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ウエストブルックのトレードは失敗するか

どうも。オリンピックが盛り上がりを見せており、様々な競技で話題を呼んでいるが、バスケも例外ではなく、各国でNBA選手もたくさん参加している。なんといっても注目はアメリカ代表なわけだが、初戦でフランスに敗れ、全体的にまとまりなく、1 on1を繰り返すか、シュートをためらいすぎてパスのしすぎてターンオーバーになるなどちぐはぐな感じが強いのは否めない。逆にゴルベアやフォニエがオフェンスで大活躍していた感じがやっぱりNBAと国際試合の違いだなと思ったりする。ロスターの観点から見ると、まともなビッグマンがバム・アデバヨしかいないような状況がまず問題だし、ガードは一杯いるが、試合を落ち着かせてプレイメイクに徹する選手がいない為、流れが悪くなったときに歯止めがきかない。ビッグマンと司令塔は国際大会ではまだまだ必要な選手達であり、そのコマが揃ってない印象である。また、NBAではオフェンスが優遇され、ここ数年のファウルハンティングの横行がすごいが、そういった優遇が国際ルールだとされないのものアメリカが苦しんでいる原因かもしれない。

 

一方、ドンチッチ擁するスロベニアは日本と戦って結構バズったりしていたが、ルーカの活躍だけでなく、周りを固める選手もシュート力が高く、結構順調な様子で、あわよくば優勝してもおかしくないんじゃないかとさえ思える。とはいえ、アメリカが優勝候補であることに変わらないので、決勝戦まで目が離せなさそうである。

 

NBAに話を戻すと、先日は2021年度のドラフトが行われ、ケイド・カニングハムや、ジェイレン・グリーン、エバン・モーブリーといったTop3の選手がそれぞれオールスターレベルの選手になると期待されている。今年のドラフトクラスは総合的なレベルが高いと言われている中、彼らがどういったポテンシャルを見せてくれるか見ものである。

 

そんなドラフト当日のビッグニュースはラッセル・ウエストブルックのレイカーズへのトレードである。ウィザーズではウエストブルックではなく、生え抜きスターのブラッドリー・ビールのトレードの噂がずっとささやかれていたが、逆にビールはウィザーズに満足していると報道され、1年だけ在籍したウエストブルックが移籍することになった。

 

これでウエストブルックは4年間のうちにサンダー→ロケッツ→ウィザーズ→レイカーズと1年毎にチームが変わっており、彼にとっても正念場となる。サンダー時代はデゥラントとポール・ジョージ、ロケッツ移籍後はハーデン、ウィザーズではビールと常にトップスターとプレーしてきたのは彼の運の良さかもしれないが、デゥラントと一緒にいた時期を除いて、毎年プレイオフの初期で敗退している。(プレイオフに出るだけでも評価されるべきなのかもしれないが) しかも、サンダーから移籍を求めて旧友のハーデンと一緒になったと思ったら1年でお互いのプレーにフラストレーションを溜め、ビールとも仲は良かったようだが、結局移籍の要求をしたということで、トレードのサイクルが繰り返されており、ここで成果を残さなければ彼の名声に大きく影響がでるのではともう。逆に言えば彼の超高額な契約金を考えた際に、それだけ受け入れ先があるということ自体、各スター選手のRussへのリスペクトが伺えるのではあるが。

 

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とはいえ、今回のレイカーズへの移籍がフィットするかどうかは正直微妙である。レイカーズはこのトレードでクーズマ、ハレル、KCP、ドラフトピックをトレードしたわけだが、貴重な3ポイントシューターであったKCPが抜けたことで、レイカーズはとにかくシュート力が弱くなった。エストブルックの一番の弱点はアウトサイドショットであり、一方レブロンのチームメイトに最も必要なのもシュート力であることで摩擦が生まれる気がする。現在のレイカーズロスターを見ると一番アウトサイドが上手いのはマーク・ガソル、もしくはデイビスかもしれないという状況であり、現代NBAでこのシュート力の無さは結構重大である。ロケッツ時代に数か月ウエストブルックがセンターのようにプレーして機能していた時期もあったが、それは彼以外がハーデン含めて高いシュート力を持っていたことも大きい。スペーシング主流の現在NBAにおいて、メインプレイヤー3人がシューターでないというのはギャンブルであると考えている。

