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今年のミルウォーキー・バックスは本物か <NBAプレイオフレビュー>

どうもプレイオフが開幕して、毎日が忙しい。

 

まず、ウエストから見ていくと、ジャズ対グリズリーズは初戦にグリズリーズが取り、更に第2戦はグリズリーズの2年目のジャ・モラントが47得点という21歳以下の選手でプレイオフにおける最多得点を記録したりと第1シード対8シードのマッチアップとしてはとっても面白い。(2試合目はジャズが勝ったが)

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レイカーズ対サンズは初戦にサンズが勝ち、2戦目も接戦であったが、クリス・ポールの怪我が痛すぎる。初戦のファーストハーフでポールが肩をケガをして本調子の30%ぐらいに見える。肩を上がることがほとんどできなそうで、天下の宝刀ミッドレンジジャンパーもシュートできない状態となっている。本来であれば最後までもつれるはずだったシリーズが割とすぐに終わりそうである。。。

 

ナゲッツブレイザーズは、お互いのいい所を出し合っている感じだが、ナゲッツのヨキッチに対してブレイザーズのディフェンスの弱さが浮き彫りになっている。Dame Dollarは大活躍しているが、ブレイザーズのディフェンスがお粗末すぎて最終的には力負けしそうな気がしている。

 

エストで最も面白いシリーズがマーベリックスクリッパーズであろう。最初の2試合でルーカがクリッパーズがディフェンスをきりきり舞いにして、クリッパーズのホームでまさかの2連勝し、クリッパーズが解体してしまうかというぐらい追い込んだ。が、第3戦は一転勝利しており、マブスはセカンドオプションのはずのポージンガスがオフェンス、ディンフェンスともにダメダメなのが懸念要素になりそうである。このシリーズも接戦になりそうである。

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イーストで見た場合、シクサーズ対ウィザーズはおそらくシクサーズが問題なく勝ち進むであろう。ネッツ対セルティックスも力の差は明らかだが、第3戦でジェイソン・テイタムが50得点というスーパースターな活躍して1勝したが、これがセルティックスのできる限界であろう。

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イーストで一番面白いのはニックス対ホークスであろう。初戦からマディソンスクエアガーデンが大興奮でニックスファンの凄さを見せつけてくれたが、ホークスのエースであるTrae YoungがVillanになるという予想していなかった展開で大いに盛り上げてくれいる。ヤングは実際大活躍しており、ニックスにとって最大の敵となっている。加えてニックスのエース、ジュリアス・ランドルが絶不調すぎるのがきつい。

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そしてプレイオフ開幕前に個人的に一番気になっていたマッチアップがバックス対ヒートだった。昨年のカンファレンスファイナルでヒートが4勝1敗とバックスを圧倒し、バックスはプレイオフに弱いという印象を決定的にしたわけで、今年の再戦も接戦になると考えていた。然し、蓋をあけてみると初戦はオーバータイムまでいく接戦となったがそれ以降はバックスが大差をつけて3連勝し、昨年の屈辱を果たした。昨年と比較して、バックスも強くなったし、ヒートも弱くなったというのが単純な理由であろう。

 

ということで、今回は昨年から成長を遂げ、セカンドラウンドでの躍進も期待されるミルウォーキー・バックスに焦点を当て、今年こそチャンピオンシップを狙えるのか、昨年との違いなど深堀していきたい。

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1. ドリュー・ホリデーの加入とBig3の形成

今年のバックスを語る上で欠かせないのが、オフシーズンにトレードで移籍してきたドリュー・ホリデーの存在である。ホリデーは長い間最も過小評価されている選手の一人と言われてきたが、Advanced Analytics好きの人たちからは常に高評価されていた。その大きな理由の1つが、リーグ屈指のディフェンス力である。ホリデーは自分と同じサイズのトップガード選手をシャットダウンできるだけでなく、デゥラントやバトラーなど身長で負けている選手も苦しめることができる技術を持っている。スピードとパワー、ハンドコーディネーションを備えたホリデーのディフェンスは芸術的で、少なくとも1 on 1ディフェンスではリーグトップ3に入ると思う。彼がペリカンズ時代のプレイオフブレイザーズのリラードを完全にシャットダウンしたのは印象的なシリーズである。

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また、ホリデーはディフェンスだけでなく、軽く20点を取れるオフェンス力、セットアップ能力にも長けている。特にこれまで1 on 1で頼れるショットクリエイターがクリス・ミドルトンしかいなかったバックスにとって、ドライブも備えるホリデーの存在はバックスのオフェンスの幅を広げてくれる

 

そしてホリデー、ミドルトン、イヤニスというBig3ができたのも大きい。イヤニスはリムラン、ファストブレイクなどで得点を量産できるが、試合終盤に自分で1 on 1から相手をかわしてジャンパーというオフェンスの大黒柱に必要なスキルがない。イヤニスはそういう意味でシャックに近い。それをこれまでミドルトンがNo.2で補っていたわけだが、正直No.2としては、コービーやウェイドのようなレベルではないので物足りなかった。ミドルトンは非常にefficientで過小評価されてはいるが、シュート中心なのでドライブ力が弱い。そこにホリデーがいることでオフェンスのバリエーションが増えたのである。更に3人とも優秀なディフェンダー(うち2人はリーグトップレベル) ということで、昔のセルティックスやヒートのBig3と比べたら少しネームバリューに劣るが、優勝を狙うには十分な3人が揃っていると言えるだろう。

 

何より、ホリデーを獲得する代わりにエリック・ブレッドソーを放出できたのが一番大きいかもしれない。ブレッドソーは過去2シーズンレギュラーシーズンでそこそこの活躍をしたが、ポストシーズンではシュート力のなさと、判断力の弱さで、まさにDisasterとなっており、一昨年のラプターズ、昨年のヒートともにシリーズ途中から彼をディフェンスしなくなるレベルであった。その後釜として、ディフェンス力、シュート力など全てにおいて勝っているホリデーが入ったのはGame Changerであった。

 

2. ベンチプレイヤーの充実

ホリデーの加入以外にも、バックスは昨年からロスターが結構変わっている。今シーズン移籍した、ブレン・フォーブス、PJ・タッカー、ボビー・ポータスはそれぞれ重要なピースとなっている。フォーブスはそのシュート力でファーストラウンドで大活躍し、タッカーはヒューストン時代から有名なディフェンス力、ポータスは向上した3ポイントと、タフネスをチームに与えている。

 

また昨年は全盛期を過ぎたベテランに頼らざる得ない状況だったのが、上記のフォーブスやポータスなど若い選手になったのも大きい。昨シーズンは、ウェズリー・マシュー、ジョージ・ヒル、カイル・コーバーなど、いつ引退してもおかしくない選手が必要以上のプレイタイムを記録しており、ベンチ陣の弱さを露呈していた。それと比べて今年はベンチからプレーするメンバーは減った気がするが、その分レベルの底上げができており、Big3をうまく支えられている。

 

3. コーチの戦術の変更

チームの構成だけでなく、ヘッドコーチのマイク・ブーデンホルザーの戦略が変わってきたのも大きい。彼はホークスのコーチ時代から、チームのレベルアップという点ではリーグでもトップクラスだった。2015年にスーパースターがいないホークスをリーグ1位の勝率に導いた手腕はバックスでも発揮され、過去2シーズン連続バックスをリーグ1位にさせた。然し、ブーデンホルザーの弱点として適応力が幾度となく指摘されていた。彼はシーズン前から徹底した効率重視のシステムを構築し、そのシステムでレギュラーシーズンを圧倒することができるのだが、同じチームと何度もプレーするプレイオフではそのシステムが暴かれ、そこの弱点を突かれる。それに対してブーデンホルザーは今まで固くなに自分の信念を貫く傾向があり、アジャストをするにしてもいつも手遅れになっていた。

