ディープなNBAトーク+アメリカ文化

NBAとアメリカンカルチャー中心のブログ

今年のミルウォーキー・バックスは本物か <NBAプレイオフレビュー>

どうもプレイオフが開幕して、毎日が忙しい。

 

まず、ウエストから見ていくと、ジャズ対グリズリーズは初戦にグリズリーズが取り、更に第2戦はグリズリーズの2年目のジャ・モラントが47得点という21歳以下の選手でプレイオフにおける最多得点を記録したりと第1シード対8シードのマッチアップとしてはとっても面白い。(2試合目はジャズが勝ったが)

www.youtube.com

 

レイカーズ対サンズは初戦にサンズが勝ち、2戦目も接戦であったが、クリス・ポールの怪我が痛すぎる。初戦のファーストハーフでポールが肩をケガをして本調子の30%ぐらいに見える。肩を上がることがほとんどできなそうで、天下の宝刀ミッドレンジジャンパーもシュートできない状態となっている。本来であれば最後までもつれるはずだったシリーズが割とすぐに終わりそうである。。。

 

ナゲッツブレイザーズは、お互いのいい所を出し合っている感じだが、ナゲッツのヨキッチに対してブレイザーズのディフェンスの弱さが浮き彫りになっている。Dame Dollarは大活躍しているが、ブレイザーズのディフェンスがお粗末すぎて最終的には力負けしそうな気がしている。

 

エストで最も面白いシリーズがマーベリックスクリッパーズであろう。最初の2試合でルーカがクリッパーズがディフェンスをきりきり舞いにして、クリッパーズのホームでまさかの2連勝し、クリッパーズが解体してしまうかというぐらい追い込んだ。が、第3戦は一転勝利しており、マブスはセカンドオプションのはずのポージンガスがオフェンス、ディンフェンスともにダメダメなのが懸念要素になりそうである。このシリーズも接戦になりそうである。

www.youtube.com

 

イーストで見た場合、シクサーズ対ウィザーズはおそらくシクサーズが問題なく勝ち進むであろう。ネッツ対セルティックスも力の差は明らかだが、第3戦でジェイソン・テイタムが50得点というスーパースターな活躍して1勝したが、これがセルティックスのできる限界であろう。

www.youtube.com

 

イーストで一番面白いのはニックス対ホークスであろう。初戦からマディソンスクエアガーデンが大興奮でニックスファンの凄さを見せつけてくれたが、ホークスのエースであるTrae YoungがVillanになるという予想していなかった展開で大いに盛り上げてくれいる。ヤングは実際大活躍しており、ニックスにとって最大の敵となっている。加えてニックスのエース、ジュリアス・ランドルが絶不調すぎるのがきつい。

www.youtube.com

 

そしてプレイオフ開幕前に個人的に一番気になっていたマッチアップがバックス対ヒートだった。昨年のカンファレンスファイナルでヒートが4勝1敗とバックスを圧倒し、バックスはプレイオフに弱いという印象を決定的にしたわけで、今年の再戦も接戦になると考えていた。然し、蓋をあけてみると初戦はオーバータイムまでいく接戦となったがそれ以降はバックスが大差をつけて3連勝し、昨年の屈辱を果たした。昨年と比較して、バックスも強くなったし、ヒートも弱くなったというのが単純な理由であろう。

 

ということで、今回は昨年から成長を遂げ、セカンドラウンドでの躍進も期待されるミルウォーキー・バックスに焦点を当て、今年こそチャンピオンシップを狙えるのか、昨年との違いなど深堀していきたい。

f:id:atsukobe:20210530220212j:plain

 

1. ドリュー・ホリデーの加入とBig3の形成

今年のバックスを語る上で欠かせないのが、オフシーズンにトレードで移籍してきたドリュー・ホリデーの存在である。ホリデーは長い間最も過小評価されている選手の一人と言われてきたが、Advanced Analytics好きの人たちからは常に高評価されていた。その大きな理由の1つが、リーグ屈指のディフェンス力である。ホリデーは自分と同じサイズのトップガード選手をシャットダウンできるだけでなく、デゥラントやバトラーなど身長で負けている選手も苦しめることができる技術を持っている。スピードとパワー、ハンドコーディネーションを備えたホリデーのディフェンスは芸術的で、少なくとも1 on 1ディフェンスではリーグトップ3に入ると思う。彼がペリカンズ時代のプレイオフブレイザーズのリラードを完全にシャットダウンしたのは印象的なシリーズである。

www.youtube.com

 

