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ベン・シモンズの問題とシクサーズはどうするか + NBAファイナル途中経過

どうも。とうとうNBAファイナルがはじまり、なかなか面白いシリーズとなっている。ここまで3戦が終わり、第1、2戦とも最終的なスコアは10点以上ついていたが、決してバックスとサンズで大きな力の差があるようには見えなかった。結果として第3戦はバックスの圧勝となり、第4戦次第では今後の行方はわからない。ただ引き続きサンズが優勢なことには変わりなく、先日プレビューをした際にも言及したが、総合力では確実にサンズの方が上で、弱点が少ないのが彼らの強みであり、ディアンドレ・エイトンがファールトラブルにならなければ、最終的には勝利する確率が高いと見る。

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一方バックスは、イヤニス以外の選手がステップアップしない限りは勝機は少ない。ホークスとのカンファレンスファイナルで膝をケガした際はシーズン絶望かと思われたイヤニスがわずか9日後のNBAファイナルに出場しているだけでもまさにGreek Freakなのに、2戦目の第3Qでマイケルジョーダン以来の1クオーター20点をあげたと思ったら、3戦目も41点と、まさに全盛期のシャックのような数字を叩き出しており、オフェンス・ディフェンスともに圧倒的な活躍である。にも関わらず、まだバックスが1勝しかできていないのでは、ホリデー、ミドルトンのアップダウンが激しすぎるからであり、彼らが残りどこまで安定して活躍ができるかでバックスの運命は決まる。

 

 

いずれにしてもこのファイナルでイヤニスが到達したレベルは歴史的であり、彼についてはまた別途記事にしたいと思う。私の予想は引き続きサンズの4-2だが、イヤニスがこの予想を覆してくれることをひそかに期待している。

 

さて、ファイナルはこれからの行方に注目していくとして、今回はトピックをガラッと変えて、オフシーズンに動きがあるだろうシクサーズのベン・シモンズのとトレードの可能性を探ってみたい。

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<トレード話の発端>

ご存じのとおり、今シーズン第1シードだったシクサーズはカンファレンス・セミファイナルで4-3でアトランタ・ホークスに負けてしまったわけだが、その戦犯となっているのが、元ドラフト1位のベン・シモンズである。彼のオフェンススキルのなさについては入団当初からずっと言われてきており、過去3回のプレイオフでも毎回大きな議論となっていたが、今シリーズでは特に彼の弱点が顕著に表れた。なんと対ホークスの合計7試合で、第4QのFGが3/3と7試合で僅か3本しかシュートを放ってないのである。(3本全部決めてはいるが。。。) しかもシリーズ終盤の第4戦以降は1回もシュートを打ってないというのは衝撃的なスタッツであり、一応チームNo.2の選手なのだから批判されても仕方がない。

 

更に、フリースローにいたっては、対アトランタのシリーズ合計15-45と僅か33%であり、これはもう全盛期のベン・ウォーレス並である。シュートも打たないわ、フリースローも決められないでは、接戦の試合の終盤にいる意味がなくなる。(HCのドック・リバースは最後まで使い続けたが)

 

<シモンズの問題>

シモンズのオフェンスにおける問題は色々あるのだが、何よりもシュートを一切打とうとしないのが致命的で、これはもはやメンタルの問題である。ボールを持っていたとしてもジャンプショットは決めらないし、フリースローを決めることができないからそもそもボールを持ちたくないのは見てて明らかであった。第7戦の超重要局面、ゴール下でワイドオープンでダンクができたのに、それをパスしたのはまさにこのメンタルの問題を顕著に表した象徴的なプレーであった。

 

