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NBA再開: 有力チーム注目キープレイヤー (ウエスト)

どうも。オーランドのバブルでレギュラーシーズンがとうとう開幕した。ファンがいない中、バーチャルファンが家から応援している画面が観客席の部分に流れたり、人工的なディフェンスの声援を使ったりと、少し見慣れない光景はもちろんあるが、概ね普段NBAを見るかのような雰囲気を味わえている気がする。またファンやゴール下にカメラマンがいないことで、逆に選手達も思い切りバスケットに向かって突っ込んだり、ルーズボールに大分したりと、意外な利点も見られたりしている。

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観客席に見えるバーチャルファン。ちょっと不自然な感じではある

試合についても多少Sloppyなところが見られるが、今のところ接戦続きで、終盤に目を離せなくなるエキサイティングな試合が多いのは大いに嬉しい。ジェームズ・ハーデンが49点出したと思ったら、まさかのペイサーズのTJ・ウォーレンが3ポイントを炸裂させまくって53点たたき出したりと面白い試合続きである。(ウォーレンは数年前まで3ポイントが苦手だった) プレイオフになったらより詳しく試合内容についてもまとめていこうと思っているが、今回は先週に続きプレイオフで少しでもチャンスあるチームのキープレイヤーを独断で決めていきたい。本日はウエスト篇!イーストの注目選手は前回の記事をご参照。

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【ウエスト】

1. ロサンゼルス・レイカーズ

- カイル・クーズマ -

レイカーズがウエスト1位の座についてる原動力は言うまでもなく、レブロン・ジェームズとアンソニーデイビスのスーパースターコンボである。今年はポイントガードとしてリーグ1位のアシストを記録しているレブロンは17年目とは思えないコンディショニングでオフェンスを牽引するだけでなく、ずいぶん久しぶりにレギュラーシーズンでディフェンスも頑張っている。今年加入したアンソニーデイビスレブロンのチームワークも非常に機能しており、ビッグマンらしからぬシュート力とクイックネスでデイビスを1 on 1で止められるディフェンダーはいない。オフェンスの大半はこの2人が中心となり、後はスターと呼べる選手はいないが、そこで重要となるのが第3のスコアラーである。レブロンデイビスのどちらかが不調になった時に、ステップアップしてオフェンスを作り出すことができるのはクーズマが最有力であろう。シュート力がぱっと見ほど実は高くない彼ではあるが、ドライブからのフックショットやミッドレンジで自分で得点を作ることができ、緊迫した場面でも躊躇しない度胸は何よりプレイオフで必要になってくる。今年のウエストはレイカーズか、選手層の厚いクリッパーズの2強となると見られているが、2人のTop10プレイヤーを支える活躍がクーズマができるかによって、レブロンが3チーム目でのタイトル獲得ができるかに大きく影響するだろう。

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2. ロサンゼルス・クリッパーズ

- モントレズ・ハレル -

昨年はスーパースターがいない中、ハッスルプレーとチームワークで予想以上の成績を残したクリッパーズだが、今年は昨年ラプターズでFinals MVPを獲得したクワイ・レナードとTop10レベルのプレーヤーであるポール・ジョージがトレードで加入したことで、シーズン開始前に優勝候補の筆頭候補に成りあがった。然し、シーズン再開前後は前途多難であり、前回の記事で書いたようにルー・ウィリアムズがバブルを離れてストリップクラブに行ったり、パトリック・ビバリーが1回バブルから離れて戻ってきたばっかりである。そして、キープレイヤーに挙げたハレルは、祖母がお亡くなりになられたことで現在もオーランドに戻ってきていない。彼が復帰するタイミングはプレイオフ直前になる可能性が高いが、ズバッチ以外は他に有力なビッグマンがいない中で、ハレルのコート上の活躍はデイビズや二コラ・ヨキッチ、ゴルベアといったビッグプレイヤーがいるウエストで勝ち抜いていくには欠かせない。2メートル3センチというゴール下のプレイヤーとしては身長が低いが、ハレルの特徴はそのハッスルプレーであり、自分より大きい相手からリバウンドを奪い取ったり、激しいダンクをするといった彼のエネルギーがチームの起爆剤となっている。また、同じベンチプレーヤーとして、試合の途中から行うルー・ウィリアムズとのピックアンドロールの息は抜群で、ベンチから大量の得点を生んでいる。身長差では不利のハレルが、特に対レイカーズとのマッチアップでデイビスを少しでも抑え込むことができるかによってクリッパーズの優勝のチャンスが見えてくるはずである。

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3. デンバー・ナゲッツ

- ジャマール・マレー -

ナゲッツは面白いチームである。ロスターだけ見ると、あれ、見た目より勝率いいのはなんでだろうと思ったりする。誰もが知っているス―パスターがいるわけではなく、他にオールスターもいない。ベストプレイヤーの二コラ・ヨキッチの一番のすごさはパスであり、ビッグマンとしてはおそらく史上最高のパサーに数えられる。この天性のパサーは素晴らしい選手ではあるが、コンスタントに30点を取るタイプではない。そこで彼がスコアリングに気が向いてない時に誰が得点を取りに行くかがナゲッツが勝ち抜いていくカギになる。その第1候補はここ2年ぐらい、ジャマール・マレーとなっている。今年で4年目の彼は常にそのポテンシャルを期待されており、長距離シュートを活かして点を稼ぐときの爆発力は目を見張るものがあるが、ムラが激しいことがプロになってからずっと課題となっている。昨年のプレイオフでも才能の片鱗は見せたが、コンスタントの活躍ができなかった。今シーズンも引き続きアップダウンが見らており懸念はあるが、他にオフェンスのクリエイターがルーキーのマイケル・ポーターJrしかいないチームにおいて、ヨキッチのプレッシャーを取るにはマレーのコンスタントな貢献が欠かせない。自分のプレーに絶対的な自信を持った態度を見せつけることが好きな彼が、それをプレーで実証できるかによって、レギュラーシーズンだけ強いチームというレッテルを張られているナゲッツが一皮むけるかどうかが決まってくる。

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4. ユタ・ジャズ

- マイク・コンリー -

ジャズもナゲッツと同じく圧倒的なス―パスターはおらず、3年目のスコアラーのドノバン・ミッチェルと、過去2年間のDefensive Player of the Yearのルディ・ゴルベアを中心にチームディフェンスとバランスの取れたオフェンスでウエストの強豪の1つとなった。過去2年間プレイオフヒューストン・ロケッツに敗れたジャズは、オフシーズンにメンフィスから正統派ポイントガードのマイク・コンリーとシュート力に長けたボヤン・ボグダノビッチを獲得して、ダークホース優勝候補ともなっていた。然し、コンリーはメンフィス時代のような安定した成績を残すことができず、チームのフィットの問題から途中でベンチスタートになったり、試行錯誤のシーズンとなった。主要スタッツは軒並みここ7年ぐらいで最低であり、ミッチェルやボグダノビッチがボールハンドリングすることも多い環境にアジャストするのに苦労しているようであった。ジャズはNBAコロナ感染者第一号となったゴルベアとミッチェルの仲が悪くなったというニュースや、コンリーと違い安定した活躍でミッチェルに次ぐ得点源となっていたボグダノビッチがケガの手術をすることを決めてプレイオフに出場できなかったりと、逆風が吹いている。そんな状況を打開するには、コンリーが少しでも本来の姿を取り戻して、チームを落ち着かせるしたプレイメイク、相手をシャットダウンできるディフェンス、そして利き手と反対の右手を自由自在に使うフローターでチームを支えることができるかどうかによって、ジャズが10年以上ぶりのカンファレンスファイナルに進出するか、1回戦で敗退するかの命運が決まる。

