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フェニックス・サンズのプレイオフ進出とクリス・ポールのレガシー

どうも。NBAシーズンも佳境に入り、プレイオフシードを争うトーナメントに入る10位までのチームは両カンファレンスで大体決まってきた感じではあるが、プレイオフ進出圏内の中でのシード順は最後まで分からなさそうである。特にウエストは、昨年王者のレイカーズが、デイビズとレブロンが長期離脱しことで勝率を落とし第5シードから第7シードのどれかになりそうである (5/1現在)。両選手とも最近復帰してプレイオフには本調子となりそうであり、折角頑張った上位シードのチームはたまったもんじゃない。

 

例年のことだが、各チームがマッチアップの優位性を考慮して大体レギュラーシーズンの残り5試合ぐらいは、故意に負けてシードを下げたりするといった駆け引きがされる。今年はレイカーズの出来次第で、トップチームがどういう策にでるか見ものである。

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折角の上位シードがレイカーズにかき消されるのか

 

エストのトップチームとして、今年の序盤はユタ・ジャズが爆走していたのだが、ここにきてエースのドノバン・ミッチェルの怪我もあり若干ブレーキがかかっている。また、彼らのプレイスタイルはボールムーブメントと3ポイントという2014年頃のスパーズを彷彿とさせるが、最近まで異常な精度で決まっていた3ポイントがプレイオフでも通用するかは未だに疑問である。(3ポイント中心でレギュラーシーズンに強いここ最近のバックスやロケッツを彷彿とさせるところがある) 

 

勢いに陰りが見えてきたジャズをよそにここにきて抜群の安定感をみせているのがフェニックス・サンズであり、とうとう第1シードを仕留めたのである (5/1現在)。ここのトップ争いはレギュラーシーズンの最後まで激しい争いとなるだろうが、まずここ最近ずっと低迷していたサンズがプレイオフ進出を決めただけでなく、トップシードになるかもということがすごい。なんといってもサンズのプレイオフ進出は10年ぶりである。そこで今回は昨年プレイオフにすら出れなかったチームの功労者、サンズのポテンシャルについて考えてみたい。

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<クリス・ポールの加入>

サンズ復活の最大の功労者は紛れもなく今年で36歳になるクリス・ポールである。2000年代では最高峰のポイントガードであり、PointGodの異名を取るポールはどこに行ってもそのチームのレベルの底上げをする。ポールは最初の2シーズンを除いた13シーズン中、12回プレイオフに進出をしており、とにかくチームを強くすることに長けている。全盛期のクリッパーズ時代はブレイク・グリフィンなどスター選手を擁して常に優勝候補になっていたし、ロケッツに移籍してジェームズ・ハーデンとタッグを組んだ初年度はウォーリアーズを後一歩まで追い込んだ。また、昨年はリーグ最下位レベルの下馬評だったオクラホマシティ・サンダーを第5シードに引っ張るという驚きの活躍を見せたのは、ポールのいるチームは弱小にならないということを顕著に表している。

 

・衰えからの復活

彼の凄い所は、ロケッツの2年目である2018-2019シーズンにハーデンとの不仲や彼自身の成績の下降から衰えを指摘され、このまま選手として違うステージに行くのかと思われたところで、昨シーズンまた一流選手に戻ったことである。その理由は食生活の改善が大きかったと本人が言っており、それにより体が絞れて未だに全盛期に近い動きができているのである。若返りをはかるサンダーからトレードされる形でサンズに今年移籍をしたのだが、勢いに陰りは見えず、ここにきてMVP候補になるぐらいの活躍をしている。単純な数字だけ見ると他のMVP候補と比べて見劣りするが、彼の勝利への貢献度は計り知れない。これまでの常識だと、スピードとクイックネスがキーとなるポイントガードは35歳以降全盛期レベルを保つことが難しいと考えられていたが、ポールはスモールガードの中で初めてこの常識を破ったかもしれない。

 

・ポールの偉大さ

身長180センチそこそこでNBA選手としては非常に小柄な部類に入るポールが未だにトップクラスでいられる理由として、1) プレーを全て読み解くIQの高さ 2) 相手を引き立てようとするアンセルフィッシュさ 3) ゲームのコントロール力 4) 天下無敵のミッドレンジジャンパー 5) 病的ともいえる競争心といったことが挙げられるだろう。

 

1)のIQの高さについては、昔のキッドやナッシュと同様に司令塔という言葉がまさにふさわしい。同時にそのIQをチームメイトのセットアップにつなげ、自分の成績を気にしないアンセルフィッシュさがある。例えばコービーもバスケIQの高さは歴代最高級だったが、彼は自分が得点をすることが最も効果的という信念があったが、ポールは自分が得点を狙うより相手を引き立てることを優先する。どちらが優れているという訳ではないが、往々にして後者の方がチーム成績は安定しやすい。(キッド、ナッシュ、レブロン、バード、マジックが最たる例) 

更にポールはゲームのコントロール力が抜群であり、スローペースに持ち込んでIQを駆使してディフェンスの弱点を突くのを得意としている。昨年までアップテンポスタイルだったサンズが、リーグでもBottom5に入るぺーズまで落ちたのはサンズがポール色に染まったからである。

 