 

然し、過去の失敗から今年はレギュラーシーズンを実験する期間に変更し、チームの適応力を高めている。例えばオフェンスでは、イヤニスのドライブにシューターを4人揃えるといった単調なオフェンスだったのが、ピックアンドロールを増やしたり、イヤニスをポストに置いたりといったことをしており、ディフェンスではこれまでマッチアップのスイッチを拒んて来ていたのよりスイッチするようにしている。レギュラーシーズンで毎試合勝つことよりも様々なスキームを試すことにフォーカスした今シーズンはイースト3位の勝率となったが、少なくともヒート相手にはこの実験が功を奏していた。

 

4. イヤニスの成長

バックスのリーグトップの勝率ともにスーパースターのイヤニスは2年連続MVPを獲得した。然しバックスがそこでファイナルまで進出できなかったのには、彼にも責任がある。圧倒的な身体能力でディフェンダー相手に突進していくスタイルは、チームディフェンスが優れたチームには通用しなくなり、ジャンプショットが苦手な彼は止められてしまっていた。それだけでなく、シュート苦手、フリースローが苦手なこともあってか、試合の終盤に自らが得点を狙うことを怖がるようにも見えた。

 

今年も引き続きジャンプショットが得意なわけではないのだが、少しずつ上手くなってきている。特にポストアップからのターンアラウンドは安定してきており、何よりクラッチショットを自分から打つようになってきているマインドセットの変化が見られるのが進歩だと思う。また、ヘッドコーチと同じく、自らも適応力を鍛えており、自分が得意なこと以外にも積極的にチャレンジしている。個人的な感情も含むが、今年のイヤニスは一味違う活躍をしてくれる気がする。

 

<過酷なイーストプレイオフを勝ち抜けるか>

イーストのプレイオフの道はとっても厳しい。昨年のイースト王者のヒートをスイープしたといえ、次のカンファレンスセミファイナルでマッチアップするのは、99%の確率でブルックリン・ネッツである。ネッツはファイナル進出の最有力候補であり、デゥラント、ハーデン、カイリーという超強力Big3の爆発力は半端ない。加えて復活したブレイク・グリフィンやシューターのジョー・ハリスがおり、オフェンスが圧倒的なネッツはバックスにとっては最大の難関となる。多くの識者がこのシリーズはもつれると予想しているが、実際にレギュラーシーズンで3試合戦い、いずれも接戦であった。(ネッツはいずれの試合もBig3が揃ってはなかったのだが)

 

ネッツのオフェンスを止めることは不可能なのだが、バックスはリーグの中で最もマッチアップが可能なロスターをそろえてはいる。おそらく、ホリデーがカイリーにマッチアップし、そこをシャットダウンし、イヤニスやPJ・タッカーがKDと対峙し、少しはスローダウンさせられる気がする。となるとハーデンは好き勝手できるかもしれないが、3人のうち2人をスローダウンさせるだけで、かなりの効果があると思う。ハーデンをガードするであろうだった、ダンテ・ディヴィンチェンゾがケガをして残りのプレイオフ絶望となってしまったのは痛いが、それでも十分なディフェンス力は備えている。

 

一方ディフェンスがトップクラスではなく、リププロテクションが弱いネッツに対して、イヤニスは3試合とも30点以上稼いでいる。ハーデンとアービングは平均以下のディフェンダーであることも考えると、バックスがつけ入るスキは十分にあると思う。もちろんオフェンス力が圧倒的なネッツが有利なことには変わらず、オフェンス合戦になったらバックスは厳しいが、少しでもディフェンスで上回ることができれば、バックスが勝ち抜いても驚かない。

 

もし、ネッツとのバトルを制した場合に待っているのはシクサーズになるだろうが、シクサーズとのマッチアップも悪くない。シクサーズの大エースであるエンビードには、ブルック・ロペスとイヤニスがつけるし、それ以外で超強力なスコアラーがいないシクサーズ相手にバックスのディフェンスは機能するだろう。然し、シクサーズがネッツと違うのは、シクサーズにはベン・シモンズやエンビードなどトップクラスのディフェンダーがおり、バックスのオフェンスを抑え込むこともできる点である。ということで、このマッチアップはディフェンス合戦になりそうだが、ネッツに勝ったという勢いでバックスがそのままファイナルいく可能性が高いのではないかと予想する。

 

個人的にイヤニスのファンかつ、生え抜きのスターがミルウォーキーというスモールマーケットで優勝することを望んでしまうということもあり、バックスびいきの記事になってしまったが、真面目に彼らはチャンスがあると思う。チャンピオンシップを狙える期間は長いようで短い。今年3度目の正直となるか、非常に注目である。

NBAプレイオフ ファーストラウンド 全マッチアッププレビュー!!

どうも。NBAプレイイントーナメントが各カンファレンスで3試合行われた。合計6試合のうちイーストはセルティックスのジェイソン・テイタムの50点試合を除きあまり面白い内容ではなかったが、ウエストは非常に面白かった。

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エストはそもそもイーストに比べてレベルが高いことももちろんだが、その中でも、レイカーズ vs. ウォーリアーズというスーパースターが揃ったマッチアップだったこともあるが、昨年王者レイカーズがハーフで10点差以上つけられ、最後の最後まで大接戦となりとても面白かった。(レブロンのファールを受けた後の激しい演技でいつも試合が伸びるのは萎えるが)

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そして8位のスポットをかけたウォリアーズ対グリズリーズも終始グリズリーズ優勢ではあったが、オーバータイムまで行き、最後まで見逃せなかった。ここでは2年目のジャ・モラントが大活躍し、着実にスーパースターの階段を駆け上がっている。ウォーリアーズも勝つチャンスが十分あったが、カリー以外の選手が終盤で頼りにならないのが痛かった。(やっぱりアンドリュー・ウィギンズはプレッシャーに弱い、、、)  

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レイカーズ戦もグリズリーズ戦もウォーリアーズはとにかくターンオーバーが多いのが痛い。これは昔からだったが、戦力が弱まった今でもターンオーバーだらけのはいただけない。カリーの今シーズンはとにかく圧倒的で、得点王も取り改めて彼の素晴らしさを見せつけてくれたが、ウォーリアーズの今後は課題が山積みである。

<カリーのシーズンとウォーリアーズの問題点はこちらの記事から>

atsukobe.hatenablog.com

 

ということで、プレイオフのファーストラウドが早速始めるということで、今回はイーストとウエストの全8マッチアップについてクイックにプレビューしていきたい!

 

<イースト>

(1) 第1シード:フィラデルフィア・セブンティシクサーズ vs. 第8シード:ワシントン・ウィザーズ

八村の初プレイオフということで、日本でも注目を集めそうなこのカード。但し、実力の差は明らかである。ディフェンスが弱くオフェンス一辺倒なウィザーズに対して、シクサーズはリーグトップレベルのディフェンダーが揃っている。更に得点王2位のビールが100%の状態でないということであり、それに対してリーグのベストウィングディフェンダーであるベン・シモンズが対するのはきつい。一方、今シーズンMVP候補の一人ジョエル・エンビードに対して、ウィザーズのビッグマンのダニエル・ギャフォードやロビン・ロペスでは抑えきれないだろうし、脇にはシューターが揃っている。ウエストブルックが1試合だけ爆発することは考えられるが、その他の試合ではいつもの空回りする可能性が高い。シクサーズが問題なく進出するだろう。

予想:シクサーズが4勝1敗で勝利

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(2) 第2シード:ブルックリン・ネッツ vs. 第7シード:ボストン・セルティックス