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5. ヒューストン・ロケッツ

- PJ・タッカー -

GMのダリル・モレ―が築いたポイントとレイアップ、フリースローのみにフォーカスしたロケッツのアナリティクスバスケは今年も健在で、エースのジェームズ・ハーデンはシーズン当初からステップバック3ポイントと大量のフリースローで平均40得点近い爆発的な活躍をした。(そして、他のプレーヤーはひたすら3ポイントラインでハーデンのパスを待つ) 但し、今年から加入した元MVPのラッセル・ウエストブルックは3ポイントが決まらない為、スペーシングを作ることができず、シーズン前半は思うような活躍ができていなかった。そんなロケッツの起爆剤として、モレ―は大胆なトレードに踏み切り、センターのクリント・カペラをトレードしたのだ。これによりロケッツのほとんどの選手は大ベテランのタイソン・チャンドラーを除いてほぼ2メートル5センチ以下の選手達の集まりとなった。必ず毎試合出場するビッグマンが一人もいないチームはNBA史上今年のロケッツがはじめてとなり、どんどんとSmall Ballが進むNBAでもさすがに大胆すぎるという意見が多かった。蓋を開けてみると、ゴール下に陣取るビッグマンがいなくなったことで、特にウエストブルックがアタックするスペースが広がり、オフェンスのレベルは更に高まった。ディフェンスにおいては、本来のセンターがいないという状況で、実質のビッグマン役を担うのは196センチのPJ・タッカーである。ルーキーシーズンの後海外で5年間プレーした後にNBAに戻ってきた苦労人のタッカーは、フォワードとして身長が低めながら、闘志とハッスルプレーによってリーグでも屈指のディフェンダー件、コーナー3ポイントの名手となった。カペラがいない今、タッカーがヨキッチやデイビスといったスタービッグマンをガードする必要があり、更にリバウンドも取らなければいけない。(当然ではあるが、ロケッツはリバウンド数でリーグ最低クラスである) 既に35歳の彼にとってはとても負担がかかるタスクとなるが、オフェンスだけでは勝てないのがプレイオフ。過去5年プレイオフでウォーリアーズに負け続けたロケッツが、ファイナルに行くチャンスがあるかは、タッカーの身長の差を補う頭脳とハッスルプレーによって、どこまでロケッツのディフェンスのレベルを高められるかにかかっている。

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6. オクラホマシティ・サンダー

- クリス・ポール -

昨年のオフシーズンに10年以上チームの大スターだったラッセル・ウエストブルックをロケッツにトレードして、サンダーが獲得したのは希代のポイントガードクリス・ポールであった。年も重ね、ロケッツのチームメイトのハーデンと最後はうまくいかず、ロケッツ時代に契約した超大型サラリーのせいでトレード不可能と言われ、どこのチームも欲しがっていなかったが、ドラフトピックを貰えるのを見越してサンダーは獲得に踏み切った。ポール以外にスター選手はいなく、2年目のシェイ・ギルジアス=アレクサンダーや、シューターかつクリエイターのダニロ・ガリナリ、6thマンのデニス・シュルーダーといった選手が脇を固めるチームでポールのみがオールスター選手である。その為、今年のプレイオフ進出候補には入っていなかった。シーズン序盤は下馬評通り低迷していたが、12月頃から一気に強くなり、特に接戦の試合でのクラッチ力によって勝率を挙げていった。そのクラッチパフォーマンスの立役者は言わずもがなポールであり、緊迫する場面で何度も歴代最高クラスのミッドレンジショットを決めて勝利をもぎ取った。ポールが素晴らしいリーダーであることは知られているが、自分にも相手にも非常に厳しい性格が災いして、クリッパーズやロケッツ時代は何人かの選手との衝突も見られたが、サンダーが若いチームであることもあってか、ポールの強烈なリーダーシップスタイルによって、チームがまとまっているように見られる。そのまとまりとミスの少ないプレースタイルから、レイカーズクリッパーズの次に最も安定したウエストのチームはサンダーでないかと思えるほどである。歴代屈指のポイントガードでありながら、未だにファイナルに進出したことはなく、これまでに何度もプレイオフで自分のミスやケガで苦い経験をしてきただけに、チーム唯一のスターとしてどこまで躍進できるかは、ポールのNBAの歴史におけるポジションを左右することになるだろう。

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7. ダラス・マーベリックス

- ルーカ・ドンチッチ -

レイオフでシリーズに勝つ可能性があるチーム最後は現在7位のマブスだが、このチームが6割近い勝率を保っている絶対的な理由はまだ2年目のスーパースター、ルーカ・ドンチッチである。もちろん名将リック・カーライルや、ケガから復帰したユニコーンことクリスタプス・ポルジンギスのシュート力とリム下のディフェンス、バランスの取れた布陣も揃っているが、そのコマを動かすのは全てルーカ次第である。まだアメリカでお酒を飲める年齢になったばかりの彼は、NBA史上最高の2年目のシーズンを送ったと言えるはずである。決して身体能力が突出しているわけではないが、巧みなドリブルスキルと天性的なパス能力で、平均29得点に加えて、アシストも9つ近く、リバウンドも9つ以上、Advanced Statsでも圧倒的な成績で一気にトップクラスの選手へと駆け上がった。オフェンスでは、基本彼がボールを持ち、得意のステップバック3ポイントやチームメイトへのピンポイントなパスでオフェンスを作りだし、マブスはレギュラーシーズンのOffensive Efficiencyでリーグ1位となった。つまりマブスがシリーズで勝つチャンスがあるかは、ルーカがコンスタントに活躍できるか否かで100%決まるといっても過言ではない。初のプレイオフであることには変わりないが、NBAに来る前に19歳の年齢でヨーロッパのユーロリーグでMVPに輝いた彼にプレッシャーは特にないはずである。

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メンフィスと8位シードを争うポートランド・トレイルブレイザーズがもしプレイオフに進出したら、彼らも大いにチャンスがある。コロナ前はけが人だらけで昨年カンファレンスファイナルに進出したような成績を残せなかったが、4か月の休みを得て、今はフルロスターが揃った状態であり、これからどこまで差を縮めることができるか注目していきたい。

NBA再開: 有力チーム注目キープレイヤー (イースト)

どうも。3月11日にユタ・ジャズのルディ・ゴルベアがコロナを発症して、NBAがシャットダウンしてから4か月以上が経ったが、今週日本時間7月31日にやっとシーズンが再開する。今月途中からフロリダのオーランドで、選手や関係者を1つの場所に集めるシステムを作り、先週からは練習試合も始まっている。このオーランドのバブルに来た場合は、最低4日誰とも会えずに隔離され、関係者全員毎日検査を必ずし、敷地内を勝手に出た場合は罰則を設けるといった徹底的な対策を行っていることで、今のところバブルからのコロナ感染者はゼロという素晴らしい実績を残している。(アメリカ全体のひどいコロナ対策を見たらすごい事である)

ちなみにLA クリッパーズのルー・ウィリアムズは友人家族の葬式の為に、先週バブルから一時的に出た後、ついでにストリップクラブにいったことが今週発覚し、通常より長く10日間隔離という制裁を受け、2試合出ることができなくなってしまった。ウィリアムズの地元アトランタで有名なMagic Cityというストリップクラブに行った理由は、なんとチキンウィングを食べたからったというからレベルが高すぎである。(ただウィリアムズが夜の街のレジェンドがであることは知られた話で、驚くほどでもないかもしれないが) 

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NBA選手達の間でも人気の高いウィリアムズ

 

話がそれてしまったが、順調にシーズン開幕に向けて動きが活発になっている中で、やはり気になるのはどのチームがファイナルに進出するかであろう。そこで今回と次回の記事ではレイオフで少しでも勝ち抜くチャンスのあるチーム (イースト6チーム、ウエスト7チーム) のキープレイヤーを一人ずつ独断と偏見で紹介していきたい。(マジック、ネッツ、ウィザーズ、グリズリーズペリカンズ、サンズ、スパーズ、キングスは対象外) まずはイーストから6チームのキープレイヤーの発表する。

またちなみにだが、オーランドのバブルの構成と、フォーマット、参加チームは以前の記事をご参照。

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イースト】

1. ミルウォーキー・バックス

- クリス・ミドルトン -

リーグ最高勝率を残したバックスの最も重要な選手は言うまでもなく、イヤニスであり、2年連続MVPと今年はDefensive Player of the Yearの最有力候補でもある。ただそんな彼を支えるNo.2のミドルトンのプレイオフでの活躍はバックスが優勝するには欠かせない。イヤニスの最大の弱みはジャンプショット力であり、ディフェンスがタイトになり、彼のペネトレーションに対してディフェンダーが何人か集まってきた時に、神がかり的な身体能力でもその壁を突破できなくなる。昨年のプレイオフイースタンカンファレンスファイナルで、ラプターズ相手の最後の2試合は、ジャンプショットが決められず、得点機会を作り出せない為に、自分がボールを持つことを怖がっているように見えた。もちろんイヤニスも向上はしているが、未だに1 on 1からドリブルしてアウトサイドショットを決めることはできない。そんな中で、優勝チームの2番手としては弱すぎるのではないかと指摘はされるが、ミドルトンのロングレンジからの3pt、ドリブルによってディフェンダーをかわしてのミッドレンジで得点を作り出せる能力は、イヤニスが封じられた時の対抗としてバックスが最も頼りにする武器となる。レギュラーシーズンで20点前後だった平均得点をプレイオフで25点~30点まで上げることができるか否かで、バックスの今年がファイナルに進出できるか、そしてその結果次第では、来年フリーエージェントになるイヤニスの今後の動きにも大きく影響していくだろう。

