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NBA再開: 有力チーム注目キープレイヤー (ウエスト)

どうも。オーランドのバブルでレギュラーシーズンがとうとう開幕した。ファンがいない中、バーチャルファンが家から応援している画面が観客席の部分に流れたり、人工的なディフェンスの声援を使ったりと、少し見慣れない光景はもちろんあるが、概ね普段NBAを見るかのような雰囲気を味わえている気がする。またファンやゴール下にカメラマンがいないことで、逆に選手達も思い切りバスケットに向かって突っ込んだり、ルーズボールに大分したりと、意外な利点も見られたりしている。

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観客席に見えるバーチャルファン。ちょっと不自然な感じではある

試合についても多少Sloppyなところが見られるが、今のところ接戦続きで、終盤に目を離せなくなるエキサイティングな試合が多いのは大いに嬉しい。ジェームズ・ハーデンが49点出したと思ったら、まさかのペイサーズのTJ・ウォーレンが3ポイントを炸裂させまくって53点たたき出したりと面白い試合続きである。(ウォーレンは数年前まで3ポイントが苦手だった) プレイオフになったらより詳しく試合内容についてもまとめていこうと思っているが、今回は先週に続きプレイオフで少しでもチャンスあるチームのキープレイヤーを独断で決めていきたい。本日はウエスト篇!イーストの注目選手は前回の記事をご参照。

atsukobe.hatenablog.com

 

【ウエスト】

1. ロサンゼルス・レイカーズ

- カイル・クーズマ -

レイカーズがウエスト1位の座についてる原動力は言うまでもなく、レブロン・ジェームズとアンソニーデイビスのスーパースターコンボである。今年はポイントガードとしてリーグ1位のアシストを記録しているレブロンは17年目とは思えないコンディショニングでオフェンスを牽引するだけでなく、ずいぶん久しぶりにレギュラーシーズンでディフェンスも頑張っている。今年加入したアンソニーデイビスレブロンのチームワークも非常に機能しており、ビッグマンらしからぬシュート力とクイックネスでデイビスを1 on 1で止められるディフェンダーはいない。オフェンスの大半はこの2人が中心となり、後はスターと呼べる選手はいないが、そこで重要となるのが第3のスコアラーである。レブロンデイビスのどちらかが不調になった時に、ステップアップしてオフェンスを作り出すことができるのはクーズマが最有力であろう。シュート力がぱっと見ほど実は高くない彼ではあるが、ドライブからのフックショットやミッドレンジで自分で得点を作ることができ、緊迫した場面でも躊躇しない度胸は何よりプレイオフで必要になってくる。今年のウエストはレイカーズか、選手層の厚いクリッパーズの2強となると見られているが、2人のTop10プレイヤーを支える活躍がクーズマができるかによって、レブロンが3チーム目でのタイトル獲得ができるかに大きく影響するだろう。

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2. ロサンゼルス・クリッパーズ

- モントレズ・ハレル -

昨年はスーパースターがいない中、ハッスルプレーとチームワークで予想以上の成績を残したクリッパーズだが、今年は昨年ラプターズでFinals MVPを獲得したクワイ・レナードとTop10レベルのプレーヤーであるポール・ジョージがトレードで加入したことで、シーズン開始前に優勝候補の筆頭候補に成りあがった。然し、シーズン再開前後は前途多難であり、前回の記事で書いたようにルー・ウィリアムズがバブルを離れてストリップクラブに行ったり、パトリック・ビバリーが1回バブルから離れて戻ってきたばっかりである。そして、キープレイヤーに挙げたハレルは、祖母がお亡くなりになられたことで現在もオーランドに戻ってきていない。彼が復帰するタイミングはプレイオフ直前になる可能性が高いが、ズバッチ以外は他に有力なビッグマンがいない中で、ハレルのコート上の活躍はデイビズや二コラ・ヨキッチ、ゴルベアといったビッグプレイヤーがいるウエストで勝ち抜いていくには欠かせない。2メートル3センチというゴール下のプレイヤーとしては身長が低いが、ハレルの特徴はそのハッスルプレーであり、自分より大きい相手からリバウンドを奪い取ったり、激しいダンクをするといった彼のエネルギーがチームの起爆剤となっている。また、同じベンチプレーヤーとして、試合の途中から行うルー・ウィリアムズとのピックアンドロールの息は抜群で、ベンチから大量の得点を生んでいる。身長差では不利のハレルが、特に対レイカーズとのマッチアップでデイビスを少しでも抑え込むことができるかによってクリッパーズの優勝のチャンスが見えてくるはずである。