デゥラントの怪我からの復帰、ハーデンのトレードで一気に優勝候補の筆頭となったブルックリン・ネッツだが、少なくとも第一ラウンドは余裕で勝つだろう。今年のボストンのシーズンはコロナの影響を大いに受け、更にチーム全体の一体感や覇気が感じられず、ケンバ・ウォーカーがケガの影響もあってか精彩を欠いた。ジェイレン・ブラウンの躍進やテイタムの更なる成長、その他ロールプレイヤーもまずまずの活躍をしていたのだが、何かがしっくりこないというシーズンであった。序盤から10点差以上つけられることが半分以上あったというスタッツもあり、とにかく相手を打ち負かそうという意思があんまり見られなかった。そして追い打ちをかけるようにプレイイン直前にブラウンがシーズン絶望となったことでテイタムの孤軍奮闘となってしまい、ネッツのBig3の破壊力には到底及ばないだろう。レギュラーシーズンはBig3が一緒の揃ってプレーすることがほとんどなかったので手探り感はあるだろうが、それでも問題なくスイープで決着すると予想する。

予想:ネッツが4勝0敗でスイープ

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(3) 第3シード:ミルウォーキー・バックス vs. 第6シード:マイアミ・ヒート

イーストのマッチアップで最も注目すべきがこのバックス対ウォーリアーズであろう。昨年のカンファレンスセミファイナルでヒートがディフェンスとボールムーブメントでバックスを圧倒し、バックスとイヤニスは2年連続圧倒的なレギュラーシーズン残しながらプレイオフには弱いというレッテルを張られてしまった。そんな中でまた同じマッチアップになってしまい、バックスとしてはやるせない気持ちはあるだろうが今年は行けるのではないかと思う。まず、バックスは昨シーズンまでオフェンス、ディフェンスともに同じスタイルをずっと続け、プレイオフの途中で弱点を突かれることが多いが、今年は色んな戦略を試してきた。そして何より、リーグトップクラスのディフェンダーであるドリュー・ホリデーの加入は、1on1が多くなるプレイオフでは非常に大きい。それだけでなく、自分でオフェンスも作り出せるホリデーは安定感がなかったブレッドソーと比べて格段のアップグレードである。イヤニスも少しづつミッドレンジを鍛えており総合力は去年より上である。他方、マイアミはコロナやケガの影響もあってか、シーズン通して精彩を欠いた。レギュラーシーズン終盤は徐々に調子を出してきたと思ったが、アップダウンが激しすぎる。バトラーとバムは昨年以上の成績を残したが、脇を支えるロスターが軒並みレベルダウンしているのが痛い。もしバックスが負けたらチーム解体など大問題になるだろうが、今年は難関を突破できる気がする。

予想:バックスが4勝2敗で勝利

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(4) 第4シード:ニューヨーク・ニックス vs. 第5シード:アトランタ・ホークス

イーストで勝率が全く同じかつ、接戦になりそうなのがこの4対5の対決である。しかもニックスもホークスもプレイオフは久しぶりであり、主力選手は皆プレイオフ初めてというどっちに転んでもおかしくないシリーズである。トム・ティビドーのコーチング、タフなディフェンス、大躍進したジュリアス・ランドルの活躍によって弱小ニックスがいきなりホームコートアドバンテージを得た。対するホークスはシーズン途中でヘッドコーチのロイ・ピアースが解雇されネイト・マクミランが指揮を執り始めたことが功を奏し、トレイ・ヤング、ボグダノヴィッチといったガード陣の強力なオフェンスとクリント・カペラのディフェンスで一気に勝率を伸ばしていった。正直どちらに転んでもおかしくないと考えられるが、ディフェンスがタイトになるプレイオフでランドルとデリック・ローズ以外頼れるオフェンスパワーがないニックスはスコアリングに苦しむのではないかと考えられる。どちらのチームも経験値がないことを考えると、オフェンス力がより高いホークスが勝つ可能性の方が高いのではないかと読む。

予想:ホークスが4勝3敗で勝利

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<ウエスト>

(1) 第1シード:ユタ・ジャズ vs. 第8シード:メンフィス・グリズリーズ

ウォリアーズとの大接戦を制してプレイオフ進出を決めたグリズリーズは第一シードのジャズとの対決となる。今年のジャズは序盤圧倒的な力を見せ、リーグ1位を独走し、3ポイントとボールムーブメントを駆使した2014年頃のスパーズのようなオフェンスと、ルディ・ゴルベアがアンカーとなるディフェンスで勝利を重ねてきた。ここ数年プレイオフで結果を出し切れてい中でNo.1シードを取ったことでこれまで以上にプレッシャーは増えるだろう。また、3ポイントに比重を置くチームはプレイオフで失敗することも多く、(過去2年のバックスやハーデン時代のロケッツ) ジャズのオフェンスがプレイオフでも機能するかは注目である。更に、エースのドノバン・ミッチェルもケガ上がりでシーズン後半プレイしていなかった中でどこまでのレベルで復帰するかもカギとなる。とはいえ、相手のグリズリーズは非常に若いチームでプレイオフ経験がない選手が揃っていることもあり、それほど心配せずに勝ち抜くことができるだろう。エースのジャ・モラントはまだこれからの選手であり、プレイオフの経験を積むことがまず第一であるので、グリズリーズは敗退しても実りのあるシーズンだったと言えるだろう。

予想:ジャズが4勝1敗で勝利

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(2) 第2シード:フェニックス・サンズ vs. 第7シード:ロサンゼルス・レイカーズ

エストのファーストラウンドで最も面白くなるだろうシリーズがこのマッチアップである。クリス・ポールを獲得し、10年ぶりのプレイオフ進出と同時に一気に第2シードまでのし上がったサンズだが、まさか王者レイカーズと対戦するとは思っていなかっただろう。サンズは一時第1シードにもなっていたわけで、この僅か勝率の差でレイカーズグリズリーズとマッチするかの差はでかい。とはいえ、サンズは総合力が高い。ポール以外にも、プレイオフに合ったプレイスタイルを持つデビン・ブッカーというスコアラーを擁し、その他確実なウィングディフェンダーが揃ったサンズは穴が少ない。然しその最大の穴となるのが、アンソニーデイビスをディンフェンスできる選手がいないことである。ビッグマンのディアンドレ・エイトンはクイックネスがデイビスに追いつかないし、ウィングのクラウダ―やブリッジスではサイズが足りない。とはいえデイビスレブロンはケガから復帰直後で万全には見えず、特にレブロンが100%になるのはしばらく時間がかかるだろう。他の戦力が決して優れているは言えないレイカーズなのでサンズが善戦する可能性が高いと考えるが、最終的にはレブロンが第一ラウンドで負けることが想像できず、レイカーズが接戦を制すると予想する。

予想:レイカーズが4勝3敗で勝利

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(3) 第3シード:デンバー・ナゲッツ vs. 第6シード:ポートランド・トレイルブレイザーズ

エストは接戦のマッチアップが多くなりそうで、ナゲッツブレイザーズも例外ではない。今年MVPを獲得すると見られるヨキッチがいるナゲッツが、本来であればかなり有利なはずだが、とにかくケガ人が多い。ガードのジャマール・マレーの大ケガに始まり、ウィル・バートンやPJ・ドージャー、モンテ・モリスなどヨキッチを支えるガード陣がケガで不在もしくはケガと闘いながらの出場になることはかなり痛い。2年目のマイケル・ポーターJrがかなり成長をしてマリーのいない得点力のカバーをしているが、ヨキッチにかかる負担はかなり大きい。そんなガードが手薄なナゲッツに対して、ブレイザーズはガードヘビーなチームであり、リラード、マコラム、トレードで加入したパウエルという3ガードラインナップは強敵となるだろう。全体的にディフェンスが弱いブレイザーズではあるが、戦力が不足しているナゲッツ相手には致命的とならないと思うし、ヨキッチ相手にはヌルキッチというビッグマンがいるのも大きい。ということで、このマッチアップも第7戦までもつれるきがするが、既に証明されているヨキッチの勝負強さを信じ、ナゲッツが勝利すると予想。