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2. トロント・ラプターズ

- パスカル・シアカム -

 昨年の優勝チームのトロント・ラプターズは今年も強かった。Coach of the Yearの最有力候補のニック・ナースの奇抜なディフェンス戦法や試合毎に変える采配方針による所も大きいが、Finals MVPのレナードが抜けた中でイースト2位の勝率を残したのは各選手がステップアップしたことだけでなく、Championとしての意地も十分にあっただろう。そんな中で、一番の成長をしたのはパスカル・シアカムである。昨年MIP (Most Improved Year) 受賞した彼だが、今年も更に飛躍をし、昨年の平均17得点から今年は24点近くまで伸ばし、ラプターズのエースとなった。ジャンプショットについてははまだ彼のベストウェポンとは言えないが、ポストアップやドライブからのフェイクを入れたり、スピンムーブからのゴール近場でのフィニッシュに長けており、確実に得点を取ることができる。昨年プレイオフでは、試合の終盤は常にレナードがボールを持っており、シアカムは上記のイヤニスと同じく、クラッチタイムでシュートすることを怖がっているようであった。ボールが回ってきた時はすぐに手放していたのは印象的であった。今年はクローザーの役目をシアカムが行う必要があり、どこまで度胸を持ってチームを引っ張れるか見ものである。

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3. ボストン・セルティックス

- ジェイソン・テイタム -

昨年はカイリー・アービングとのケミストリー問題が深刻化し、プレイオフではバックスにこてんぱんにされたセルティックスだが、今年はカイリーが去り、代わりにNBA屈指のナイスガイであるケンバ・ウォーカーが加入したことで、チーム仲も向上してリーグ3位の成績を残している。一見順調に見えるが、ケガによる懸念はあり、シーズン途中で膝を痛めたケンバはコロナ期間でしばらく休みがあったにも関わらず、今でも膝が本調子でないと言っている。またゴードン・ヘイワードは、2年前のケガから今年の序盤はやっと元の姿に戻ってきたように思えたが、シーズン中盤に腕を骨折後はまた感覚を忘れてしまったかのようなプレーも見せていた。そんな苦境がある中で今年目覚ましく飛躍したのは3年目のジェイソン・テイタムである。ルーキーシーズンにプレイオフで活躍をし、ス―パスターの片鱗は見せていたが、去年は苦戦し、バスケットにドライブせず、ミッドレンジショットばかり打ってチーム内外から批判を受けた。今年もシーズン序盤は波が激しかったが、オールスター前後から覚醒したかよのうに連続して30得点前後をたたきだすようになり、ケガで不在であったケンバの代わりにエースの座についた。リム下のフィニッシュ力も向上し、3ptもより正確になり、クロスオーバーから横にステップバックしての長距離シュートは彼の代名詞となってきている。加えてディフェンス力も高まり、同じウィングのジェイレン・ブラウン、マーカス・スマートらと強固なディフェンスを築いている。プレイオフでも物怖じしないのは1年目に証明しているが、今年は真のエースとしてスーパースターに駆け上がるか楽しみである。

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4. マイアミ・ヒー

- バム・アデバヨ -

レブロン移籍後、ヘッドコーチのエリック・スポールストラの指揮を筆頭にチームの底力でプレイオフ進出をここ数年続けていたヒートだが、今年はFAでスターのジミー・バトラーを獲得し、ケンドリック・ナンやダンカン・ロビンソンといった昨年まで完全無名だった選手の躍進もあり、侮ることができないチームの1つとなっている。もちろんバトラーの存在も大きいが、マイアミで最も重要な選手は実はバム・アデバヨではないかと思う。バムもテイタムと同じ3年目の選手となるが、昨年から主要カテゴリーで大きく数字を伸ばし、オールスターにも選ばれて、MIP候補にもなっている。彼はリーグでもトップクラスのディフェンス力を持っており、バックスのイヤニスが最も手を焼く相手かもしれない。イヤニスほどではないものの、身長の割に非常に機敏でありながらパワーも兼ね添えている為、彼はイヤニスの得意な部分を一定封じ込めることができる。実際に3月に対戦した時はバムが中心となってヒートディフェンスが奮闘し、イヤニスが珍しく精彩を欠いていた。そんなバムのディフェンス以上に注目すべきは、彼のポイントセンターとしての役割である。今年は時にボール運びから、チームメイトのセットアップまで任されるようになり、ウォーリアーズのドレイモンド・グリーンに近い役割を果たしている。グリーンの方がまだパスのレベルは高いが、バムを中心としたオフェンスの動きがプレイオフでどこまで通用するのかが気になるところである。

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5. フィラデルフィア・セブンティシクサーズ

- ジョエル・エンビード -

正直チームのベストプレイヤーであるエンビードシクサーズのキープレイヤーとするのは当たり前すぎて躊躇したが、シクサーズの命運はまさに彼が握っているので選ばせてもらった。エンビードは言うまでもなくインサイドの支配力でいえば現在のNBAで一番であり、フットワークと柔らかいタッチのジャンプショットも使いながら、彼がノっている試合ではまさにアンストッパブルな状態となる。ディフェンスにおいても本気になればペイントを圧倒することができ、対ビッグマンとの1 on 1だけでなく、ヘルプディフェンスでも優秀である。然し、レギュラーシーズンでも過去2年間のプレイオフでも彼の課題となっているのはコンディショニングである。その為、プレー時間が必然的に長くなるプレイオフの試合では最後に息切れしたり、試合毎の波も激しい。今年は更に昨年と比べて軒並み個人成績が落ちており、Defensive Player of the Yearの候補に挙がったディフェンス力も少し影をひそめている。ジャンプショットを全く打たないベン・シモンズを筆頭に、自分でオフェンスを作り出すことができる選手が少ないシクサーズは非常にいびつなチームであり、そこでエンビードがどれだけコンスタントに毎試合活躍することができるかがシクサーズが3年連続カンファレンスセミファイナル止まりとなるか、それ以上の成績を残せるかのカギとなると考えられる。本気を出した時にはリーグのTop5レベルのポテンシャルを持っているだけに、今年のプレイオフではその力を存分に発揮してもらいたい。(そして得意でもない3ptの無駄うちも抑えてほしい)

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6. インディアナ・ペイサーズ

- ビクター・オラディポ -

結局最後もチームのベストプレイヤーとなってしまったが、ペイサーズがプレイオフシリーズに勝利する可能性はオラディポが2年前の輝きを取り戻せるかによって決まるといっても過言ではない。昨シーズンの途中で大ケガを負い、1年以上のリハビリによって今シーズンの中盤に戻ってきたが、正直なところ動きが鈍く、過去の瞬発力を活かしたプレーからは程遠かった。彼がいない間もPFのドマンタス・サボニスの台頭 (フットワークがすごい) や、バックスから加入したマルコム・ブログドンの安定したプレー、サンズから加入したT.J・ウォーレンのスコアリングによってイーストの3位争いにしばらく加わっていたが、オラディポが戻ってきた際にアジャストする必要があったことで、勝てる試合も何試合か落としていた。だからといって彼がいることでチームのレベルが下がるという事ではなく、本来の姿に少しでも近づいたら、得点が必要な場面でシュートを決められるクラッチ力、ガードの中でもトップクラスのディフェンス力によって、チームの総合力は確実に上がるはずである。逆に彼の不調が続けば、チームの爆発力が薄まってしまうのは目に見えている。実は元々はケガから復帰したばかりということもあり、今回のバブルには参加しないと表明していたが、コロナや今ケガしている場合でない限り、サラリーから給料が引かれるということをNBAから告げられ、辞退を撤回したという経緯もある。この決断によってチームのケミストリーにどの程度影響したかは分からないが、本意でない中参加したことによって、果たして彼が100%のプレーをするか、そもそも100%に近いパフォーマンスができる体なのかは、チームの今後のオフシーズンの動きも含めて要注目である。個人的には彼がスクリーンをうまく使ってドライブする、もしくはミッドレンジでジャンプショットを放つ姿を是非見てみたい。

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NBA最強インゲームダンカーランキング TOP15 <5位~1位>

どうも。前回の投稿から大分時間経ってしまったが、NBA最強インゲームダンカーランキングも最後のTop5まできた。ここに入ってくるのはダンクといえばと考えたときに真っ先に思い浮かぶ選手達である。直近のスーパースター達はTop5にはいないが、現在のスターに大きな影響を与えていることは間違いない。

