanとしての地位も確立しつつある。ニックスのホームクラウドに向かってQuietサインをしたり、バックスとの第1戦では、シュート打つ前にShimmyダンスを披露して、3ポイントを決めるなど、一昔前のNBAならぶん殴られていてもおかしくない行動をしている。

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そんなヤングは、もちろんこういったトラッシュトークや挑発行為だけでなくプレーの面でも相手を黙らせており、シクサーズが誇るベン・シモンズやマティス・サイブルといったトップディフェンダーをきりきり舞いにしたのは単純に圧巻だった。彼は大学時代からロングレンジの3ポイントがメディアでは取り上げられ、ステファン・カリーと比べられることも多いが、実は3ポイントの確率はそこまで良くなく、彼より3ポイントがうまい選手は全然いる。彼のすごいところは、リーグトップレベルのペイントでのフローターとパス能力、ディフェンス読んでファールを引き出す能力である。そういう点で、彼はスティーブ・ナッシュとジェームズ・ハーデンのスキルと、アイバーソンのタフネスを混ぜた感じだろうか。

 

特にフローターとパスの組み合わせの威力はすさまじく、ペイントに入ったらほぼモーションなしでフローターを打て、そのフローターと同じモーションで、クリント・カペラやジョン・コリンズなどのビッグマンにロブパスをできるもんだから、ディフェンダーはゴール下で待機したらフローターをされ、ヤングをカバーにいったらアリウープをされるということで非常に対応が難しい。それでいて、シューターにキックアウトやクリエイティブなパスをできるのだから、ディフェンダーからしたらお手上げである。

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<トレイ・ヤングへの批判と成長>

然しヤングの株が急に上がったは、今年のレギュラーシーズン終盤とプレイオフに入ったこの3か月である。彼のプレイスタイルは元々新人ながらボールをずっと保持して、自分がプレーに関わらない時はつったまま何もしない、ボールを運んだと思ったら、30フィート先からパスを一切せずにシュートを打つこともあるなど、それにあきれる・不満に持つチームメイトの顔やボディーランゲージが明らかに見て取れた。

 

鳴り物入りで入ったルーキーに対して、チームがお咎めなく好きなようにプレーさせ、ベテラン選手やタフなコーチがいなかったら、まだ二十歳前後の選手が自分の好き勝手プレーしてしまうのは、当たり前なのかもしれない。それで勝ち星につながったらまた違うのだろうが、ヤングの独りよがりなプレーではチームの勝率は低く、よくいるGood Stats Bad Team Guyというレッテルを貼られていた。

 

では何が変わったのだろうか。1つはシーズン途中で暫定HDとなったネイト・マクミランの影響があるだろう。彼のプレイオフでの采配に何年もの間疑問を持たれているが、チームをまとめる力とスター選手にも屈しない姿勢は以前から評価されていた。そして、ホークスのコーチとなった際は、ヤングに対して彼のセルフィッシュなプレイスタイルとそれに対するチームメイトへのコート上でのリアクションをビデオで見せたようである。そういった指導もあって、ヤングは徐々にチームプレーとケミストリーの重要さを理解してきたのではないかと思う。

 

また、彼をサポートするチームメイトも確実に強化された。センターのクリント・カペラはジェームズ・ハーデンとプレイしていた為、ボール保持率が高いガードに慣れているし、ボグダン・ボグダノヴィッチはプレイメイクもでき、ヤング以外のボールハンドラーとして機能もするし、キャッチアンドシュート力も高い。そして国際大会での実績も証明済みである。加えて、ベテランのルー・ウィリアムズ、ダニロ・ガリナリ、ソロモン・ヒルといった選手はヤングはチームのオフェンスだけでなく、リーダーシップ面でもチームをうまくまとめる役割を担っているはずである。

 

更に、彼はまだ3年目の選手である。どんなプレイヤーだって1年目から苦しまない選手はいない。ジョーダンやレブロンだって1年目はプレイオフに出ていないし、特にジョーダンについては数字は残しても勝てない選手という批判をずっとは言われていた。プレーする期間が延びれば、スキルだけでなく、精神的にも成長するようになり、ゲームを理解していくようになるのは当たり前である。そういう意味では最近はメディアが各プレイヤーをジャッジするのが早すぎる。1年目、2年目の選手が数試合活躍しないだけで、すぐにBust (失敗) と評される。これはTwitterなどのSNSでどんどんと意見を言い合うTake Cultureの影響もあるだろう。ヤングだってルーキー前のサマーリーグで全然活躍できず、彼はBustだと言われていた時期だってあった。そこから、1年目の後半に片鱗を見せ、昨年は個人成績の躍進、今年はチームプレイヤーとしての成長、一気にカンファレンスファイナル進出と非常に順調な階段を上っていると言えるだろう。