では、なんで彼がこんなにオフェンスの自信を持てないのかというと、入団当初からスキルが全然向上していないからである。圧倒的なサイズと身体能力を持ち、トランジションではレブロンの全盛期のようなパワーとスピードですごい威力を発揮するのだが、じゃあハーフコートになった場合どうなるかというと、ジャンプショットは一切打たない、ポストプレーもできないのだからなかなか使い勝手が悪い。ポストアップは一応右手のフックショットがあるのだが、ジャンプショットについては先程の通りそもそも一切打とうとしない。メディアやファンはよく3ポイントに拘るが、3ポイントといわずフリースローエリアからのジャンプショットだけでも取得してくれたら大分スペースが広がるのだが。。。練習やたまーに放つジャンプショットを見る限り、それなりにスムーズなフォームではあるので、ほんとにメンタルブロックが一番強いのだとは思う。

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入団してもう5シーズン経ったのだが、入団当初から若干フックショットがよくなったぐらいで、ほぼバリエーションが増えていないのはとっても大きな問題である。実はこの原因の1つは、彼が左手の使い方が苦手だからじゃないかという説もある。実際のとこ、フックショットも常に右手だし、レイアップの7割ぐらいも右手なのである。そもそも彼は利き手は右手で、シモンズの父親が幼い時に、ベンを左手シューターにさせたのである。利き手とシューティングハンドが逆の選手はいるのだが (レブロンやウエストブルックは実は利き手が左で、ショットは右である) 、もしかしたらシモンズは逆にジャンプショットを利き手の右手にしたら、もっと自信を持てるようになるのかもしれない。

 

<シクサーズの問題>

シモンズのオフェンスについて、色々と批判してきたが、それ以外は素晴らしい選手なのである。上述のサイズと身体能力からレブロン級のクリエイティブなパスを出せるバスケセンスは、そう毎年現れる才能ではなく、それだけで各チームにとって価値がある。また、さっきからオフェンスの課題をずっと言っていたが、ディフェンスについては毎年向上しており、今年はDefensive Player of the Yearで第2位となったぐらい、PGからパワーフォワードまで様々なポジションをカバーできる能力はリーグでもトップクラスである。

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そんなシモンズの長所を最大限に生かすには、彼がメインプレーヤーとなって、周りにシューターを揃えてスプレッドアウトするというスタイルが必要になってくる。ただシクサーズジョエル・エンビードという今年のMVPでNo.2のセンターがペイントを陣取る。エンビードもソフトなタッチで3ポイントも全然決められるのだが、彼の強さはペイントにあり、巨体とパワーで圧倒できるだけでなく、ハキーム・オラジュワンのようなフットワークとジャンプショットを持つ革命的なセンターである。

 

エンビードとシモンズのフィットは昔からベストではないと言われてきたが、脇を固める選手のバランスでなんとか保たれてきた感はある。しかし、現在のシクサーズはペリメーターでオフェンスを作れる選手が少なく、トバイアス・ハリスはプレイオフで姿を消す傾向があり、セス・カリーは良いロールプレーヤーだが、彼がオフェンスの中心となるには荷が重すぎる。その為、プレイオフでは最終的にエンビードがオフェンスをひたすら作り出していたのだが、センターにそれを任せるのは酷だし、エンビードは昔からスタミナ不足で必ず第4Qに息切れしてしまう。(エンビードの怪我とコンディショニングもずっと入団時からの課題である)

 

現在どちらの選手がシクサーズにとってキーピースかとなると確実にエンビードであり、シクサーズロスターにはエンビードを支えるオフェンス力を持つ強力なウィングやガードが必要になる。その選手にシモンズが今すぐに成長することは100%ないので、となると彼をトレードするしかなくなるのである。

 

<トレードの可能性>

ただまたここで問題になるのが、シモンズのトレードバリューである。レギュラーシーズン中は、ディフェンスの飛躍もあり、おそらくこれまでで最も高いトレードバリューを持っていたはずだが、プレイオフに多くの人が失望し、かなり価値が下がってしまっている。彼を欲しがるチームと、シモンズをトレードしたことでシクサーズが得られる選手のレベルに乖離が生まれてしまうのが現状ではある。シーズン前にジェームズ・ハーデンがロケッツからトレードリクエストをしたときに、シクサーズはベン・シモンズともう一人の選手をオファーして、ほぼトレードが成立する寸前までいったぐらいシモンズの評価は高かったが、今じゃそんな話はできないであろう。