Top15~Top6までは前回までの別記事をご参照。

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No.5 ショーン・ケンプ

破壊力という言葉がこれほど相応しいダンカーは過去にも今後にもショーン・ケンプを超える存在は出てこないだろう。2メートル8センチの身長と圧倒的なパワーを持ちながら、同時にCoast To Coastで自分でドリブルしながら相手を突っ切るスピードとリムから飛び出るジャンプ力を兼ね備えていた。パワーフォーワードの選手で空中の戦いを得意分野としたのは、ケンプがNBA史上初であると思う。

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Top10入りしたブレイク・グリフィンやアマーレ・スタウダマイアーも似たような体格と身体能力を持っていたが、ケンプの支配力には及ばない。何よりケンプはディフェンダーの恥をかかせてやろうという気持ちが誰よりも強く、クールなダンクをかます度に、ガッツポーズやディフェンダーをTaunting (相手を睨みつけて威圧すること) をしていた。そういった行為がすぐに罰せられる現在のNBAでは、ケンプはテクニカルファールだらけになってしまうのではないか。ケンプのNo.1ダンクと言われるアルトン・リスター越しのフェイシャルダンクを決めた後は、リスターに向かって指を指して馬鹿にしているのは有名だが、これも今のNBAではご法度になるだろう。

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リスターを指さしするケンプ

そんなケンプはトゥルー・ショーマンであり、チームメイトであったゲイリー・ペイントのアリウープお家芸であった。ブレイク・グリフィン (+ディアンドレ・ジョーダン) とクリス・ポールアリウープを連発し、Lob City (ロブはアリウープのパスのこと) と言われて人気だったが、オリジナルLob Cityはケンプとペイトンのコンビであることに間違いない。

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No.4 ジュリアス・アービング

ケンプがパワーフォードダンカーの先駆者であれば、近代NBAのダンクそのもののパイオニアはDr. Jことジュリアス・アービングである。ダンクをただ単に得点を稼ぐ手法ではなく、スタイリッシュなものとしたのはアービングが最初であり、その後のジョーダンやヴィンス・カーターといった選手にも多大な影響を与えた。彼の全盛期は70年代だったが、NBAのライバルであったABA (NBAに対抗してエンターテイメント性を重視したリーグ。後にNBAと統合) に所属していた為、全国区の知名度はなかった。然し、バスケットボール界では最もエキサイティングな選手として有名となっており、アフロヘア―をなびかせながら、アクロバティックなプレーをいくつも繰り出し、何事もなかったかのように常に冷静に振る舞う姿はまさに"クール"のひと言である。

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Dr. Jが片手のトマホークダンクをいつもかっこよく決めることができたのは、尋常じゃない手の大きさも影響している。その手のデカさによって、自由自在にボールを掴むことができ、ボールを掴みながら右手を振りかざすような動きができた。彼の有名なダンクであるRock the Baby (子供をあやかすかのように手が動いているとうこと) も彼の手の大きさとナチュラルな優雅な動きによって生み出された史上最高のダンクの1つである。しかもこの時既に30代半ばであるから驚きである。

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ちなみにであるが、今では有名になっているスラムダンクコンテストでのフリースローダンクを最初に決めたのもアービングである。ABA時代の史上初のスラムダンクコンテストでアービングが披露したダンクは、後にジョーダンによって更に有名になった。ダンクについての歴史上の功績は計り知れないものがあり、Dr. Jはダンク界のゴッドファーザーと言えるであろう。

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No.3 マイケル・ジョーダン

アービングがダンクの先駆者であれば、ダンクを世界中に広めたのは、史上最高のバスケットボール選手であるジョーダンであろう。マジック・ジョンソンとラリー・バードという2人のビッグネームがパスを中心に地上戦でNBAを支配していた80年代に、空中戦を持ち込んだのはジョーダンである。ジョーダンのダンクはアービングに似ている部分が多く、片足踏切から滞空時間が長く、まさに宙を舞っているかのような姿は美しい限りである。ジョーダンもまた手が非常に大きく、片手でボールを掴むことができたことも、その華麗さを際立たせており、彼もRock the Babyを試合中に何度も披露している。(あくまでオープンコートでディフェンダーがいない時にではあったが)

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有名なフリスローダンクの美しい画像

ジョーダンをベストプレイヤーへと押し上げた、相手を打ち負かしてやるという病気ともいえる競争心はダンクの場面でも十分に発揮され、目の前に立ちはだかるディフェンダーに向かって突っ込んでいくようにフェイシャルダンクを何回も決めている。(同時に彼の舌も毎回ディフェンダーに向かって尖がって突きつけられていた)

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ジョーダン史上ベストのダンクは、1991年のプレイオフで宿敵のニューヨーク・ニックス相手に繰り出したベースライン上のダンクである。ダンクそのものもすごいのだが、その前に2人のディフェンダーをボールフェイクで見事にかわして、最後に締めとしてセンターのパトリック・ユーイングの上からダンクを決めたのである。クロスオーバー、ダンクを組み入れたトータルパッケージのムーブかつ、プレイオフで披露されたという観点で、史上最高のダンクTop3に入ると思う。

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No.2 ドミニク・ウィルキンス

ジョーダンが80年代~90年代初頭のベストダンカーだという声は強いかもしれないが、私的にはドミニクの方が若干上回ると思う。ヒューマンハイライトフィルムというあだ名のドミニクはジョーダンと同時期に活躍した選手であった為、プレイヤーとしてもダンカーとしても常に比較され続け、ジョーダンの陰に隠れがちであったが、ダンクのスタイルは対照的である。ジョーダンは滞空時間と優雅さが特徴的だったのに対して、ドミニクは常に2本足ジャンプから踏み切る超人的なスピードとパワーで相手を圧倒した。そういった意味で、今回のTop10に入っているジェイソン・リチャードソンと似ている部分が多いが、リチャードソンと比較してもリムを破壊するのではないかというぐらいのパワーが全く違う。

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ドミニクは目の前にディフェンダーがいようがおかいまなく、空中でパンプフェイク入れながらダンクをしたり、正面から相手の心を傷つけるようなプレーを連発した。何より彼はダンクをすること自体に非常に誇りを持っており、少しでもスキがあればウィンドミルや360といったコンテストで行うようなダンクも試合中で見せていた。スラムダンクコンテストに史上最多の5回出場しているあたりも、ドミニクのダンクへの拘りが見れる。彼のダンクはまさにFuriousという言葉がぴったりであり、レブロンやケンプのパワーと、コービーやマグレディのクリエイティビティが合わさっている。

そんなドミニクのベストダンクも、ジョーダンと同じくベースライン上のものである。ポストアップでボールを受け取ってから、体の方向がサイドになり、ディフェンダーに空中でぶるかりながら、ダブルクラッチで相手の上からパワーダンクを繰り出せるのはNBAの歴史でもドミニクしかいないかもしれない。しかも残り40秒の接戦という緊迫した中で、瞬時の動きで相手の上からダンクを決めようという事自体が、ドミニクのマインドセットと創造性を強く表していると思う。

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No.1 ヴィンス・カーター

説明不要の史上最高のダンカー。ダンクのどんな観点からも彼を超える人はいない。以前の記事で彼のダンクがどれほど凄いか記載しているので、是非ご覧頂きたい。

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NBA最強インゲームダンカーランキング TOP15 <10位~6位>

どうも。前回に引き続きNBAの歴史で最も凄いインゲームダンカーのランキングTop15の続きを発表していきたい。今回は10位~6位についてまとめいる。15位~11位については下記記事をご参照。

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No.10 ブレイク・グリフィン

ブレイク・グリフィンがルーキーで登場してきた時 (1年目のシーズンは一度も出場しなかったので、正確には2年目だが) の衝撃は今でも覚えている。2メートル6センチでかつ筋肉モリモリの体で、リムから頭が飛び出るようなダンクを何度も繰り出し、一気にMust Seeプレイヤーとなった。決してウィングスパンが長いわけではないが、それを補う跳躍力とパワーで瞬く間に史上最高のスラムダンカーの一人に躍り出たのである。ビッグマンとしてはドリブルもうまい為、Coast to Coastもでき、アリウープウィンドミルを繰り出すことも多く、更に利き手と反対の左手に空中に切り替えてダンクすることもできた身体能力とバランス感覚は突出するものがあった。

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ブレイクにの人気はTwitter等のソーシャルメディアの台頭によって一気に広まり、SNSの恩恵を最も受けた選手の一人と言えるであろう。彼が試合で強烈なダンクをすると瞬く間に拡散され、私の友達の間でもよく話題になった。但し、ブレイクのダンクにいちゃもんをつけるとすると、彼は左手を使ってディフェンダーの体をプッシュする傾向がある。彼のベストのダンクの多くはオフハンドで相手がジャンプしづらくしている。つまり見方によればオフェンシブファウルである。そこがマイナスポイントなりブレイクのランクはTop10どまりとなった。