 

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<その他の3年目選手の活躍>

ヤングと同じ3年目の選手と言えばルーカ・ドンチッチの存在は絶対に忘れてはいけない。ヤングとトレードという形でマーベリックスに入っただけでなく、同じボールDominantプレイヤーという点で、2人はよく比較されることが多かったが、これまではルーカの圧勝だった。2年目からMVP候補となり、昨年はプレイオフに進出して1回戦敗退はしたが、圧倒的なポテンシャルを見せつけてくれた。今年も昨年レベルの成績を残し、チームメイトがついてこない中、孤軍奮闘してクリッパーズをぎりぎりまで追い込んだ。現在22歳の年齢を考えたら、リーグ史上最高の22歳かもしれないレベルである。ただ2年連続ファーストラウンドで敗退し、ヤングがいきなりカンファレンスファイナルに出場したことで、2人の差が少し縮まったかもしれない。2人のどちらかがすごいかと言われたが、サイズも2回り大きく、パスレベルも上で、ありとあらゆるオフェンスパターンを保持するルーカがまだ上なことは確実だが、これからチーム成績を含めてどちらが伸びていくかを見ていくのかが楽しみである。

 

ヤングとルーカ以外にも、フェニックス・サンズからは、ディアンドレ・エイトン、ミカル・ブリジッズはチームの中核を担い、エイトンに関してはプレイオフでヤングのように大きな飛躍をしており、昔は苦手だったディフェンスで大きく貢献しており、オフェンスでもフックショットやジャンパーでチームの大黒柱の一人となってきている。

 

加えて、シュート力とディフェンスのハイブリットプレイヤーである、ジャレン・ジャクソンJr、若手ガードの中でも超有望株のシェイ・ギルジアス=アレクサンダー、ナゲッツで超ハイレベルシュート力を披露しているマイケル・ポーターJrなど、これからのリーグを支える3年目プレイヤーが台頭してきており、来年以降も彼らの成長を見逃せないし、リーグ全体でスターの若返りの時期になっているのではないかと思う。

NBAプレイオフ カンファレンスセミファイナル マッチアッププレビュー!!

どうも、NBAレイオフのファーストラウンドが終わりを迎え、とうとうカンファレンスセミファイナルとなる。ファーストラウンドで第7戦まで行ったのは、クリッパーズマーベリックスだけだったが、様々なストリーラインがあり、全体的にエンターテイニングだったのではないか。

 

また、個人的な話だが、先日ファーストラウンドのレビューをさせて頂き、各マッチアップの勝利数などに違いはあったが、8マッチアップ中7つ当てることができた。レイカーズ対サンズでレイカーズ勝利を予想してしまったが、元々はサンズでも十分勝てると思っていたにも関わらず、レブロンを疑うことは好ましくないと最後にチキってレイカーズを選んでしまった。

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デイビスが4試合目に負傷してからはレイカーズロスターが弱すぎて、さすがにスーパーヒューマンのレブロンでもダメだった。ただ、レブロン自身も怪我もあったとはいえ、第6戦でクラウダ―に何度もブロックされたり、第4Qの途中で自分からベンチで休憩したいと申し出るなど、衰え知らずだったレブロンの体力と身体能力にとうとう陰りが見えてきた感じがする。常にケガを抱えるデイビスと、更に年齢を重ねるレブロンの負担を軽減する為に、頼りになるNo.3を獲得できるかが今年のレイカーズのオフシーズンの最重要課題となるだろう。

 

その他、ファーストラウンド敗者のハイライトとしては、イーストからはジェイソン・テイタムのスコアラーとしての躍進、ジュリアス・ランドルの苦戦とファーストオプションとしての限界などが見えた。

 

エストからは、ジャ・モラントのスーパースターの片鱗とグリズリーズの将来への期待、デイミアン・リラードの孤軍奮闘とブレイザーズコアの解体への道と言ったところだろうか。特にリラードの第5戦での55得点と12本のスリーポインターは、プレイオフ史上最高のパフォーマンスの1つであり、第4Qとオーバータイムに一人でスリーを決めまくってDame Timeと呼ばれる所以を存分に見せつけてくれた。彼のサポーティングキャストが全く貢献せずに、ブレイザーズが負けたのが大いに悔やまれる。ヘッドコーチのストッツが解任され、ブレイザーズの大改革がオフシーズン行われそうである。