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3. デンバー・ナゲッツ

- ジャマール・マレー -

ナゲッツは面白いチームである。ロスターだけ見ると、あれ、見た目より勝率いいのはなんでだろうと思ったりする。誰もが知っているス―パスターがいるわけではなく、他にオールスターもいない。ベストプレイヤーの二コラ・ヨキッチの一番のすごさはパスであり、ビッグマンとしてはおそらく史上最高のパサーに数えられる。この天性のパサーは素晴らしい選手ではあるが、コンスタントに30点を取るタイプではない。そこで彼がスコアリングに気が向いてない時に誰が得点を取りに行くかがナゲッツが勝ち抜いていくカギになる。その第1候補はここ2年ぐらい、ジャマール・マレーとなっている。今年で4年目の彼は常にそのポテンシャルを期待されており、長距離シュートを活かして点を稼ぐときの爆発力は目を見張るものがあるが、ムラが激しいことがプロになってからずっと課題となっている。昨年のプレイオフでも才能の片鱗は見せたが、コンスタントの活躍ができなかった。今シーズンも引き続きアップダウンが見らており懸念はあるが、他にオフェンスのクリエイターがルーキーのマイケル・ポーターJrしかいないチームにおいて、ヨキッチのプレッシャーを取るにはマレーのコンスタントな貢献が欠かせない。自分のプレーに絶対的な自信を持った態度を見せつけることが好きな彼が、それをプレーで実証できるかによって、レギュラーシーズンだけ強いチームというレッテルを張られているナゲッツが一皮むけるかどうかが決まってくる。

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4. ユタ・ジャズ

- マイク・コンリー -

ジャズもナゲッツと同じく圧倒的なス―パスターはおらず、3年目のスコアラーのドノバン・ミッチェルと、過去2年間のDefensive Player of the Yearのルディ・ゴルベアを中心にチームディフェンスとバランスの取れたオフェンスでウエストの強豪の1つとなった。過去2年間プレイオフヒューストン・ロケッツに敗れたジャズは、オフシーズンにメンフィスから正統派ポイントガードのマイク・コンリーとシュート力に長けたボヤン・ボグダノビッチを獲得して、ダークホース優勝候補ともなっていた。然し、コンリーはメンフィス時代のような安定した成績を残すことができず、チームのフィットの問題から途中でベンチスタートになったり、試行錯誤のシーズンとなった。主要スタッツは軒並みここ7年ぐらいで最低であり、ミッチェルやボグダノビッチがボールハンドリングすることも多い環境にアジャストするのに苦労しているようであった。ジャズはNBAコロナ感染者第一号となったゴルベアとミッチェルの仲が悪くなったというニュースや、コンリーと違い安定した活躍でミッチェルに次ぐ得点源となっていたボグダノビッチがケガの手術をすることを決めてプレイオフに出場できなかったりと、逆風が吹いている。そんな状況を打開するには、コンリーが少しでも本来の姿を取り戻して、チームを落ち着かせるしたプレイメイク、相手をシャットダウンできるディフェンス、そして利き手と反対の右手を自由自在に使うフローターでチームを支えることができるかどうかによって、ジャズが10年以上ぶりのカンファレンスファイナルに進出するか、1回戦で敗退するかの命運が決まる。

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5. ヒューストン・ロケッツ

- PJ・タッカー -

GMのダリル・モレ―が築いたポイントとレイアップ、フリースローのみにフォーカスしたロケッツのアナリティクスバスケは今年も健在で、エースのジェームズ・ハーデンはシーズン当初からステップバック3ポイントと大量のフリースローで平均40得点近い爆発的な活躍をした。(そして、他のプレーヤーはひたすら3ポイントラインでハーデンのパスを待つ) 但し、今年から加入した元MVPのラッセル・ウエストブルックは3ポイントが決まらない為、スペーシングを作ることができず、シーズン前半は思うような活躍ができていなかった。そんなロケッツの起爆剤として、モレ―は大胆なトレードに踏み切り、センターのクリント・カペラをトレードしたのだ。これによりロケッツのほとんどの選手は大ベテランのタイソン・チャンドラーを除いてほぼ2メートル5センチ以下の選手達の集まりとなった。必ず毎試合出場するビッグマンが一人もいないチームはNBA史上今年のロケッツがはじめてとなり、どんどんとSmall Ballが進むNBAでもさすがに大胆すぎるという意見が多かった。蓋を開けてみると、ゴール下に陣取るビッグマンがいなくなったことで、特にウエストブルックがアタックするスペースが広がり、オフェンスのレベルは更に高まった。ディフェンスにおいては、本来のセンターがいないという状況で、実質のビッグマン役を担うのは196センチのPJ・タッカーである。ルーキーシーズンの後海外で5年間プレーした後にNBAに戻ってきた苦労人のタッカーは、フォワードとして身長が低めながら、闘志とハッスルプレーによってリーグでも屈指のディフェンダー件、コーナー3ポイントの名手となった。カペラがいない今、タッカーがヨキッチやデイビスといったスタービッグマンをガードする必要があり、更にリバウンドも取らなければいけない。(当然ではあるが、ロケッツはリバウンド数でリーグ最低クラスである) 既に35歳の彼にとってはとても負担がかかるタスクとなるが、オフェンスだけでは勝てないのがプレイオフ。過去5年プレイオフでウォーリアーズに負け続けたロケッツが、ファイナルに行くチャンスがあるかは、タッカーの身長の差を補う頭脳とハッスルプレーによって、どこまでロケッツのディフェンスのレベルを高められるかにかかっている。