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明らかに左手でパウ・ガソルを押している

 

No.9 アマレ・スターダマイヤー

アメリカのブログに出ている歴代ダンカーランキングとかを見るとアマレがTop10に入っていることはほとんどないし、え、なんでそんなに高いの?と思われる方もいるかもしれないが、個人的にはアマレは迷うことなく歴代最高パワーダンカーの一人である。ブレイクのようなスピードと跳躍力と持ち、更により相手を圧倒する力が加わったイメージであろうか。アマレの全盛期にSNSがもっと流行っていたら彼のダンクのすごさがより人々の記憶に残っていたかもしれない。

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ブレイクと同じくケガに悩まされた為、全盛期は短かったが、フェニックス・サンズ時代にスティーブ・ナッシュとの完璧なピック&ロールからのアマレのダンクはまさにアートであった。

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アマレはウィンドミルのような高度なダンクを試合中にすることは少なかったが、フェイシャルダンクの多さは歴代屈指である。そんな彼の最高傑作が対ウォーリアズ戦に決めたものであり、史上最高のダンクの1つであると思う。

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No.8 ジェイソン・リチャードソン

J-Rich (リチャードソンのニックネーム) といえば両足ダンクである。彼のダンクはほぼいつも両足踏切から始まり、リムに届くまでのスピードが尋常ではなかった。同じシューティングガードでも、J-Richはヴィンスやジョーダンのように空中を美しく舞うのではなく、スピードとパワーが強調されたダンクが特徴的であり、ダンカーとしては後に出てくるドミニク・ウィルキンスの後継者であると言えると思う。

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リチャードソンが尊敬されるべきところは、オープンコートでフリーな状態の場合は常に360やウィンドミルダンクコンテストのような質の高さで決めていたところである。同じ状況で無理せずに軽くダンクを決めるだけの選手も多いが、彼は常にエンターテイナーであることを忘れなかった。

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No.7 レブロン・ジェームズ

レブロンはパス能力、バスケットボールIQ、得点力だけでも偉大な選手になっていたかろうと思うが、彼を歴代ベストプレイヤーの一人に押し上げたのは、NBA史上最高レベルの運動神経と肉体が大きな役割を担っている。ヤニスやジョーダン、ウィルト・チェンバレン、シャック、デビッド・ロビンソン、ラッセル・ウエストブルックといった驚異的な身体能力を持った選手は他にもいるが、その中でもレブロンが最も恵まれた才能を持っていると思う。それはダンクにも十分に生かされ、スピード、迫力、パワーが合わさった爆発的なダンクは35歳になった今でもディフェンダーを圧倒する。ただ、たまに彼が最初にキャバリアーズにいた時代 (リーグに入ってからの最初の7年間) のハイライトを見ると、改めて尋常じゃない身体能力に驚からされる。

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レブロンシグニチャーダンクは片足ジャンプから、右手を横に大きく広げたトマホークダンクである。前述のリチャードソンと対照的にレブロンのダンクは大体いつも片足である気がする。トマホークをここまでかっこよく決められるのはレブロンぐらいかもしれない。

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ルーキーで初めてのNBAの試合でもトマホークを披露していた

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ちなみにレブロンはこのTop10ランキングに入っている選手で唯一スラムダンクコンテストに参加していない。彼のクリエイティビティも考えたら優勝の可能性も高かったはずだが、チキってしまったのか一度も出場しなかったのは残念でならない。なんといったて、こんだけジャンプ力があるのだから、ダンクコンテストでもとてつもないダンクを披露できたはずである。

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No.6 コービー・ブライアント

ブログIDや写真からもお分かりかもしれないが、コービーは私が最も大好きな選手である。その為えこひいきと思われるかもしれないが、コービーはレギュラーシーズンとプレイオフ史上それぞれでTop5に入る最もSpectacularなダンクを決めたと思う。コービーは、トマホーク、360、ウィンドミルアリウープとダンクのバリエーションも多く、彼のアイドルであったジョーダンと同じような優雅さと同時にジョーダン以上にダンクにパワーがあったと思う。クリエイティビティも歴代トップクラスであり、他では見たことがないコービーにしかできないダンクも繰り出していた。このレギュラーシーズンの対ナゲッツ戦で、ビハインドバックしながら180度回転したリバースダンクはオールタイムTop5ムーブであろう。

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様々なダンクの種類があったコービーだが、彼が他の誰にも負けないのはベースラインからのリバースダンクだと思う。このダンクについては、今回のTop15選手の中でもコービーが圧倒的1位なはずである。1対1の状況からドライブをしていって、ディフェンダーをかわしながら決めるダンクは彼が極めた芸術の一つである。その中でも一番すごいのがプレイオフの対ティンバーウルブズ戦で繰り出したダンクである。(ちなみに実況のケビン・ハーレンはコービーが踏切をした段階ですぐに声を高めており、何かが起きると予測しているのもプロの技である)

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歴史的なインパクトも考慮して惜しくもTop5入りを逃したが、彼のダンクは1つ1つが非常に印象的である。

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NBA最強インゲームダンカーランキング TOP15 <15位~11位>

どうも。先日ヴィンス・カーターが引退について記事を書かせて頂いたが、ヴィンスといえばスラムダンクということで、今回は史上最強のダンカーは誰かをランキング形式で発表していきたいと思う。今回はゲーム中に繰り出されるダンクに絞っている為、スラムダンクコンテストでの実績は考慮しないで決めている。(おのずとスター選手がメインになってくるのだが) あくまで個人的な意見ではあるので、広い心で読んで頂ければなと思う。各選手についてそれぞれ動画をたくさん紹介することで情報量が多くなるので、ランキングは3記事に分けて発表していく。まずは15位から11位!

 

No.15 トレイシー・マグレディ

T-Mac (マグレディのニックネーム) はケガに泣かされた続けたキャリアを過ごしたが、全盛期の彼の身体能力は突出したものがあった。2メートル3センチの身長に長いウィングスパンを活かし、数々の標的相手にフェイシャルダンクを繰り出してきた。

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マグレディの突出した特徴はそのクリエイティビティである。試合中にセリフアリウープダンク (自分でバックボードにボールをパスして、それをキャッチしてダンクすること)を繰り出したのは彼が最初である。(2002年のオールスターの時) セルフアリウープはオールスターだけでなく試合中でも成功させている。また利き手ではない左手を使ったダンカーとして最も印象的なのも個人的にはT-Macである。

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No.14 シャキール・オニール

シャックと聞くと、2メートル16センチで150キロ弱という圧倒的な体を持った選手という印象が強いと思うが、彼がペイントの王者なることができたのは巨体からは信じられないほどのフットワークと運動神経の高さも持っていたからである。リーグに入った数年の間は360ダンクも繰り出せるほどであった。得点の多くをダンクで稼ぎだしたシャックだが、彼のダンクの特徴はキングコングのようなパワーと相手に恥をかかせようとする競争心が組み合わされたその強烈さである。ニューヨーク・ニックスのクリス・ダドリー相手にダンクを決めた後に、ダドリーを観客席に向かってプッシュしたのはこれぞシャックというダンクであった。(スポーツマンシップの観点からはよくない行為だが) オールスターで名選手のデイビッド・ロビンソンにフェイシャルダンクを浴びせたの最も印象的なシャックアタックの1つである。

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また、シャックのダンクで何より有名なのはバックボードをぶっ壊した時であろう。以前にもバックボードのグラスを破壊したダンカーはいたが、バックボードごと崩れ去るダンクをしたのは過去にもこの先にもシャックだけであろう。しかも2回も壊しているのだから、シャックの超人的なパワーには恐れ入る。

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No.13 ヤニス・アデトクンボ

今回のリストで最も若い選手であるヤニスはまだNBAに入って7年ほどしか経っていないが、既にMVPを獲得し、今年もミルウォーキー・バックスをリーグ1位の勝率に導いている。NBAの過去な偉大な選手の試合や、最近の運動神経抜群の選手もたくさん見てきたが、Greak Freak (ヤニスのニックネーム) ほどユニークな選手はいないのではないかと思う。身長は2メートル10センチかつ長いウィングスパン、それでいってガードのような跳躍力とセンターのようなパワーを持ち合わせた唯一無二の存在である。そんな彼が決めるダンクは開いた口が塞がらないようなものばかりである。

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ヤニスはギリシャ神話の登場人物ではないかと思うほど、この世のものとは思えないプレーを繰り出す。試合中にフリースローラインを一歩踏み込んだ距離から離陸したり、相手をそのまま飛び越えるダンクをしたり、激しいユーロステップの後にフェイシャルダンクを繰り出したりと挙げたらきりがない。今回は13位となったが、彼のキャリアが終わるころには、もっと記憶に残るダンクとともに、更に上位に入っていくだろう。