 

また、例えばついこの間までは、もしブレイザーズがデイミアン・リラードをトレードすることにしたら (現在トレードの噂あり)、シモンズが対価となっていただろうが、今はおそらくCJ・マコラムでないとトレードは成立しないだろう。ということで、ここで何個か個人的にあり得ると思われるトレードの可能性を考えてみたい。

 

1. ラプターズからカイル・ラウリー

このトレードはお互いにとって利益がありそうである。一昨年の優勝からチーム再建を狙うラプターズにとって、35歳のラウリーをキープする意味はあまりない。シクサーズにとっても、シモンズが担っていたプレイメイクに加えてシュート力を持つラウリーが入ればオフェンスのバランスもよくなる。ラウリーが高齢とはいえ、まだ2年ぐらいは活躍できると思われ、エンビードの全盛期を無駄にしない為には、あり得るトレードではないかと思う。

 

2. ブルズからザック・ラビーン

今年オールスターとなったラビーンの爆発的オフェンス力はシクサーズには大きなプラスとなるのは確実である。ただ、プレイメイクは下手なのでプラスでポイントガードの獲得は誰か必要にはなってくるだろう。逆にブルズがラビーンを手放すして、シモンズを取りたいかが微妙だが、オフェンスガードのコービー・ホワイトが既にいるのであり得なくはないと思う。

 

3. ペイサーズからマルコム・ブログドン

ちょっと格が下がってしまうが、現実的にはブログドンぐらいの選手の獲得になってしまう可能性もあるだろう。このトレードは実際に最近話があったとレポートされたぐらいである。ケガがちなのが欠点ではあるが、シュートもでき、ドライブもでき、ディフェンスも信頼できるブログドンの加入は確実にシクサーズにとってプラスとなる。ペイサーズにとってはスター選手を獲得できるチャンスではあるが、既にサボニスというローポストからのパスもうまいビッグマンがいる中で、シモンズが必要となるのかは疑問ではある。

 

4. スパーズからデマー・デローザン

2年連続プレイオフを逃し、とうとうチーム再建期を迎えているスパーズ。これから若手のチームにシフトしていく必要はあり、ベテランスターのデローザンをそろそろ放出するのではと個人的に考えている。シクサーズにとっても、ミッドレンジで一人でオフェンスを作り出せ、最近はプレイメイクのレベルも上がったデローザンはいいピースとなるのではないか。(3ポイントが打てないのが痛いが、、、) シモンズも名将グレッグ・ポポビッチの手にかかれば、何かが開花するのではと期待したい。

 

5. ブレイザーズからCJ・マコラム

上述したトレードで、マコラムはデローザンのように一人でオフェンスを作り出せるだけでなく、3ポイントも上手い。ディフェンスが弱くなるのが難点ではあるが、シクサーズが必要なスキルは持っている。ただもしブレイザーズがリラードをキープするなら、ボールが必要なシモンズとリラードのコンビが機能する気はしないので、可能性は低そうである。

 

6. キングスからディアロン・フォックス

キングスとのトレードではバディー・ヒールドの名があがっているが、彼はシューターなので、オフェンスを作り出すという意味ではちょっと違うかもしれない。であれば、ポイントガードのフォックスはどうかと思う。彼はシュートよりドライブが優れているが、ジャンプショットも年々向上しており、シクサーズとのフィットは悪くはないとは思う。キングスとしてもルーキーだったタイリース・ハルバートンが素晴らしい活躍を見せ、ポイントガード兼シューターの役割をこなるので、シモンズとのコンビでも十分存在感を見せられると思う。

 

色々とトレードの可能性を探ってきたが、シクサーズGMであるダリル・マレーはロケッツ時代に数々の大物トレードを実行してきた手腕があるかつ、今のロスターに満足しているわけはないので、オフシーズン何かしらの動きは必ず起こると思っている。彼らの動向には大注目である。