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6. オクラホマシティ・サンダー

- クリス・ポール -

昨年のオフシーズンに10年以上チームの大スターだったラッセル・ウエストブルックをロケッツにトレードして、サンダーが獲得したのは希代のポイントガードクリス・ポールであった。年も重ね、ロケッツのチームメイトのハーデンと最後はうまくいかず、ロケッツ時代に契約した超大型サラリーのせいでトレード不可能と言われ、どこのチームも欲しがっていなかったが、ドラフトピックを貰えるのを見越してサンダーは獲得に踏み切った。ポール以外にスター選手はいなく、2年目のシェイ・ギルジアス=アレクサンダーや、シューターかつクリエイターのダニロ・ガリナリ、6thマンのデニス・シュルーダーといった選手が脇を固めるチームでポールのみがオールスター選手である。その為、今年のプレイオフ進出候補には入っていなかった。シーズン序盤は下馬評通り低迷していたが、12月頃から一気に強くなり、特に接戦の試合でのクラッチ力によって勝率を挙げていった。そのクラッチパフォーマンスの立役者は言わずもがなポールであり、緊迫する場面で何度も歴代最高クラスのミッドレンジショットを決めて勝利をもぎ取った。ポールが素晴らしいリーダーであることは知られているが、自分にも相手にも非常に厳しい性格が災いして、クリッパーズやロケッツ時代は何人かの選手との衝突も見られたが、サンダーが若いチームであることもあってか、ポールの強烈なリーダーシップスタイルによって、チームがまとまっているように見られる。そのまとまりとミスの少ないプレースタイルから、レイカーズクリッパーズの次に最も安定したウエストのチームはサンダーでないかと思えるほどである。歴代屈指のポイントガードでありながら、未だにファイナルに進出したことはなく、これまでに何度もプレイオフで自分のミスやケガで苦い経験をしてきただけに、チーム唯一のスターとしてどこまで躍進できるかは、ポールのNBAの歴史におけるポジションを左右することになるだろう。

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7. ダラス・マーベリックス

- ルーカ・ドンチッチ -

レイオフでシリーズに勝つ可能性があるチーム最後は現在7位のマブスだが、このチームが6割近い勝率を保っている絶対的な理由はまだ2年目のスーパースター、ルーカ・ドンチッチである。もちろん名将リック・カーライルや、ケガから復帰したユニコーンことクリスタプス・ポルジンギスのシュート力とリム下のディフェンス、バランスの取れた布陣も揃っているが、そのコマを動かすのは全てルーカ次第である。まだアメリカでお酒を飲める年齢になったばかりの彼は、NBA史上最高の2年目のシーズンを送ったと言えるはずである。決して身体能力が突出しているわけではないが、巧みなドリブルスキルと天性的なパス能力で、平均29得点に加えて、アシストも9つ近く、リバウンドも9つ以上、Advanced Statsでも圧倒的な成績で一気にトップクラスの選手へと駆け上がった。オフェンスでは、基本彼がボールを持ち、得意のステップバック3ポイントやチームメイトへのピンポイントなパスでオフェンスを作りだし、マブスはレギュラーシーズンのOffensive Efficiencyでリーグ1位となった。つまりマブスがシリーズで勝つチャンスがあるかは、ルーカがコンスタントに活躍できるか否かで100%決まるといっても過言ではない。初のプレイオフであることには変わりないが、NBAに来る前に19歳の年齢でヨーロッパのユーロリーグでMVPに輝いた彼にプレッシャーは特にないはずである。

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メンフィスと8位シードを争うポートランド・トレイルブレイザーズがもしプレイオフに進出したら、彼らも大いにチャンスがある。コロナ前はけが人だらけで昨年カンファレンスファイナルに進出したような成績を残せなかったが、4か月の休みを得て、今はフルロスターが揃った状態であり、これからどこまで差を縮めることができるか注目していきたい。