予想:ナゲッツが4勝3敗で勝利

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(4) 第4シード:ロサンゼルス・クリッパーズ vs. 第5シード:ダラス・マーベリックス

昨年のファーストラウンドの再戦となるこのマッチアップをクリッパーズはあえて狙ってきた。シーズン終盤までずっと第3シードだったクリッパーズだが、レイカーズが6シードになる可能性があると見ると、最後の数試合は故意的に負けてシードを落として、マブスと戦う事を選んだ。(結果的に第3シードだったらブレイザーズになったので、その方が良かった気もするが、、、 もちろんレイカーズと戦うよりはマーベリックスの方が安心ではあるが、かといって簡単に勝ち抜けるものではない。エースのルーカはGenerational Talentである。昨年の第一ラウンドでも2年目ながらその素質を存分に見せつけ、Game Winnerも決めた。レナードとジョージというリーグトップクラスのディフェンダー相手にゲームをコントロールしていたことを考えると今年は更に活躍するだろう。ポージガンスなど他の選手があまり頼りにならないことはあるが、クリッパーズは侮ってはいけない。レナードとジョージは今年も安定した活躍したが、引き続きガードが手薄であり、ベテランのロンドに頼る機会が多そうなのは不安材料ではある。また、昨年優勝候補と言われながら記憶に残るチョークをした昨年に続き今年も敗退したらと考えるとプレッシャーはクリッパーズの方が大きいだろう。とはいえ、総合力で言ったらクリッパーズが上回り、ルーカの孤軍奮闘で接戦に持ち込めるだろうが優勝経験あるレナードが最後はクローズすると予想する。

予想:クリッパーズが4勝3敗で勝利

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色々と予想してきたが、結局どうなるかは最後まで分からないのがプレイオフ。最も試合数が多いファーストラウンドを思う存分楽しんでいきたいと思う。

プレイオフ直前! NBA プレイイン・トーナメントは必要か

どうも。NBAもレギュラーシーズンが終わりを迎え、とうとうプレイオフ直前となった。コロナが終息しない中でバブルではなく、遠征をしながら各チームのホームコートで (ラプターズだけはずっとアウェイだったが、、、) 72試合のレギュラーシーズンを進めるという事で不安が一杯ではあったが、何とかここまで来た。シーズン序盤はコロナ感染した選手も多くおり何試合も延期になったが、オールスター後ぐらいからはアメリカでワクチン接種が進んだこともあってか、試合開始数時間前に延長が決まるみたいなこともなくなっていった。

 

また、コロナで選手のスケジュール等も色々と支障があったこともあってか、今年は飛びぬけて優れたチームがいない気がする。正直イーストもウエストもどこが勝ち抜いてきても大して驚かない。そういったこともあってか、シーズン最終日になっても多くのシード順が決まってない状態であり、見ている方としては誰がどのマッチアップになるのだと毎日順位をチェックするのが楽しかった。トップシードにジャズとサンズが来るのか最後まで分かず、加えてナゲッツクリッパーズが必死に順位下げようとしたり、ネッツとバックス、ニックス・ホークス・ヒートも最後に順位がひっくり返る可能性があったというこれだけの混戦は非常に稀である。

 

今シーズンを更に面白くしているのが、今年から本格的に行われるプレイイン・トーナメントである。昨年も試験的に実行され、9位のブレイザーズ対8位のグリズリーズで大いに盛り上がったが、今年からはより複雑になったのでおさらいすると下記になる。

 

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フェニックス・サンズのプレイオフ進出とクリス・ポールのレガシー

どうも。NBAシーズンも佳境に入り、プレイオフシードを争うトーナメントに入る10位までのチームは両カンファレンスで大体決まってきた感じではあるが、プレイオフ進出圏内の中でのシード順は最後まで分からなさそうである。特にウエストは、昨年王者のレイカーズが、デイビズとレブロンが長期離脱しことで勝率を落とし第5シードから第7シードのどれかになりそうである (5/1現在)。両選手とも最近復帰してプレイオフには本調子となりそうであり、折角頑張った上位シードのチームはたまったもんじゃない。

 

例年のことだが、各チームがマッチアップの優位性を考慮して大体レギュラーシーズンの残り5試合ぐらいは、故意に負けてシードを下げたりするといった駆け引きがされる。今年はレイカーズの出来次第で、トップチームがどういう策にでるか見ものである。

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折角の上位シードがレイカーズにかき消されるのか

 

エストのトップチームとして、今年の序盤はユタ・ジャズが爆走していたのだが、ここにきてエースのドノバン・ミッチェルの怪我もあり若干ブレーキがかかっている。また、彼らのプレイスタイルはボールムーブメントと3ポイントという2014年頃のスパーズを彷彿とさせるが、最近まで異常な精度で決まっていた3ポイントがプレイオフでも通用するかは未だに疑問である。(3ポイント中心でレギュラーシーズンに強いここ最近のバックスやロケッツを彷彿とさせるところがある) 

 

勢いに陰りが見えてきたジャズをよそにここにきて抜群の安定感をみせているのがフェニックス・サンズであり、とうとう第1シードを仕留めたのである (5/1現在)。ここのトップ争いはレギュラーシーズンの最後まで激しい争いとなるだろうが、まずここ最近ずっと低迷していたサンズがプレイオフ進出を決めただけでなく、トップシードになるかもということがすごい。なんといってもサンズのプレイオフ進出は10年ぶりである。そこで今回は昨年プレイオフにすら出れなかったチームの功労者、サンズのポテンシャルについて考えてみたい。

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<クリス・ポールの加入>

サンズ復活の最大の功労者は紛れもなく今年で36歳になるクリス・ポールである。2000年代では最高峰のポイントガードであり、PointGodの異名を取るポールはどこに行ってもそのチームのレベルの底上げをする。ポールは最初の2シーズンを除いた13シーズン中、12回プレイオフに進出をしており、とにかくチームを強くすることに長けている。全盛期のクリッパーズ時代はブレイク・グリフィンなどスター選手を擁して常に優勝候補になっていたし、ロケッツに移籍してジェームズ・ハーデンとタッグを組んだ初年度はウォーリアーズを後一歩まで追い込んだ。また、昨年はリーグ最下位レベルの下馬評だったオクラホマシティ・サンダーを第5シードに引っ張るという驚きの活躍を見せたのは、ポールのいるチームは弱小にならないということを顕著に表している。

 

・衰えからの復活

彼の凄い所は、ロケッツの2年目である2018-2019シーズンにハーデンとの不仲や彼自身の成績の下降から衰えを指摘され、このまま選手として違うステージに行くのかと思われたところで、昨シーズンまた一流選手に戻ったことである。その理由は食生活の改善が大きかったと本人が言っており、それにより体が絞れて未だに全盛期に近い動きができているのである。若返りをはかるサンダーからトレードされる形でサンズに今年移籍をしたのだが、勢いに陰りは見えず、ここにきてMVP候補になるぐらいの活躍をしている。単純な数字だけ見ると他のMVP候補と比べて見劣りするが、彼の勝利への貢献度は計り知れない。これまでの常識だと、スピードとクイックネスがキーとなるポイントガードは35歳以降全盛期レベルを保つことが難しいと考えられていたが、ポールはスモールガードの中で初めてこの常識を破ったかもしれない。

 