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ほぼフリスローラインから飛んでいる恐ろしさ

No.12 ダリル・ドーキンス

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大半の人がダリル・ドーキンスの名前を聞いたことがないと思うが、ダンクマニアにとっては彼は偉大な存在である。巨体からのパワーダンクといえば前述のシャックの方がすごいかもしれないが、ドーキンスがランクインした理由は、まだずば抜けた身体能力を持ったビッグマンが少なかった70年代後半から80年代前半にリムを揺らす激しいダンクをしていた先駆者であるところである。ドーキンスがバックボードのグラスを何度も試合中に壊す為、NBAが意図的にグラスを破壊するダンクをした場合に罰金を課したほどである。

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チョコレートサンダーというニックネームで呼ばれた彼は、陽気な性格も相まって自分のダンクに色々と名前を付けてビッグマンのダンクをクールなものにした。選手としては一流スターではなかったが、ダンクの歴史を語る上でドーキンスは欠かすことはできない。

 

No.11 クライド・ドレクスラー

ドレクスラーは愛称のクライド・ザ・グライドのように、宙を浮いているかのようなダンクが有名であった。下記の動画のNo.1はまさにそれを体現している。

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シューティングガードとして選手としてもダンカーとしても丁度ジョーダンの全盛期と被ってしまった為、過小評価されることが多い彼だが、彼の総合的能力は歴代でも屈指でしあった。特にバスケットからバスケットのスピード全開のフルコートダンクはドレクスラーのシグニチャームーブである。

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ヴィンス・カーター引退 - NBA史上ベストダンカー <NBA選手名鑑>

どうも。先日NBAで最高齢だったヴィンス・カーターが引退することを正式に発表した。22年というNBA史上最長のキャリアに幕を閉じることになり、90年代から活躍していた選手がいなくなったことに若干悲しさを感じる。

ヴィンスがNBAのキャリアをスタートをしたころは、ネクスマイケル・ジョーダンとしてコービーやダークぐらいの偉大な選手になる可能性 (歴代Top20~30) があると予想されていたが、正直そのレベルには達しなかった。しかし、スター選手からロールプレイヤーという転身を見事にまで成し遂げ、身体能力が特徴の選手でありながら20年以上も現役を続けたという、非常に興味深いキャリアであることは間違いない。そこで今回はそんなヴィンスの複雑なキャリアについて、功績と惜しまれる点のそれぞれから振り返ってみたいと思う。

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[ヴィンス・カーターの功績]

 1. とりあえず歴代最高のダンカーであること

ヴィンス・カーターを語る上でダンクを欠かすことはできない。彼の前にも後にも素晴らしいダンカーは何人もいるが、彼ほどバリエーションがあり、跳躍力とパワーを兼ね添えたダンクアーティストはいない。ヴィンスはマイケル・ジョーダン (紹介不要:愛称Air) の空中での美しさと、ドミニク・ウィルキンス (80年代にアトランタ・ホークスで活躍した名選手かつ史上最高のパワーダンカー) の力強さを合わせたダンカーである。片足でも両足でも最高のダンクを繰り出し (意外と両方できる人は少ない)、ウィンドミルから360、リバース、フェイシャルダンクまでなんでも繰り出すことができる。

 ヴィンスが出場した2000年のスラムダンクコンテストは史上最高のパフォーマンスとして20年経った今でも語り継がれている。この大会自体はNBAの歴史の中でも非常に重要な役割を果たしている。ダンクコンテスト1984年からNBAで開始し、オールスターのメインイベントの1つとなっていたが、97年にコービーが優勝した時は、各出場者によるクリエイティビティが無くなってきており、過去のコンテストと同じようなダンクが繰り返され、80年代のジョーダンやドミニクのようなスター選手の出場も少なくなっていた。それによって人気も下降線を辿り98年のオールスターではダンクコンテストがなくなるまでになった。98年にリーグに入ったヴィンスはルーキーから強烈なダンクを試合で見せ、2年目には既に人気選手となっていた。そんな中2000年のオールスターではダンクコンテストが復活することが決まり、ヴィンスも出場することにした為、開催前から大きな話題となっていた。ファンや関係者からダンクコンテストの復活への大きな期待がかかった大会で、彼は圧倒的なパフォーマンスを披露し、観客の度肝を抜いた。最近はダンクのレベルも高くなり、単純な難易度でいえばヴィンスの披露したダンク以上のものはあるとは思うが、歴史的なインパクトを考えた際に、彼の披露したダンクは一番であると考えらえる。

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ちなみに有名ではあるが、彼が試合の中で放った最高のダンクは、アメリカ代表として出場した2000年のシドニーオリンピックの対フランス戦で起こった。なんといったって、メダルをかけるような真剣試合の試合中に2メートル18センチの巨人をかすることもなく飛び越えたのである。彼のニックネームであるHalf Man Half Amazing (半分人間、半分驚き) を象徴するダンクとなっている。

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埋め込み動画が禁止されているみたいなので、下記リンクからどうぞ

https://www.youtube.com/watch?v=WihbbVEmppI

 

2. カナダのバスケ人気を押し上げた

ヴィンス・カーターは様々なチームでプレイしたが、誰もが最も印象に残っているのは最初のチームであるトロント・ラプターズと言うだろう。後述するが、トロントとヴィンスの関係は複雑であり、圧倒的な人気からの裏切り者扱い、キャリア終盤の和解といったドラマがあったが、トロントとカナダにおけるNBAの人気を高めたのはヴィンスの貢献に他ならない。

95年にバンクーバーグリズリーズ (現メンフィス・グリズリーズ)とトロント・ラプターズはカナダで初のNBAチームとして誕生した。エクスパンションチームであり戦力も弱かった為、最初の数年はラプターズの人気は高まりきっていなかった。そこに1998年に登場したのがヴィンスである。彼はルーキーからエキサイティングなプレーを連発しすぐにファンの心を掴む。2年目には平均得点を25点まで伸ばし、オールラウンダー力も活かし、チーム史上初のプレイオフまで進んだ。ヴィンスの活躍もあり、ラプターズの人気は上がっていき、アイスホッケーの一人勝ちだったカナダスポーツの流れを変えることに成功した。今ではトロントは最も熱狂的なファンを抱え、ホームコートアドバンテージを象徴するチームの1つとなっている。アンドリュー・ウィギンズはじめカナダ出身の選手も今では多く活躍しており、ヴィンスが彼らにとってのジョーダンのような存在だったと言っている。数年前には彼のカナダへの影響を綴ったドキュメンタリーである"The Carter Effect"も作成されており、ネットフリックスで見ることができるので是非見てみてもらいたい。

www.imdb.com

 

3. スター選手からロールプレイヤーへのスムーズな転身

スターを一度経験した選手の中で、控えになることや自分の役割が減ることを受け入れることができる人は少ない。最近で言えば、アレン・アイバーソンカーメロ・アンソニーも自分が全盛期でないことは分かりつつも、ベンチプレイヤーとなることや自分中心のチームでなくなることにアジャストしきれずに、早い段階でリーグから締め出される形となってしまった。(カーメロについては1年経って復帰することができたが) ヴィンス・カーターも入団した1998年から少なくとも2008年頃までの10年間は紛れもなくスター選手の一人であった。2009年にオーランド・マジックにトレードされた後は、最後のチームのアトランタ・ホークスまでの残りの12年間を合計6チームで過ごすことになり、全盛期の身体能力は落ちたが、シュート力と頭脳を使ったプレイスタイルに変更し、どのチームでも重宝されるロールプレイヤーとなった。2012年頃からはほぼベンチからの出場が中心となったが不満を言うことはなく、自分がスター選手でないことを認め、チームの貢献に努めた。オールスターのファン投票で1位を数回獲得したことがあるほどの人気選手がこれほどうまくベンチプレイヤーになることができた例は過去にはほとんどないと思う。彼は自分のプレイスタイルをアジャストすることでリーグでの居場所を確保し続け、22年という過去最高の現役期間を過ごしたのは、今後のスター選手も見習うべきことがあるはずだ。もちろん運動神経が衰えたといっても、もともと超人レベルな為、40歳でもこんなダンクができているのだが。。。

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[ヴィンス・カーターのキャリアを複雑にする点]