ポールはアシスト王に何度も輝いているが、得点力も高く、特にミッドレンジジャンパーは彼の代名詞ともいえる。3ポイントの確率も十分高いが、彼のミッドレンジからの正確性は群を抜いており、真面目に外す気がしない。必勝パターンはスクリーンを使ってコートの右側にいきそこからフェイダウェイを放つことであり、今年もこれで何度もクラッチバスケットを生み出してきた。そして彼はとにかく負けず嫌いであり、その勝利への拘りは病的とも言われている。(過去の偉大な選手も皆異常なほどの負けず嫌いではあるが) 万年低迷していたサンズは強烈なリーダーがいなかったところで、その根性をポールが叩き直したといっても過言ではないだろう。

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・ポールの弱点

希代のポイントガードであるポールだが、弱点も結構ある。1) プレイオフでのメルトダウン 2) 大事なところでケガする 3) チームと衝突しがちといった点はポールのキャリアの汚点となっている。

 

ポールはPoint Godと言われながら、未だにNBAファイナルを経験したことがない。毎年優勝候補と言われたクリッパーズで一度もカンファレンスファイナルに進出することができず、2014-2015シーズンの対サンダーとの第5戦でのミスの連続や、2015-2016シーズンには3勝2敗として臨んだゲーム6では大量リードしながら第4Qにロケッツに大逆転されたり、その他のシーズンではファーストラウンドで敗退したりと期待を裏切り続けてしまった。

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更にロケッツに移籍後の1年目では、リーグ最高の勝率を残し、ポールは人生初のカンファレンスファイナルに進出し、ロケッツはウォーリアーズを3勝2敗と追い込んだ。然し、第5戦の終盤に彼はハムストリングを故障し残り2試合を欠場せざる負えなくなり、ロケッツは敗れ去った。残り後一歩のところでファイナル進出を逃したのは惜しいとしか言えない。クリッパーズ時代もケガでプレイオフ欠場することがあり、プレイオフ終盤まで体が持たないという事がポールには多々ある。

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また、彼の強い競争心とコントロールフリークな性格が仇になる事も多い。バスケのプレーが全て見えてしまうポールにとって、それが分からないチームメイトは苛立ちの対象であり、彼はその選手の間違いを否応なしに指摘し、時には罵倒てしまう。そこら辺レブロンとかは立ち振る舞いが上手いのだが、ポールは常にガミガミ相手を怒鳴りがちな為、最終的にチームメイトから嫌われやすくなってしまうのである。クリッパーズ時代はブレイク・グリフィンやディアンドレ・ジョーダン、コーチのドック・リバースとも馬が合わなくなり、ロケッツでハーデンとは1年で仲が悪くなってしまった。

 

然し、年を重ね彼も感情のコントロールができるようになってきたのか、昨年若手だらけだったサンダーではリーダーとして悪い噂は全く出ず、今年もサンズで上手くチームにメッシュしている。彼自身が大人になったこともあるだろうし、ポールの競争心むき出しかつ小姑のようなスタイルが、同じく競争心の強いデビン・ブッカーを中心したサンズの選手と上手く合っているのかもしれない。

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<新生サンズの可能性>

ポールの加入によって一気に強豪となったサンズは非常にバランスの取れたチームである。今年6年目サンズ一筋のSGブッカーは、入団当初からスコアラーとしてリーグ内で評価され、ここ2シーズンはプレイメイクの向上もしていたが、弱小チームをプレイオフに導くことはできなかった。然し、ポールの加入でスコアリングに集中できるようになり、初のプレイオフに向けてその勝負強さを発揮してくれると期待したい。

 

今年3年目の元ドラフト1位のCディアンドレ・エイトンは未だに精神面での頼りなさや、フックショット以外のオフェンスのバリエーションがないことが気がかりではあるが、ルーキー時課題だったディフェンスを向上させておりリムプロテクターとして頑張っている。

 

同じく3年目のウィングプレーヤーであるミカル・ブリッジズも良質な選手である。3ポイントは40%を超え、カットなどオフボールの動きも優れている上、ディンフェンダーとしても高いレベルを持つ彼はロールプレイヤーとしてはこれ以上にない活躍をしている。

 

5人目の選手としては、ベテランでタフネスという言葉がふさわしいジェイ・クラウダ―や2年目のシューターのキャム・ジョンソンが候補となる。ジョンソンはサンズが一巡目で指名した際は笑いのネタになるほど評価が低かったが、シュート力と想像以上に上手いディフェンスでドラフト前の懐疑的な意見を吹き飛ばしている。また、プレイオフ経験が豊富なクラウダ―はポールとともにベテランリーダーシップを発揮している。

 

その他、器用でパスの上手いフォワードのダリオ・サレッジやウィングディフェンダーのトリー・クレイグ、一時期Gリーグプレーヤーとなっていた状態から這い上がったキャメロン・ペインなど質の高いベンチ陣が揃っている。

 

サンズの強みは、ロスターに弱点が少ないかつ、色んなタイプの相手に対抗できるフレキシビリティがあることである。一方ポールとクラウダ―以外、プレイオフ経験を持つ選手は少なく、エースのブッカーが初プレイオフということも気がかりである。更にポールのプレイオフでの活躍は上記の通り絶対的な信頼をおけるとは言えない。その為サンズが例えNo.1シードになっても優勝候補の筆頭にはならないだろう。

 

エストの優勝候補は昨年王者のレイカーズ→タレント豊富なクリッパーズの順であることに変わりはなく、チームベストのタレントではサンズは劣るが、チームの総合力ではこの2チームに負けてはいないと思っている。何よりNBAファンとして、史上屈指のポイントガードであるクリス・ポールの初ファイナル進出を望まずにはいられず、今年こそはと期待したいものである。