・ポールの偉大さ

身長180センチそこそこでNBA選手としては非常に小柄な部類に入るポールが未だにトップクラスでいられる理由として、1) プレーを全て読み解くIQの高さ 2) 相手を引き立てようとするアンセルフィッシュさ 3) ゲームのコントロール力 4) 天下無敵のミッドレンジジャンパー 5) 病的ともいえる競争心といったことが挙げられるだろう。

 

1)のIQの高さについては、昔のキッドやナッシュと同様に司令塔という言葉がまさにふさわしい。同時にそのIQをチームメイトのセットアップにつなげ、自分の成績を気にしないアンセルフィッシュさがある。例えばコービーもバスケIQの高さは歴代最高級だったが、彼は自分が得点をすることが最も効果的という信念があったが、ポールは自分が得点を狙うより相手を引き立てることを優先する。どちらが優れているという訳ではないが、往々にして後者の方がチーム成績は安定しやすい。(キッド、ナッシュ、レブロン、バード、マジックが最たる例) 

更にポールはゲームのコントロール力が抜群であり、スローペースに持ち込んでIQを駆使してディフェンスの弱点を突くのを得意としている。昨年までアップテンポスタイルだったサンズが、リーグでもBottom5に入るぺーズまで落ちたのはサンズがポール色に染まったからである。

 

ポールはアシスト王に何度も輝いているが、得点力も高く、特にミッドレンジジャンパーは彼の代名詞ともいえる。3ポイントの確率も十分高いが、彼のミッドレンジからの正確性は群を抜いており、真面目に外す気がしない。必勝パターンはスクリーンを使ってコートの右側にいきそこからフェイダウェイを放つことであり、今年もこれで何度もクラッチバスケットを生み出してきた。そして彼はとにかく負けず嫌いであり、その勝利への拘りは病的とも言われている。(過去の偉大な選手も皆異常なほどの負けず嫌いではあるが) 万年低迷していたサンズは強烈なリーダーがいなかったところで、その根性をポールが叩き直したといっても過言ではないだろう。

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・ポールの弱点

希代のポイントガードであるポールだが、弱点も結構ある。1) プレイオフでのメルトダウン 2) 大事なところでケガする 3) チームと衝突しがちといった点はポールのキャリアの汚点となっている。

 

ポールはPoint Godと言われながら、未だにNBAファイナルを経験したことがない。毎年優勝候補と言われたクリッパーズで一度もカンファレンスファイナルに進出することができず、2014-2015シーズンの対サンダーとの第5戦でのミスの連続や、2015-2016シーズンには3勝2敗として臨んだゲーム6では大量リードしながら第4Qにロケッツに大逆転されたり、その他のシーズンではファーストラウンドで敗退したりと期待を裏切り続けてしまった。

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更にロケッツに移籍後の1年目では、リーグ最高の勝率を残し、ポールは人生初のカンファレンスファイナルに進出し、ロケッツはウォーリアーズを3勝2敗と追い込んだ。然し、第5戦の終盤に彼はハムストリングを故障し残り2試合を欠場せざる負えなくなり、ロケッツは敗れ去った。残り後一歩のところでファイナル進出を逃したのは惜しいとしか言えない。クリッパーズ時代もケガでプレイオフ欠場することがあり、プレイオフ終盤まで体が持たないという事がポールには多々ある。

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また、彼の強い競争心とコントロールフリークな性格が仇になる事も多い。バスケのプレーが全て見えてしまうポールにとって、それが分からないチームメイトは苛立ちの対象であり、彼はその選手の間違いを否応なしに指摘し、時には罵倒てしまう。そこら辺レブロンとかは立ち振る舞いが上手いのだが、ポールは常にガミガミ相手を怒鳴りがちな為、最終的にチームメイトから嫌われやすくなってしまうのである。クリッパーズ時代はブレイク・グリフィンやディアンドレ・ジョーダン、コーチのドック・リバースとも馬が合わなくなり、ロケッツでハーデンとは1年で仲が悪くなってしまった。

 

然し、年を重ね彼も感情のコントロールができるようになってきたのか、昨年若手だらけだったサンダーではリーダーとして悪い噂は全く出ず、今年もサンズで上手くチームにメッシュしている。彼自身が大人になったこともあるだろうし、ポールの競争心むき出しかつ小姑のようなスタイルが、同じく競争心の強いデビン・ブッカーを中心したサンズの選手と上手く合っているのかもしれない。

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<新生サンズの可能性>

ポールの加入によって一気に強豪となったサンズは非常にバランスの取れたチームである。今年6年目サンズ一筋のSGブッカーは、入団当初からスコアラーとしてリーグ内で評価され、ここ2シーズンはプレイメイクの向上もしていたが、弱小チームをプレイオフに導くことはできなかった。然し、ポールの加入でスコアリングに集中できるようになり、初のプレイオフに向けてその勝負強さを発揮してくれると期待したい。

 

今年3年目の元ドラフト1位のCディアンドレ・エイトンは未だに精神面での頼りなさや、フックショット以外のオフェンスのバリエーションがないことが気がかりではあるが、ルーキー時課題だったディフェンスを向上させておりリムプロテクターとして頑張っている。

 

同じく3年目のウィングプレーヤーであるミカル・ブリッジズも良質な選手である。3ポイントは40%を超え、カットなどオフボールの動きも優れている上、ディンフェンダーとしても高いレベルを持つ彼はロールプレイヤーとしてはこれ以上にない活躍をしている。

 

5人目の選手としては、ベテランでタフネスという言葉がふさわしいジェイ・クラウダ―や2年目のシューターのキャム・ジョンソンが候補となる。ジョンソンはサンズが一巡目で指名した際は笑いのネタになるほど評価が低かったが、シュート力と想像以上に上手いディフェンスでドラフト前の懐疑的な意見を吹き飛ばしている。また、プレイオフ経験が豊富なクラウダ―はポールとともにベテランリーダーシップを発揮している。

 

その他、器用でパスの上手いフォワードのダリオ・サレッジやウィングディフェンダーのトリー・クレイグ、一時期Gリーグプレーヤーとなっていた状態から這い上がったキャメロン・ペインなど質の高いベンチ陣が揃っている。

 

サンズの強みは、ロスターに弱点が少ないかつ、色んなタイプの相手に対抗できるフレキシビリティがあることである。一方ポールとクラウダ―以外、プレイオフ経験を持つ選手は少なく、エースのブッカーが初プレイオフということも気がかりである。更にポールのプレイオフでの活躍は上記の通り絶対的な信頼をおけるとは言えない。その為サンズが例えNo.1シードになっても優勝候補の筆頭にはならないだろう。

 

エストの優勝候補は昨年王者のレイカーズ→タレント豊富なクリッパーズの順であることに変わりはなく、チームベストのタレントではサンズは劣るが、チームの総合力ではこの2チームに負けてはいないと思っている。何よりNBAファンとして、史上屈指のポイントガードであるクリス・ポールの初ファイナル進出を望まずにはいられず、今年こそはと期待したいものである。

ミネアポリスの判決の意味とは <アメリカ黒人差別問題>

どうも。昨年アメリカで大きな社会問題となった警官によるジョージ・フロイドの殺害について、主犯であるミネアポリス警察のDerek Chauvin (デレック・ショーヴィン) に対して殺人罪の判決が下された。今回はこの件について簡単に個人的な考えをまとめてみたい。ほぼ1年前に起きたジョージ・フロイドの窒息死事件は下記の記事をご参考。

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1. 当たり前が通らない歴史

アメリカだけでなく世界的な問題に発展したこの事件の裁判はもちろん大きな関心を呼んだ。普通に考えたらショーヴィンがやったことに対して殺人罪となるのは当たり前のはずなのだが、そうはいかないのがアメリカ社会の問題である。なぜなら白人警官が黒人に暴行を加え、時には死亡させた場合ですら起訴されない、裁判で無罪になるケースが多々あったからである。