1. 期待されたポテンシャルをフルに発揮しなかった

前述した通りヴィンスはルーキー時から活躍し、平均18得点で新人王と取った。2年目には平均25.7得点、3年目には平均27.6得点まで伸ばしたが、彼のキャリアベストの平均得点はここで留まった。(もちろん得点だけが全てでないが) 身体能力の高さから繰り出さるダンクやレイアップだけでなく、シュート力も高く3ポイントも2年目と3年目は40%を超えていた。ディフェンスは決してトップレベルではなかったが、パス能力もありチームメイトのセットアップもできた。当時の若手スター選手だった、アレン・アイバーソンやコービー、レイ・アレン、ポール・ピアースといった選手達と並ぶレベルと考えられていたことは間違いなく、その華麗なダンクからネクストジョーダンの筆頭候補とも言われた。然し4年目からはは少しずつケガも増え、やる気も抜けてしまったかのようなプレーが見られた。ニュージャージー・ネッツに移籍後もスター選手としてのプレーはしていたが、本当のスーパースターと言えるまではいかなかった。彼の従弟で97年に入団したトレイシー・マグレディラプターズではヴィンスのNo.2だったが、マジックに移籍後の2003年頃にはヴィンスより確実に上の立ち位置となった。リーグに入った数年後から選手としての大きな進歩が見られなかったのは、ケガの影響ももちろんあると思うが、コービーやレブロンのようなハングリー精神が少し欠けていたことは否めない。歴代選手ランキングでTop100には入るとは考えられるが、Top50ではないというのが個人的な印象である。入団当初の活躍を考えると少し残念ではある。(Top100でも十分すごいのだが) 

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お互いの活躍の嫉妬から一時不仲になったと言われるヴィンスとトレイシー

2. ラプターズ所属時の後半はやる気が見られなかった

先程も少し触れたが、ラプターズでプレーした後半はヴィンスは明らかにやる気がなくなっており、トレードを要求しているかのように見えた。ケガの影響もあり彼の成績は下降気味となり、徐々にラプターズファンの間でもフラストレーションが溜まるようになる。チームもヴィンスの3年目の2001年にプレイオフに進出した後は弱いままであり、彼の周りを固める補強がしきれていないラプターズ経営陣への不満も口にするようになっていった。そして2004年に正式にトレードの要求をし、歴代屈指のポイントガードジェイソン・キッドのいるニュージャージ・ネッツに移籍した。ラプターズ最後の2004年シーズンの途中まで過去最低レベルの成績だったのに、ネッツに移籍した途端やる気を取り戻してまた平均27点を超える活躍したこともラプターズファンの反感を買った。その後ラプターズの試合に戻ってくる度にヴィンスはブーイングを浴び続けたが、彼は元チームに対して好結果は残し続けて、トロントでゲームウィナーを2回成功させたりもしている。

- ヴィンスがトロントに戻ってきた最初の試合のブーイングの嵐はこちらから-

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精神的なタフさが欠けていると言われていた彼だが、決してそうではなく、チームを引っ張るリーダータイプではなかっただけなのかもしれない。その後も10年近くブーイングを浴び続けたが、キャリア終盤になった5年ほど前にようやく仲直りの意味のトリビュートがラプターズで行われて、今ではファンもチームもヴィンスのトロントへの功績を称えるようになっている。

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3. プレイオフでの成功がなかった

ヴィンス・カーターは入団2年目と3年目にラプターズでプレイオフに進出し、特に3年目のカンファレンスセミファイナルでの、アイバーソン率いるフィラデルフィアシクサーズとの死闘は今でも語り継がれている。第7戦までもつれたこのシリーズでは、その年のリーグMVPのアイバーソンとヴィンスの点取り合戦が話題になっていた。そんな白熱した戦いの中の第7戦の朝にヴィンスは、母校のノースカロライナ大学の卒業式に参加することを決める。大学3年終了後にプロとなった彼は、親との約束を果たすためにその後も地道に勉強を続け、卒業資格を得たのである。運の悪いことにその卒業式が彼のキャリアで最も大事なプレイオフの試合と被ってしまったのである。昼過ぎまでノースカロライナで卒業式に参加し、飛行機で夕方のフィラデルフィアに戻るという強硬スケジュールについて、試合前からラプターズのチームメイトは反対していた。過酷な移動もあってか、第7戦でヴィンスは思うような活躍ができなかったが、終盤まで接戦となり、1点差で負けていたラプターズは最後のチャンスをヴィンスに託した。しかし、彼はその期待に応えることができず、彼のジャンプショットは僅かにリムからずれて、ラプターズは敗退した。試合前からヴィンスに対する批判が高まっていた中、決勝シュートを外したことで勝負弱いというイメージがついてしまった。卒業式に行く判断が正しいか否かについてはそれぞれの価値観ではあると思うが、批判を掻き消すだけの活躍が出来なかったことは彼の心残りでもあるだろう。

- 第7戦のハイライトは下記動画から-

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その後ラプターズではプレイオフに進出できず、ネッツに移籍した後も3年連続プレイオフに出るが、カンファレンスセミファイナルどまりであった。オーランド・マジックに2009年に移籍した際は既にスター選手ではなくなっており、ここでもカンファレンスファイナルで敗れている。個人成績だけ見れば決して悪くない数字であるのだが、勝ち負けで判断されるのがスポーツである以上、NBAファイナルまで行けなかったことはヴィンスのステータスを高めきれない確実な要因ではある。

 

ヴィンスの22年間のNBAキャリアは、栄光に溢れた初期の4~5年と、失望と平凡な結果が続いた10年前後、誰もから愛される存在となったキャリア終盤の5~7年前後とアップダウンが多かった。ファンやコラムニストが求めていた史上最高の選手の一人にはなれなかったが、ある意味非常に人間味の溢れる現役生活ではあったのではないか。そして何より彼が紛れもなく歴代ベストダンカーであることはこれからもずっとNBAファンの記憶に残っていくだろう。ここ数年はNBA番組やポッドキャストに出演しており、今後は解説者やコメンテーターとして活躍していくことに期待している。

NBAカムバック計画 (7/31日再開!!!)

どうも。今回は久しぶりに最近のNBAの動向について触れたいと思う。シーズン再開のシナリオとそれにおける弊害をまとめてみる。

 

まず、NBAの試合は今年の7月31日に戻ってくる予定!!(TBDではあるが) NBAファイナルは9月の終わりから10月初めの予定となり、再開から全部で2か月程度で完了するとのこと。

 

場所:フロリダのオーランドにあるディズニーワールド

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これは先月にこのブログで記載した通りだった。ディズニーワールドはNBAの放映権がある世界最大スポーツネットワークESPNのエンターテイメントコンプレックスがある場所だ。ディズニーはアメリカ放送局のABCの親会社であり、更にABCがESPNを所有しているので、ビジネス的にもwin-winなのである。ここに参加全チームが集まってホテルに泊まり、プレイオフ参加中はこの敷地からは出れない予定となっている。そもそもほんとにそんな規律を守れるのかも気になるが、制約・懸念事項は他にもある。

 

1) 試合は全部無観客

コロナの感染を防ぐためなので当たり前ではあるが、やっぱり観客がいないのは若干盛り上がりに欠ける。観客からの歓声やため息によって試合のモメンタムは大きく変わる。(アナリティックスは無視しがちだが試合の流れはスポーツで非常に重要) それがなくなることで選手達の心理状態にどんな影響がでるのかは気になるところである。

 

もう1つ観客の声がなくなることで意外と大事な要素は、選手達の生の声が聞こえてしまうということである。これは日本語だとあまりピンと来ないかもしれないが、英語では汚い言葉とされる"F-Word"や"S-Word"といったCurse Word (ブログ上記載しづらいので詳細は検索して頂きたいが、個人的には好きな言葉ではあったりする 笑) が発される時は"ピー"と対象ワードが消されるようになっている。これが録画だったらいいのだが、生放送では対応するのが難しい。なのでスポーツの生中継等では実際より5~10秒遅れて放映して、その短時間で汚い言葉を掻き消すようにしたりする。ただNBA選手は普段からプレーする時は超大量にCurse Wordを使っている。観客の声や音楽があれば大体が消されるが、それでもたまに聞こえてきて、ちょっと面白いことになったりする。音が何もない中、果たしてどこまで選手達から数秒毎に発せられるCurse Wordを放送バージョンから消去することができるかは、TV放映をする側としてはまさに試練なのである。しょっちゅうCurse Wordを使っていたケビン・ガーネットがまだプレーしていたら、ただ普通にプレーしているだけで出場停止にさせられたかもしれない。。。笑