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また、第7戦まで行ったクリッパーズマブスホームチームが全く勝てないという面白いシリーズで、ルーカが更にレベルアップをした感じである。特にマブスが勝利した第1-2戦と5戦は、クリッパーズディフェンダーと遊んでるじゃないかというぐらいのハイレベルなオフェンスを披露してくれた。シリーズの途中からの首のケガもあり、クリッパーズをクローズすることができなかったが、リーグTop5に入るスーパースターの地位を確立したのではないかと思う。そして、マーベリックスに追い詰められ、絶対絶命のピンチになったクリッパーズが復活したのは驚きだった。

 

その他、レイカーズとヒートという昨年のNBAファイナルに進出した2チームがファーストラウンドで敗退するという中々起きない事態が発生したのも注目すべきで、どちらのチームもケガに泣かされたシーズンは、バブルプレイオフで遅れたシーズンの終わりと短いオフシーズンが少なからず影響したと思う。

 

また、ファンがプレイヤーに唾を吐いたり、ポップコーンを投げたり、差別発言をしたりとファンの横暴も注目を集めた。と、振り返るだけで記事をかけてしまうのがだ、今回はセカンドラウンドのマッチアップにフォーカスして、前回と同じく勝者の予想をしたい!

 

<イースト>

(1) 第1シード:フィラデルフィア・セブンティシクサーズ vs. 第5シード:アトランタ・ホークス

第1シードで問題なくネクストラウンドに進出したシクサーズだが、暗黙が立ち込めている。絶対的エースのエンビードが半月板断裂で負傷してしまったのである。このケガはオフシーズンの間に手術が必要になってくるものだが、彼が100%の状態でない中シクサーズがプレイオフを駆け抜けるのはかなり厳しい。ベン・シモンズは一生スコアラーにはなれないだろうし、(それ以外は色々素晴らしいのだが)、ハリスも安定感に欠け、じゃあ得点取ってくれとなった時に信頼は置けない。その他セス・カリーもいるが、彼も一試合30点取れるような選手ではない。エンビード以外に頼りになるスコアラーがいないシクサーズのオフェンスが、対ホークス相手にはどこまで機能するかがポイントになる。

 

一方ニックスディフェンスを切り崩し、予想以上に簡単にカンファレンスセミファイナルに進出したホークスのオフェンス力は光るものがある。3年目のエース、トレイ・ヤングはサイズの無さやセルフィッシュなプレーで批判を受けることも多かったが、シーズン終盤から自分がボールを保持し続ける割合が減り、チームプレーを重視するようになってきた。選手としてレベルアップして臨んだファーストラウンドでは見事な活躍を見せ、スコアリング、アシストともにスターらしい数字を残し、彼を疑う目を退けた。久しぶりのプレイオフに熱狂するニックスファンを挑発するような態度を取り続け、NBAのVillanとしての地位も確率しつつあるのもヤングの新しい姿である。

 

ヤングの脇にはボグダン・ボグダノヴィッチ、ケヴィン・ハーダー、ジョン・コリンズといったオフェンス力に長けた選手から、ディアンドレ・ハンター、クリント・カペラといった強力なディフェンダーまで、バランスの取れたホークスは善戦すると思うし、もしエンビードがプレイできなかった場合、ホークスが勝ち抜いても驚かない。但し、ベン・シモンズ、マティス・サイボルというリーグトップのウィングディフェンダー2人がいることで、ヤングがニックス戦のように好きにプレイはできないだろうし、総合力で上回るシクサーズがカンファレンスファイナルに進出すると思う。

予想:シクサーズが4勝2敗で勝利

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(2) 第2シード:ブルックリン・ネッツ vs. 第3シード:ミルウォーキー・バックス

カンファレンスセミファイナルで誰もが興奮しているシリーズがこのネッツ対バックスである。丁度先日の記事で、バックスの今年の可能性についてまとめたが、このシリーズのプレビューも入れているので、是非読んで頂きたい。

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<アップデート>

現時点で第1戦が終わったが、ジェームズ・ハーデンがハムストリングの怪我を再発してしまった。ハムストリングはすぐに治るものではなく、おそらくこのシリーズでプレーすることはないだろう。だが、第1戦はバックスのひどいオフェンスとコーチングによってネッツが問題なく勝利している。バックスはスリーが入らないにも関わらずオフェンスのフローに関係なくアウトサイドショットを打ちまくり、コーチBudのローテーションも意味が分からないものであった。ペイントディフェンスが弱いネッツに対して、もっとイヤニスとブルック・ロペスを活用しなければならないのに、アウトサイドから勝負し続けるオフェンスは滑稽にも見えた。(スリーポイントが30分の6というひどさである) 毎年のようにプレイオフでのアジャストメントができないことを批判されているバックスだが、次の試合でゲームプランを変えない限り、ネッツが勝利してしまう可能性が高い。

 