 

例えば、91年にLAで起きたロドニー・キング事件では、何人もの警官が無防備のキング相手に暴行を加えた動画の証拠があった中、全ての警官が無罪になった。これによりLAライオットと呼ばれる暴動が起きた。最近ではミズーリで逮捕に抵抗したマイケル・ブラウンを射殺した警官や、エリック・ガーナーを窒息死させた警官も裁かれておらず、大きな抗議運動が起きた。こういった事例がある為、結局白人警官が人を殺しても、その相手が黒人である限りどうせ法で裁かれないだろうという懐疑的な見方になってしまう。

 

今回の裁判でデレック・ショーヴィンを有罪にすることはできたのは、反論することができない決定的な証拠があったからであろう。8分46秒間の間、完全無抵抗のジョージ・フロイドの首に膝をのせて、"I can't breathe"と言っていたフロイドを無視して窒息死させた動画はあまりにも生生しく、被告が何を言おうと陪審員をひっくり返すことは難しかっただろう。もちろんここまで大きな社会問題となったこと、世論が少しづつ変わってきたことも貢献しているとは思う。そんな状況だったであったのにも関わらず、本当に殺人罪で有罪になるか不安視されていたことが、黒人の司法に対する信頼の無さを表している。逆に言うと、一部始終が動画で撮られていなかったら起訴すらされていなかったのかもしれない。

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判決を言い渡される容疑者

 

 

2. 止まらない白人警官の横暴

昨年のBlack Lives Matterによって白人警官の横暴が静まったかといえば全くそうではない。この裁判の判決が決まる数日前には事件が起こった同じ場所のミネアポリスで黒人のダンテ・ライトが白人警官によって殺害された。この事件では、自動車の登録が漏れていたライトの車を止めた警官が、ライトが指示に従わなかった為に発砲したのである。警察によると発砲したキンバリー・ポーター警官はライトにテーザーを使おうとして誤って銃を使ってしまったというものである。そもそもこれが本当だか分からないが、本当だとしてもテーザーと銃を間違えること自体信じられないミスである。人の命がかかっている仕事であるのに、武器の判別が徹底的にトレーニングされていないことが管理不足であり、そもそも無防備な状態なのにテーザーを使うことが習慣化されていることがおかしい。更にこのポーター容疑者は26年勤務していたベテラン警官であったというから驚きである。ベテラン警官がこれでは、新米はどうなるのか不安でしかない。

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同時期にニュースとなったのが、ヴァージニアで黒人の陸軍中尉が白人警官に車を止められ、指令に従わなかったとして一人の警官が中尉の目に催涙スプレーをかけた件である。これも特に中尉が暴れていたわけではなく、ナンバープレートがちゃんとついていないと言いがかりをつけられたあげく、車から出てこずに警官に説明を求めていたところでスプレーをかけられたのである。人によっては警官が車から出ろといったら外にでるべきという人もいるだろうが、興奮した警官がいる中で無防備で車から出て、逆に撃たれるかもしれないという恐怖が常に黒人市民の中にはあるからこそ出れないのである。そして、この主犯の警官は相手にまっとうな理由を説明せずにただただ服従するように求めている。それだけ警官であればなんでもしてもいいというおかしなパワーストラクチャーがアメリカな闇なわけである。途中で中尉が"I am afraid"と言ったところでこの警官は"You should be!"と言っており、これこそ脅し以外の何物でもない。結局被害者であるCaron Nazarioが訴えを起こしたことでこの事件が明るみになり、主犯の警官クビとなったわけだが、これもデレック・ショーヴィンと同じく、証拠となる映像がなければ無視されていたかもしれないと思うと憤りを感じる。この映像はアメリカの警察の悪態を非常によく表している事例であり、是非見て頂きたい。

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3. 結局何か変わるのか

話をジョージ・フロイドの判決に戻そう。今回の判決は決して喜ぶものではないと思う。何故なら裁かれて当たり前であるし、ジョージ・フロイドはもうこの世に戻ってこない。アメリカでもCelebrationという言葉が使われたりしたが、それは間違っている。Reliefという方がふさわしいかもしれない。然しこの結果が少なくとも正しい方向に進む小さな小さなステップであることは確かである。上述のように一向に警察による黒人やマイノリティーに対するプロファイリングは収まらない。但し、ボディカメラや監視カメラ、SNSによって警官の横暴が記録に残されやすくなってきたのもヘルプにはなるであろう。Black lives Matterのように市民が立ち上がって世論と政治家を動かすことが進んできている。

 

結局のところ今すぐ状況が好転することはないだろう。引き続き白人警官によって不法に逮捕されたり、殺される黒人は必ず出てくる。改善の為には、現在ゆるゆるである警官のトレーニングをもっとちゃんとやるように圧力をかけることが必至であり、怪しい人・行動を見たら速攻で銃を撃つという警官のマインドセットが変わる必要がある。この悪しき習慣を正すのにはものすごい時間がかかること否定できない。但し、一歩ずつでもこの社会が良い方向になり、いかなる人も怯えることなく過ごせる世の中の実現を願うばかりである。

ステファン・カリーの快進撃とウォーリアーズのタイムリミット

どうも。いきなりだが、ここ最近のステンファン・カリーの勢いがすごい。4月18日時点では、平均31得点に、FG:49%、3P:43%とチーム力不足のウォーリアーズで孤軍奮闘している。特に、3/29から10試合連続30得点以上、そのうち40点以上3回、50点以上1回記録と絶好調なのである。そしてその10試合中で、10本以上3ポイントを決めたのが3回と驚異的な数字を残している。(ステンファン・カリーとクレイ・トンプソンが登場する前の3ポイントレコードが1試合12本だったことを考えるとこの記録の凄さが分かる)

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カリーの凄さを今更語る必要はないと思うが、今年33歳になった彼が満場一致MVPに輝いた2015-2016シーズンに近い数字を叩き出しているのは半端ないことである。何よりNBAファンとしては、昨年ケガでほとんどプレーしなかったカリーの活躍を見れるだけで嬉しい。彼のプレーは人を引き付けるものがあり、カリーがヒートアップするとチーム全体、会場全体、ブロードキャスト全体から楽しさが溢れて出てくる唯一無二の選手である。ドリブル力、シュート力、パス能力だけだけでなく、アンセルフィッシュで常に動き回るプレースタイルはエンターテイメント性では歴代最高クラスである。

 

然し、上述の通りカリーは33歳である。今のような活躍ができるのも後数年であろう。スーパースターポイントガードが30代後半まで全盛期を維持するのは過去に前例がなく、現在35歳のクリス・ポールが一番キャリアを伸ばせている例だと思う。カリーのシュート力は30代後半になっても健在だろうが、元々ケガが多かったカリーに過度の負担をかけるのも危険である。と考えると彼の全盛期を見ることができるのも僅かであり、この重要な時期をウォーリアーズが逃すわけにはいかない。そこで今回はカリーとウォーリアーズのタイムリミットについて着目してみたい。

 

1. コアプレイヤーの衰えの可能性

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ウォーリアーズが2012年頃から台頭し、2015-2019年まで5年連続NBAファイナルに進出した原動力はウォーリアーズによってドラフトされた、ステファン・カリー、クレイ・トンプソン、ドレイモンド・グリーンの3人である。個人的にウォーリアーズを応援せずにいられなかったのは、主力の中心がトレードやFA移籍で集まったスーパーチームではなく、チームのドラフトの上手さと選手の育成によって強豪となったことである。もちろん途中ケヴィン・デゥラントが加入したことで、ウォーリアーズはスーパーチームとなったわけだが、元々の基盤はこの3人であることに変わらない。キャッチアンドシュートが超得意で、カリーの次に現役ベストシューターであるかつ、ディフェンスも上手いトンプソンと、オフェンス力はあまりないが、歴代最高レベルのディンフェンスIQとフォワードとして珍しいパス能力を持つというユニークな選手であるグリーンによって絶妙なハーモニーが生まれていた。然し、カリーの以上に心配なのがこの2人の衰えの可能性である。