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とりあえずいつも叫びまくっているだろう

2) ホームコートアドバンテージがなくなる

全部同じ会場で試合を行うことで、トップチームにとって大きな損失はホームコートの観客の声援が得られないことや快適な家から試合に挑むことができなくなることであろう。レギュラーシーズンを頑張って戦う理由として、プレイオフ期間中のホームコートアドバンテージを獲得することであり、それがなくなることで、順位の下のチームのチャンスが広がる可能性はある。(NBAでは特に第一ラウンドで順位が下のチームが上のチームをアップセットする可能性は決めわて低いが) もちろん優勝を目指すようなレベルが高いチームであればコートに関係なく結果を出すと予想されるが、例えばミルウォーキー・バックス v.s. ロサンゼルス・レイカーズのファイナルとなった際、ほぼ2チームは互角である中、レギュラーシーズンで勝率が若干高いバックスにホームコートあるかないかで、どっちが優勝するかに影響することは多少なりとはありえると思われる。<余談だが、80年代のボストン・セルティックスのホームコートでは相手側のロッカールームのシャワーがちゃんと出ないように細工していたとかという話である>

ここ数年ずっと強豪なのに観客の盛り上がりがイマイチなヒューストン・ロケッツはホームコート自体あんまり関係ないかもしれないが。。。いつも空席が目立つのは、毎試合開始1時間ぐらいしないと観客が来ないマイアミ・ヒート並である。

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この試合はプレイオフなのに席が空きまくりである

3) 家族に会えない

これも意外と大きな問題ではある。2か月間同じ場所にずっと他チームの選手やスタッフと一緒に閉じ込められ (もちろんとってもいいホテルのベットで寝れて、美味しいご飯は食べれるわけではあるが)、心の支えとなる家族に会えないことで精神的にダメージが来る選手もいるかもしれない。予定によると、プレイオフのカンファレンスセミファイナルの段階で残り8チームとなった時に、家族も来ることができるようだが、それまでの1か月弱は敷地に入ることができないという話である。子供の時間を過ごしたい、家族のことが心配だから参加はしたくないという選手が出てくる可能性は十分にあり得る。こういう時にシングルの選手が多いチームが優勝したりするのかとか、結婚歴長いLeBronと最近子供出来たGiannisにとっては不利になってしまうかもとか勝手に想像。

 

フォーマット:22チーム参加し、レギュラーシーズン8試合とプレイオフ全部行う

これは発表された時は結構個人的には驚いた。以前予測したときは、プレイオフのみ実施し、しかも短縮型で行うのが一番濃厚と思っていたので、レギュラーシーズンも実施して、レイオフ参加可能の16チーム+現在プレイオフ圏外の6チームも来るのはなかなかの大所帯となる。以前の予測ではこのシナリオが10%の確率と思っていたので大外れである。。。

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1) レギュラーシーズンを入れる意味

現在レギュラーシーズンは各チーム82試合中65試合前後消化しており、8試合追加することで合計70試合以上となる。以前も記載したが、シーズンを70試合以上することでNBA的にはローカルTV局との契約を100%満たすことができるらしい。損失を最小限に抑えることが今回の決断に大きな影響があったのは確かだろう。損失が大きければその分各チームが、選手に払うサラリーの合計の上限であるサラリーキャップを下げることになり、フリーエージェントになる選手が大きな契約を結ぶことが難しくなり、最悪サラリーカットもあり得る為、必要なお金を確保することはプレイヤーにとっても非常に重要なのである。

 

また、選手のコンディショニングの意味でもレギュラーシーズンをすることが大事と判断されたと推測される。プレイオフの1試合1試合は非常に激しく、かなりの体力を奪う。3月から4か月間もNBAの試合を一回も経験していない選手たちがいきなりプレイオフに突入することでケガのリスクも高まり、最高のパフォーマンスを見せられず、ファンの期待に応えられないということも考えられる。(そうすると視聴率が下がりNBAの懐に影響する) 更に選手がコンディショニングが整いきらずケガをしてしまったら、今後の契約にもマイナスに作用することもありえる。(と、結局お金の話になってしまうが) 各選手をプレイオフモードにするという意味でもこのレギュラーシーズンで慣らしがされていくのだろう。

 

2) 参加チーム

このオーランドのバブル (隔離)に参加するチームは下記の通りである。プレイオフ圏外の6チームはイーストとウエストから3チームずつかと思いきや、勝率ベースで決まった為、弱っちいイーストからは1チームのみ参加となっている!! (過去20年間の東西のレベルの差は本当に激しい。レブロンが8年連続イースト代表でNBAファイナルに出れたのも強いライバルがいなかったからとずっと思っている) 参加チームは以下の通り。

       EAST

         WEST

ミルウォーキー・バックス

LA レイカーズ

トロント・ラプターズ

LA クリッパーズ

ボストン・セルティックス

デンバー・ナゲッツ

マイアミ・ヒート

ユタ・ジャズ

インディアナ・ペイサーズ

オクラホマシティ・サンダー

フィラデルフィア・76サーズ

ヒューストン・ロケッツ

ブルックリン・ネッツ

ダラス・マーベリックス

オーランド・マジック

メンフィス・グリズリーズ

ワシントン・ウィザーズ

ポートランド・トレイルブレイザーズ

 

ニューオリンズペリカン

 

サクラメント・キングス

 

サンアントニオ・スパーズ

 

フェニックス・サンズ

イーストから唯一出場のウィザーズはフェニックス・サンズよりも勝率が悪いという状況だが、八村塁も参加できるので、日本人のにわかファンも少しは興味を持ってくれるかもしれない。順位が拮抗しているウエストのプレイオフ8チームと、イーストの2位~6位は残り8試合で色々動きがあると思われるが、ウィザーズはイースト8位のマジックに5.5ゲーム差をつけられており、抜かせるとは考えづらく、ウエスト9位のブレイザーズが8位のグリズリーズとの3.5ゲーム差を消せるかも微妙かと思う。

 

ちなみに、プレイオフを10月初めまでに終わらせるのもちゃんとした戦略に基づいている。日本にいるとあまり分からないが、アメリカにおけるアメフトのNFLの人気は圧倒的である。NFLのシーズンは予定通り9月過ぎに開始すると言われており、NFLシーズンがヒートアップしてくる11月以降にNBAファイナルが被ると完全にNFLに食われてしまうのである。NFLの普通のレギュラーシーズンの視聴率はNBAファイナルの視聴率より高いという事実がアメリカにおけるアメフトの絶対的な人気を表している。更にちなみにだが、選手団体とオーナー達が相当仲悪い大リーグのMLBでは、話し合いが分裂して全然再開の目途が立っておらず、このままでは2020年シーズンが無くなることもあるとのこと。MLBはレギュラーシーズンだけで162試合ある為、シーズン自体が出来ないのは相当な損失となり、既に若者の間で下がっている野球人気の低下に拍車をかけることにもなるだろう。

 

問題:選手全員がこの内容に同意はしていない

ここまでNBAが100%カムバックを果たすかのように書いていたが、この1週間でまた状況は変わってきている。先週末に80人ぐらいの選手達のカンファレンスコールがあり、カイリー・アービングが中心となって、今は試合をするよりも黒人の権利の為の運動に労力を費やすべきと主張した様子。この意見にレイカーズドワイト・ハワードやエイブリー・ブラッドリーも同調しているとのこと。アービングはケガで元々プレイしない予定だが、ハワードやブラッドリーはNo.1シードのベンチプレイヤーとなるだけに、ここでどういった決断をするかは多少なりともレイカーズの優勝する可能性に影響があるだろう。これからどれだけの選手がアービングに同調していくかは気になるところであり、再開に対する反対意見が強めることも考えれらる。

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とりあえずケガばっかしすぎなアービング

個人的には多くの視聴者がいる中で、何かしらの抗議運動を見せる方が効果的なのではないかと思う。もちろんストリートのデモを日々行っていくやり方や政策を考えるという方法もあるが、色んな人の注目を一気に集める為には、スポーツの試合の中でセレブリティである選手達が協力しあって、意味のあるアクションしていくことでも大義を果たすことができるではないかと思う。

 

また、上記の家族との時間を過ごしたいという選手もいるし、そもそもコロナがアメリカ全土で全然おさまりきっておらず、感染が拡大しないかという意見も出てきている。(東京も本当に大丈夫かと思うが) NBAとしては何かしらの理由で参加しないと決めた選手を罰することもないとのことなので、今回はパスをする選手もいるかもしれない。今のところアービング以外で参加に消極的なスター選手は出てきてはいない。(元?スター選手のカーメロ・アンソニーはコロナが心配と言ってはいるが)

 

ただ、結局のところはリーグのトップの中のトップの選手がフロリダに来るのであればNBAは再開すると考えられる。クリッパーズのパトリック・ビバリーがツイートしたように、最終的にはレブロンがやるぞと言ったら、他選手達もプレーすることになるだろう。

 

 さすがNBAの絶対権力者のキングである。

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