また、ホリデーはディフェンスだけでなく、軽く20点を取れるオフェンス力、セットアップ能力にも長けている。特にこれまで1 on 1で頼れるショットクリエイターがクリス・ミドルトンしかいなかったバックスにとって、ドライブも備えるホリデーの存在はバックスのオフェンスの幅を広げてくれる

 

そしてホリデー、ミドルトン、イヤニスというBig3ができたのも大きい。イヤニスはリムラン、ファストブレイクなどで得点を量産できるが、試合終盤に自分で1 on 1から相手をかわしてジャンパーというオフェンスの大黒柱に必要なスキルがない。イヤニスはそういう意味でシャックに近い。それをこれまでミドルトンがNo.2で補っていたわけだが、正直No.2としては、コービーやウェイドのようなレベルではないので物足りなかった。ミドルトンは非常にefficientで過小評価されてはいるが、シュート中心なのでドライブ力が弱い。そこにホリデーがいることでオフェンスのバリエーションが増えたのである。更に3人とも優秀なディフェンダー(うち2人はリーグトップレベル) ということで、昔のセルティックスやヒートのBig3と比べたら少しネームバリューに劣るが、優勝を狙うには十分な3人が揃っていると言えるだろう。

 

何より、ホリデーを獲得する代わりにエリック・ブレッドソーを放出できたのが一番大きいかもしれない。ブレッドソーは過去2シーズンレギュラーシーズンでそこそこの活躍をしたが、ポストシーズンではシュート力のなさと、判断力の弱さで、まさにDisasterとなっており、一昨年のラプターズ、昨年のヒートともにシリーズ途中から彼をディフェンスしなくなるレベルであった。その後釜として、ディフェンス力、シュート力など全てにおいて勝っているホリデーが入ったのはGame Changerであった。

 

2. ベンチプレイヤーの充実

ホリデーの加入以外にも、バックスは昨年からロスターが結構変わっている。今シーズン移籍した、ブレン・フォーブス、PJ・タッカー、ボビー・ポータスはそれぞれ重要なピースとなっている。フォーブスはそのシュート力でファーストラウンドで大活躍し、タッカーはヒューストン時代から有名なディフェンス力、ポータスは向上した3ポイントと、タフネスをチームに与えている。

 

また昨年は全盛期を過ぎたベテランに頼らざる得ない状況だったのが、上記のフォーブスやポータスなど若い選手になったのも大きい。昨シーズンは、ウェズリー・マシュー、ジョージ・ヒル、カイル・コーバーなど、いつ引退してもおかしくない選手が必要以上のプレイタイムを記録しており、ベンチ陣の弱さを露呈していた。それと比べて今年はベンチからプレーするメンバーは減った気がするが、その分レベルの底上げができており、Big3をうまく支えられている。

 

3. コーチの戦術の変更

チームの構成だけでなく、ヘッドコーチのマイク・ブーデンホルザーの戦略が変わってきたのも大きい。彼はホークスのコーチ時代から、チームのレベルアップという点ではリーグでもトップクラスだった。2015年にスーパースターがいないホークスをリーグ1位の勝率に導いた手腕はバックスでも発揮され、過去2シーズン連続バックスをリーグ1位にさせた。然し、ブーデンホルザーの弱点として適応力が幾度となく指摘されていた。彼はシーズン前から徹底した効率重視のシステムを構築し、そのシステムでレギュラーシーズンを圧倒することができるのだが、同じチームと何度もプレーするプレイオフではそのシステムが暴かれ、そこの弱点を突かれる。それに対してブーデンホルザーは今まで固くなに自分の信念を貫く傾向があり、アジャストをするにしてもいつも手遅れになっていた。

 

然し、過去の失敗から今年はレギュラーシーズンを実験する期間に変更し、チームの適応力を高めている。例えばオフェンスでは、イヤニスのドライブにシューターを4人揃えるといった単調なオフェンスだったのが、ピックアンドロールを増やしたり、イヤニスをポストに置いたりといったことをしており、ディフェンスではこれまでマッチアップのスイッチを拒んて来ていたのよりスイッチするようにしている。レギュラーシーズンで毎試合勝つことよりも様々なスキームを試すことにフォーカスした今シーズンはイースト3位の勝率となったが、少なくともヒート相手にはこの実験が功を奏していた。