 

1-2. トンプソンのケガ

まず、2019年のNBAファイナルで靭帯断裂をしたトンプソンは、今シーズン復帰間近となったところで今度は練習中にアキレス腱を断裂してしまった。この2つのケガどちらか1つでもキャリアに大きな影響を与えるのに、2年連続で2つ違う部分で大ケガをしてしまったのは悲劇としか言えない。彼のカムバックは期待されるところではあるが、これまでの常識を考えたらクレイが以前と比べて100%の状態で復帰することは考えづらい。彼がキャッチアンドシュート中心のプレイスタイルでオフェンスをクリエイトするタイプではない事は幸いではあるが、それでも動き1つ1つのキレは落ちるだろうし、何よりリーグトップクラスだったディフェンス力は確実に平均レベルまで落ちてしまうだろう。もちろん医学は常に進化しており、過去の常識を打ち破る可能性もあり得る。いずれにせよ彼がどのレベルで復帰できるかはウォーリアーズ復活にとって最も重要なピースである。

 

ちなみにだが、トンプソンはそのChillかつスターぶらない性格で知られており、ドライなユーモアでNBAメディアからも人気である。

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1-3. グリーンの衰え

トンプソンはケガの衰えが懸念されるが、どれくらいのレベルで復帰するかはまだ未知数である。一方ドレイモンド・グリーンは既に明らかに衰えている。元々シュート力やドライブ力がある選手ではないが、最近はそもそも自分から得点を取りに行くことをほとんどしなくなっている。2015-2016年シーズンは平均14得点だった得点力が年々下がってきており、今年は僅か平均6.6得点である。そもそもシュートを狙っていないのでディフェンスは彼をマークしないし、ワイドオープンの3ポイントでも、次のオフェンスのムーブメントを待ってパスしたりする。カリーを活かすためにプレイメイクに力を入れることで今年は8.6アシストとガード並みの数字ではあるが、FG41%、3PT27%はさすがに厳しい。いくらオフェンスのセットアップをしているとはいえ、そこに安定したシュート力がないと結局ディフェンスがカリーに集中してしまう。

また、Defensive Player of the Yearに輝き、2メートル弱の身長でガードからセンターまで守れるディフェンスIQは健在ではあるが、こちらも全盛期と比べると若干落ちている。今でも十分優れたディフェンダーではあるのだが、ウォーリアーズの栄光を築いたスモールボールにはグリーンがセンターとして機能する必要があり、少しの衰えでも大きなダメージになる為、グリーンの衰えは非常に大きな懸念材料ではある。

 

全盛期のグリーンのディフェンスIQとコミュニケーション力はハキーム・オラジュワン、ケビン・ガーネット、ティムダンカンに匹敵するぐらいだと思っている。

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2. コアプレイヤー以外の可能性

ケビン・デゥラントが移籍した今、ウォーリアーズにはコアプレイヤーを支えるロスターが早急に必要である。然し、今のところそれを埋めれる選手はいない。ウォーリアーズのChampionship Runを支えた選手達は多くが引退 OR 移籍しているし、デゥラントの獲得やベテランの補強をしていた為、現状イキのいい若手がいない。一番実力がある選手はおそらく元ドラフト1位のアンドリュー・ウィギンズで、ウォーリアーズ移籍後はディフェンスも頑張ってはいるが、重要な場面で頼りになるかといったら全然ならない。昔から言われている事だが、素晴らし身体能力があるのに、時に空気のように存在感がないからである。後は、ケリー・ウブレーJRもいるが彼はバスケIQがあまり高くなく、存在感はあるが信頼は置けない。その他は元々Dリーグ出身の選手が中心であり、ハッスルプレーをする選手は多いが、クオリティ高いロスターとは到底言えない。

 

そこで期待されるのが、今年のドラフト2位のジェームズ・ワイズマンとなる。シーズン開幕直後は才能の片鱗が見られたが、途中から徐々に自信を無くしていく様子が感じられ、成績も下降線を辿った。最終的には膝のケガによって今シーズンは絶望となってしまった。カレッジでのプレー経験もほとんどなかったことを考えると仕方ないのだが、まだまだ粗削りで成長には時間がかかりそうである。2メートル16センチかつ高い身体能力とシュートタッチを持っているので、将来的にスターになる可能性はあるのだが、問題はウォーリアーズには時間がない。今年の経過を見る限り、彼が優勝を狙えるチームのスターターとして貢献するには3年はかかるであろう。そうすると、残されたカリーの全盛期とタイムラインが合わないのである。このジレンマをどうするか、フロントは難しい決断に迫られる。

 

3. キャップスペースをどうするか

ウォーリアーズにっとて、強力な補強をするのが難しい状況にある理由の1つが、サラリーキャプのフレキシビリティがないことである。カリー、トンプソン、グリーン、更にウィギンズまでMax契約な為、この4人でチームサラリーの75%を占める上に、既にNBAサラリーキャップを大幅に超えているのである。(リーグ1位のサラリーを払っているのに、プレイオフいけるかギリギリなのは悲しい、、、) こういう場合は、若手でルーキーコントラクトな選手を揃えるか、運よく年俸が低い選手を発掘しない限り中々厳しいのだが、上述の通り強力なサポーティングキャストがいないので劇的な対策をする必要がある。

 

単純にサラリーキャップに余裕を持たせるには、まずウィギンズをトレードするべきだが、彼のサラリーの高さとプロダクションはマッチしておらず、買い手が出てくるかは分からない。買い手を見つけるとなるとウィギンズ+チームが欲しがる選手やドラフトピックをくっつける必要性があり、その場合今すぐチームを助けられないワイズマンがトレード候補になる可能性だってある。それが上手くいかない場合、更なる手段としてコアグループを解体する必要も考えられる。既に全盛期ではないグリーンだけでなく、ケガから復帰した様子次第ではトンプソンだって安心できない。もちろんカリー、トンプソン、グリーンの3人が残った上で、再度優勝を狙えるのであればそれに越したことはないのだが、現実問題可能性が低いと言わざる得ない。

 

いずれにせよ、歴代最高のシューターであるカリーという存在を活かすためのチーム強化は急務であり、ウォーリアーズのタイムリミットは刻々と迫っている。今シーズンオフからGMのボブ・マイヤーがどういう動きをするか見逃せない。

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白熱のMVPレース:超ユニークプレーヤー 二コラ・ヨキッチの凄さ

どうも。NBAのレギュラーシーズンも残り1か月半ぐらいになり、シード争いがヒートアップしてきた。となると気になってくるのがMVPレース。MVPの基準に明確なものがない為、毎年シーズン最後までアメリカメディアで議論になることが多く、スタッツ中心の分析からメディアの好き嫌いとかも絡んでくる。

 

バックスのイヤニスが過去2年連続MVPを受賞したが、どちらのシーズンもプレイオフ途中で敗退したことで彼が本当にMVPにふさわしいのかという不満が高まっており、今年も成績も中々半端ないが3年連続はありえないだろう。(MVPはあくまでレギュラーシーズンの功績だけを判断すべきではあるのだが)

 

また、36歳になっても未だにNBAのキングであるレブロンについても、シーズン序盤は快調に飛ばしており、2013年以来MVPを取ってないことで、こんな年齢でこの成績はすごいぞというストーリーラインでメディアの後押しを受けるとも思われたが、ケガをしてしてしばらく戦線離脱をしており、かなり厳しくなってきた気がする。