然し、今年のバックスは何かを持っているのではないかと感じてしまう自分もいる。ハーデン不在は彼らにとって追い風であり、3ポイントがもう少し高い確率で入るようになると考えると、バックスが残りで巻き返すのではないかと予想する。ネッツの爆発力を考えたら、第6戦までに仕留める必要はあるだろうが、今年はバックスのシーズンという期待も込めてバックス勝利で予想したい。

予想:バックスが4勝2敗で勝利

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<ウエスト>

(1) 第1シード:ユタ・ジャズ vs. 第4シード:ロサンゼルス・クリッパーズ

ファーストラウンドの第1戦で、第8シードのグリズリーズにホームコートを取られ、その後も数試合は接戦となりひやひやさせたジャズだが、第5戦でぼろ勝ちし第1シードらしいチーム力を発揮した。エースのドノバン・ミッチエルはプレイオフ経験も積み、頼れる勝負強さも発揮しており、脇を固める選手のレベルも高い。然し、NBAのプレイオフはよっぽどの強豪でない限り、スーパースターが支配する場である。2004年のピストンズや2013-14年のスパーズも絶対的エースが存在しないチームだったが、ジャズはそれより少しレベルが落ちる気がする。ディフェンスアンカーのゴルベアはいつもプレイオフでガードのマッチアップハンティングに合うし、マイク・コンリーやボグダノヴィッチも素晴らしい選手だが、往年のトニー・パーカーやマヌ・ジノビリのような経験値が足りない。なのでジャスはこのラウンドでアップセットされるのではないかと感じている。

 

マブス相手に最後勝負強さを見せたクリッパーズクワイ・レナードが圧倒的な安定感を見せ (32得点、FG60%以上という驚愕の数字!)、2年前のラプターズで優勝した時を彷彿させるレベルまでになってきた。オフェンスは勿論のこと、マブス戦の運命の第6、7戦ではルーカのガードもし、最近陰りが見えていた希代のディフェンス力も復活してきた感じである。ジャズ同様に脇を固める選手の信頼感が正直低いのが懸念だし、マブス相手に追い込まれているようじゃ、ジャズのボールムーブメントを活かしたオフェンスを本当に止められるのではないかとも思ってしまう。ただ、逆境に弱かったこのチームが、最悪の事態を免れて這い上がったことは追い風になる。

 

クワイとポール・ジョージががゴルベアをアウトサイドに連れ出し、ピックアンドロールでミッドレンジからシュートを決め続けることができ、スイッチができるディフェンスマッチアップを擁するクリッパーズがこのままカンファレンスファイナルに進出するのではないかと予想する。

予想:クリッパーズが4勝2敗で勝利

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(2) 第2シード:フェニックス・サンズ vs. 第3シード:デンバー・ナゲッツ

昨年王者のレイカーズを破り、波に乗っているサンズと、今年のMVP二コラ・ヨキッチを擁するナゲッツのマッチアップは面白いものになると思う。サンズはクリス・ポールの肩の怪我が心配ではあるが、少しずつよくなってきているようで、ドリブルすらまともにできなかった状態から3ポイントを打てるまで回復してきた。エースのデビン・ブッカーも第5、6戦で大活躍し、特に第6戦の47得点は圧巻で、第1Qから爆発し、巻き返しを狙うレイカーズの息の根を止めるパフォーマンスであった。また、3年目のセンター、ディアンドレ・エイトンもアンソニーデイビス相手に予想外の大活躍し、ハッスルプレーとディフェンスでドラフト1位の実力を見せつけてくれた。

 

そして、エイトンの活躍がこのナゲッツとのシリーズでもカギを握る。ヨキッチはファーストラウンドでブレイザーズをきりきり舞いにし、ポストアップとシュート力でブレイザーズのセンター、ヌルキッチをファールトラブルに追いこんだり、ダブルチームしたら絶妙なパスでシューターにキックアウトと彼のオフェンスを止めようがない。サンズはヨキッチのサイズに対抗できるビッグマンがエイトンしかおらず、彼がファールトラブルに巻き込まれたらサンズは大問題である。一方エイトンがファールを逃れ、ヨキッチを少しでもスローダウンさせることができたら、ブリジッズ、クラウダ―、ポールなど優れたウィングディフェンダーが揃うサンズの勝機がある。ジャマール・マレーがいないナゲッツで爆発力があるのはマイケル・ポーターJrだけであり、その他の選手を抑え込めればサンズが有利である。

 

対して、ガードが手薄状態で、リラードの大活躍を許したナゲッツは、ブッカー、ポールのガードコンボには手を焼くだろう。一人でチームレベルを底上げできる希有な存在のヨキッチがいるので、最後までもつれるシリーズになる気がしているが、選手層の厚いサンズが接戦を勝利するのではないか。

予想:サンズが4勝3敗で勝利

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