 

4. イヤニスの成長

バックスのリーグトップの勝率ともにスーパースターのイヤニスは2年連続MVPを獲得した。然しバックスがそこでファイナルまで進出できなかったのには、彼にも責任がある。圧倒的な身体能力でディフェンダー相手に突進していくスタイルは、チームディフェンスが優れたチームには通用しなくなり、ジャンプショットが苦手な彼は止められてしまっていた。それだけでなく、シュート苦手、フリースローが苦手なこともあってか、試合の終盤に自らが得点を狙うことを怖がるようにも見えた。

 

今年も引き続きジャンプショットが得意なわけではないのだが、少しずつ上手くなってきている。特にポストアップからのターンアラウンドは安定してきており、何よりクラッチショットを自分から打つようになってきているマインドセットの変化が見られるのが進歩だと思う。また、ヘッドコーチと同じく、自らも適応力を鍛えており、自分が得意なこと以外にも積極的にチャレンジしている。個人的な感情も含むが、今年のイヤニスは一味違う活躍をしてくれる気がする。

 

<過酷なイーストプレイオフを勝ち抜けるか>

イーストのプレイオフの道はとっても厳しい。昨年のイースト王者のヒートをスイープしたといえ、次のカンファレンスセミファイナルでマッチアップするのは、99%の確率でブルックリン・ネッツである。ネッツはファイナル進出の最有力候補であり、デゥラント、ハーデン、カイリーという超強力Big3の爆発力は半端ない。加えて復活したブレイク・グリフィンやシューターのジョー・ハリスがおり、オフェンスが圧倒的なネッツはバックスにとっては最大の難関となる。多くの識者がこのシリーズはもつれると予想しているが、実際にレギュラーシーズンで3試合戦い、いずれも接戦であった。(ネッツはいずれの試合もBig3が揃ってはなかったのだが)

 

ネッツのオフェンスを止めることは不可能なのだが、バックスはリーグの中で最もマッチアップが可能なロスターをそろえてはいる。おそらく、ホリデーがカイリーにマッチアップし、そこをシャットダウンし、イヤニスやPJ・タッカーがKDと対峙し、少しはスローダウンさせられる気がする。となるとハーデンは好き勝手できるかもしれないが、3人のうち2人をスローダウンさせるだけで、かなりの効果があると思う。ハーデンをガードするであろうだった、ダンテ・ディヴィンチェンゾがケガをして残りのプレイオフ絶望となってしまったのは痛いが、それでも十分なディフェンス力は備えている。

 

一方ディフェンスがトップクラスではなく、リププロテクションが弱いネッツに対して、イヤニスは3試合とも30点以上稼いでいる。ハーデンとアービングは平均以下のディフェンダーであることも考えると、バックスがつけ入るスキは十分にあると思う。もちろんオフェンス力が圧倒的なネッツが有利なことには変わらず、オフェンス合戦になったらバックスは厳しいが、少しでもディフェンスで上回ることができれば、バックスが勝ち抜いても驚かない。

 

もし、ネッツとのバトルを制した場合に待っているのはシクサーズになるだろうが、シクサーズとのマッチアップも悪くない。シクサーズの大エースであるエンビードには、ブルック・ロペスとイヤニスがつけるし、それ以外で超強力なスコアラーがいないシクサーズ相手にバックスのディフェンスは機能するだろう。然し、シクサーズがネッツと違うのは、シクサーズにはベン・シモンズやエンビードなどトップクラスのディフェンダーがおり、バックスのオフェンスを抑え込むこともできる点である。ということで、このマッチアップはディフェンス合戦になりそうだが、ネッツに勝ったという勢いでバックスがそのままファイナルいく可能性が高いのではないかと予想する。

 

個人的にイヤニスのファンかつ、生え抜きのスターがミルウォーキーというスモールマーケットで優勝することを望んでしまうということもあり、バックスびいきの記事になってしまったが、真面目に彼らはチャンスがあると思う。チャンピオンシップを狙える期間は長いようで短い。今年3度目の正直となるか、非常に注目である。