更にネッツのジェームズ・ハーデンは、ネッツ移籍後すさまじい成績を残しているし、現在イースト1位の勝率を残しているネッツの最大の功労者である。私自身も彼がここまですぐにプレイスタイルを変えてフィットするとは思わなかった。ハーデンの成績が文句なしなことには変わらないが、彼のシーズン当初のロケッツから移籍劇の身勝手さについてはどうしても目をつぶることはできず、投票者の多くも同じような判断をするだろうと考えると彼が2度目の栄誉を獲得することは難しい。ハーデンのトレードリクエスト騒動とネッツの可能性については昔の記事をご参照。(自分の予想が全く外れており、恥ずかしいが、、、)

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その他、ブレイザーズのデイミアン・リラード、マーベリックスのルーカ・ドンチッチも圧倒的な成績を残してはいるが、シード順位が若干低すぎる。一方チーム成績がリーグトップクラスのドノバン・ミッチェル、クリス・ポール/デビン・ブッカーについては逆に個人成績が突出していない。(十分好成績を残してはいるが) 

 

ということで、残る候補はナゲッツ二コラ・ヨキッチシクサーズジョエル・エンビードとなる。ここ10年で急激にスモールボールが進み、ビックマンの存在が危ぶまれた中、センターである2人がMVPレースのトップ候補になるのはまたビッグマンの存在感がリーグ内で増えてきている証拠なのかもしれない。ただし彼らは非常にスキルの高い革新的なビッグマンであり、これまでのトラディショナルなセンターとは違う。エンビードは今年はコンディショニングを向上させて、オフェンス・ディフェンスともにアンストッパブルな状態でシーズン前半のMVPは文句なしだったのだが、オールスター直後にケガをしてしまい10試合連続で欠場したかつ、復帰後の成績も上がりきっていないことでかなり厳しくなってきた。

 

そこで今シーズン全試合出場し、序盤不調だったナゲッツを引っ張り続けているヨキッチがMVP最有力候補となった。エンビードと同じくコンディショニングが課題かつ、NBA選手とは思えない脂肪の多さが目立ったヨキッチだが、今年はやっと体を絞ったことでプレイのレベルを数段階あげている。ということで、今回はNBA史上最もユニークな選手の一人であるヨキッチのすごさをまとめてみる。

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<パス>

ヨキッチが一番凄いのはなんといってもパス能力である。彼はビッグマンの中では史上最高のPasserといえる。これはヨキッチがリーグに入ってから数年で当たり前のような事実となっていた。彼はありとあらゆるパスを繰り出すことができ、ポストアップからオープンシューターを見つけるだけでなく、カットした選手に絶妙なポジションにボールを出す。それを右からでも、左からでも、バウンスパス、ノールックパスでもなんでもできるのである。たまにディフェンダーの足の間からパスを通したりもする。それだけでなく、センターコートの近くから片手でいとも簡単にパスを投げられるし、代名詞となりつつあるフルコートのタッチダウンパスも自然な流れで超正確である。

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とにかくパスを出すタイミングとアングルが絶妙すぎて、過去にはビル・ウォルトン、クリス・ウェバーなどパスが上手いビッグマンはいたが、ヨキッチは次元が違う。比較対象はビッグマンではなく、マジックやルーカといった希代のパサーと同じようなスキルを持っているのである。今シーズン8.8アシストも記録しており、まさにトップポイントガード並みである。

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<フットワーク>

彼がすごいのはパスだけでなく、そのスコアリング能力である。彼は非常にアンセルフィッシュな選手で自分の得点より、常にパスやオフェンスのフローを考えてしまうタイプで、昨シーズンまでは試合の半分ほぼシュートしないことがあるぐらいであった。これはいいときもあるが、アンセルフィッシュ過ぎるのはチームの得点が必要な時にたまに傷となる。然し、彼のオフェンスレパートリーがないわけではなく、逆にスキル満載で、特にフットワークは目を見張るものがある。そしてヨキッチはNBAの中でもかなりスピードが遅く、ジャンプ力も乏しいがそれを補うゲーム感覚と体の大きさもある。彼のアップアンドアンダーとフックショット、度重なるフェイクは往年のケビン・マクヘイルのようであり、ディフェンダーのポジショニングに合わせて様々なカウンターをする。決して身体能力とパワーで圧倒する訳ではないが、持って生まれたバスケセンスと頭の良さ、タッチの柔らかさを使うのが特徴的である。今シーズンはより積極的に点を取りに行っており、昨シーズンの平均20得点から、一気に26.3得点まで上げてきている。

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<シュートスキル>

ヨキッチがユニークである1つがそのシュート力である。以前から3ポイントを打ってはいったが、確率は30%ちょっとで平均以下ではあった。それが今年はなんと43%まで向上させており、これじゃディフェンスは太刀打ちできない。更に彼は上述のフットワークを生かしてミッドレンジからのシュート力も高い。シュートのアーチが非常に高い彼のショットはブロック不可能である。そしてヨキッチのシュートで一番やばいのが、右足軸の1本足ショットである。一本足シュートといえばダーク・ノウィツキ―が有名であるが、ダークは左足を軸にする一本足であった。というか、右利きの選手であればどんなシュートを打つ時でも左足軸で打つのが当たり前なのだが、ヨキッチはその常識を覆してしまった。彼はフェイスアップした状態からでも、ポストアップからのターンアラウンドでも右足軸でシュートしてしまう。これまで見たことないかつシュートのタイミングが独特な為、ディフェンダーは意表を突かれてしまう。ヨキッチは左足を故障している際に、このシュートの仕方を覚えたようだが、結果的に難易度MAXのムーブが開発されたわけである。一度試してみたらわかると思うが、頭で理解しても自分でやろうとしてできるショットではない。

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<勝負強さ>

ヨキッチはアンセルフィッシュなことで有名だが、一方試合終盤でのクラッチ力も実は高い。有名なNBA Analystのザック・ロウが、ヨキッチはビッグマンではダーク以来クラッチシチュエーションでボールを預けられる選手と最近よく言っている。これは本当に確かで、ローポストからのフックショット、フェイダウェイ、3ポイントも打てる彼は僅差の試合でボールを渡しでも自分でオフェンスを作り出すことができる。常にひょうひょうとしているからなのか、緊迫した状況でも緊張した様子は見せず何事もなかったかのようにシュートを決めるのはヨキッチの凄いところである。昨年のプレイオフでもジャズのゴルベアの上からフックショットを決めて勝利を呼び込んだのは記憶に新しい。普段はパス優先なのに、ここぞという場面で決めてくれるのは彼の魅力である。

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<世の中のふとっちょの希望>

これは番外編であるが、前述の通り今シーズンに入るまでヨキッチはNBA選手としてはかなり太っており、ばりばりのアスリート感は全然なかった。いつも疲れてるいるような走り方や表情をしていおり、何も知らない人が見たら彼が一流選手だとは到底思わないだろう。更に、ビッグマンながらダンクはほとんどしなかったし、同じ身長でケビン・デゥラントやイヤニス、アンソニーデイビスのような宇宙人みたいな選手達がいる中、ヨキッチはすごい一般的な運動神経である。それなのにトップアスリートをきりきり舞いにするヨキッチはとってもユニークかつ、誰もが親近感を持てる選手である。(もちろん身長は211CMなのでそこは普通ではないのだが) 

彼の少年時代のパスポートの写真を見たらどこにでもいるちょっと太めの子供にしか見えず、そんな彼がMVPのフロントランナーになっている事実は世の中の子供に希望を与えてくれる?はずである。

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ぽっちゃり体系だけでなく、ユーモアに富んで面白いキャラクターのヨキッチはこれから更に知名度を上げて、NBAを代表する選手になっていくであろう。

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