 

次に彼のメンタルとプレイスタイルがレブロンと亀裂を生むのではという気もする。ウエストブルックはボールを保持する時間が長い選手であり、それはレブロンも同様である。レブロンもRussもボールを保持しない時にカットやスクリーンをかける選手でもないので、どっちかがボールを持っていたらどっちかは動かない。正攻法で考えたらバスケIQが突出しているレブロンが色んな判断をすべきなのだが、ウエストブルックはそんなことはお構いなしに、自分がベストプレーヤーだと常に思っており、試合終盤に30%しか決まらない3ポイントをショットクロック20秒残して打ってきたりする。そして、チームメイトが得点できないと自分でやらなきゃという気持ちが一層強くなるタイプで、ディフェンダーがペイントに固まっている中突進していったりする。これはある意味彼のメンタルタフネスと強みになることもあるのだが、失敗することの方が往々にして多い。

 

また、ディフェンスでも同様に無謀にスティールを狙って自分のディフェンダーをワイドオープンにすることもしばしばあり、オフェンス、ディフェンスともに彼のDecision Makingには常に疑問が残る。(Russは常に100%で全力を尽くす希有な選手と各メディアで言われるが、ディフェンスは決していつも全力ではないということをここで言っておきたい) こういったギャンブル性が高く、スマートとは言えないプレイスタイルはレブロンが最も嫌うタイプであり、果たしてどこまでレブロンが辛抱強くできるかが成功のカギの1つとなりそうである。一昨年に同じくシュート力のないロンドとプレーして成功したじゃないかという意見もあったりするが、ロンドとウエストブルックは全く違うタイプの選手であり、頭脳明快プレーヤーの筆頭であるロンドはその時その時の状況を分析できるパスファーストなプレイスタイルなのに対して、ウエストブルックはシュートファーストであり、上述の通り判断力に欠けることが多いので、この二人の比較は適切ではない。

 

ボール保持率とクラッチな場面での判断力でレブロンと馬が合わなくなりそうなだけでなく、エストブルック自体現在Top25の選手とは言い難い。成績だけ見たらトリプルダブルを4年間のうち3年間出しているのに何を言うんだと思われるかもしれないが、アシストやリバウンドをチームメイトを差し置いてスタッツを狙っているのは見ていて明らかだし、オフェンスの面でもフリスロー、3ポイント、ミッドレンジどれもどんどんと確率が落ちている。そしてドライブしてのリムでのフィニッシュ力も下がってしまっており、32歳となっての衰えは確実に見られている。その上、頑固d今まで1つのプレイスタイルで猛進してきたが彼が、この時点で自分のプレイスタイルを変えることもなかなか考えづらい。もちろんレブロンという絶対的な存在がいることで彼のメンタリティが変わることはあり得るかもしれないが、その可能性は低いと思った方がいい。

 

色々とウエストブルックの批判が重なってしまったが、彼が未だにいい選手である事には変わらない。(ベストプレーヤーの一人ではないだけで) 自分への絶対的な自信、頑固さ、ギャンブル性が彼をここまで押し上げた要素ではあり、それが強みとなる場合もある。特にレギュラーシーズンにおいて、どんな試合でも自分の感情を全面に押し出してプレーするウエストブルックがチームを鼓舞して勝利に導く回数は結構多いだろう。ただ問題なのはプレイオフに入ってからであり、ここ数年の成績が示すように、彼はベストプレイオフパフォーマーであるとは言えない。ディフェンスがよりタイトになり、スローペースとなるプレイオフでは彼の猪突猛進、シュートファーストなスタイルが有効でなくなってくることが多いからである。

 

今回のトレードでレイカーズはネームバリューで言えばBig3なる選手を集めたが、37歳になるレブロン、全盛期を過ぎたウエストブルック、アンソニーデイビスのトリオは、2004年のシャック・コービー・ペイトン・マローンや2013年のコービー・ガソル・ドワイト・ナッシュを彷彿とさせるネガティブな意味でのスーパーチームになるのではないかという懸念が拭いきれない。但し勝とうが負けようがレイカーズの注目度が更に高まったことは言うまでもなく、こんなネガティブな予想を裏切るような適応と活躍をRussが見せてくれるのが非常に見物である。