ディープなNBA・バスケトーク+アメリカ文化

NBAとアメリカンカルチャー中心のブログ

ヨーロッパ選手がNBAを支配する時がきたのか

どうも。久しぶりの投稿となりましたが、NBAもちょこちょこ話題が入ってきており、サンズのオーナーのロバート・サーバーが、セクハラ、パワハラ、人種差別のもろもろが原因でオーナーを1年間サスペンドされたのちチームを最終的に売ったり、セルティックスのHCのイメ・ウドカが女性問題(不倫、セクハラ?など真相はまだ不明) で1年間サスペンドされたりと、スキャンダラスな問題が続けて発生している。

 

これについてはまた別途記事にしてみたいと思うが、今回は全然関係のないトピックで、夏の間に開催されたユーロバスケットから、ヨーロッパ出身のNBAでの歴史と、昨今のヨーロッパ出身スーパースターの台頭について考えてみたい。

 

<90年代のヨーロッパ選手の台頭>

80年代になると世界的に人気が出始めたNBAは、90年代になると徐々にヨーロッパから選手が入ってくるようになる。アメリカ人が大体数を占めるNBAにとって、当初ヨーロッパの選手は、未知の世界から来た存在、そして自分たちよりも劣る存在だと考えられてきた。ヨーロッパ選手は身長は高くてスキルはあるが、アメリカ人のようなタフさがない、プッシュされたらやり返してこない弱い奴らだというステレオタイプがあり、(これこそAmerican Exceptionalismの愚かさだろうが) 、ヨーロッパ人に対しては否定的、軽蔑的な見方がされがちだった。

 

実際スターと呼ばれる選手はこの時代は少なく、ブラデ・ディバッツ、デトレフ・シュレンプ、リック・スミッツ、トニー・クーコッチなど優れたオールスター級の選手はいたが、スターと呼べるレベルには若干劣った。また、クロアチアドラジェン・ペトロヴィッチは、素晴らしいシューターとしておそらく最もスターになれるポテンシャルのあった選手だったが、交通事故で28歳で悲劇の死を遂げてしまい、その道は閉ざされてしまった。

亡くなる直前のシーズンでは平均22点を記録していたペトロビッチ

そのアルヴィーダス・サボニスヨーロッパ史上最高の選手の一人と言われるが、NBAに来た時は31歳かつケガもあり既に全盛期を過ぎた状態だった為、スターレベルのプレーはできなかった。(十分貢献してはいたのだが) 彼がもし健康体だった20代でNBAに来ていたら、確実にもっと活躍ができただろう。サボニスの息子は、ペイサーズとキングスで活躍していることは父親譲りのフットワークとパスセンスを持っている。

ポートランド時代は動きはスローだったがセンスは変わらず抜群だった

 

<ダークを中心とした2000年代の躍進>

スターはいないながらも徐々に存在感を出し始めたヨーロッパ選手達は2000年代になると更にリーグを席巻し始める。そんな海外からのNBA選手の増加には1992年のドリームチームの影響が非常に大きいと言われている。バルセロナで開催のオリンピックで初めてNBAのスーパースターたちがオリンピックに参加したことで、バスケは一気にヨーロッパで人気のスポーツとなり、ジョーダンやマジックに憧れる少年がたくさん出てきたのである。

 

例えば、ペジャ・ストヤコビッチは屈指のシューターとして、キングス時代にリーグ2位のスコアリングとMVP4位に入る活躍をしたり、アンドレ・キリレンコはディフェンスマシーンとして、短い期間ながらもなんでもできるユーティリティプレイヤーとして、現代バスケに通じる活躍をした。

 

スペインからはガソル兄弟が、それぞれ強烈なインパクトを残し、兄のパウが先に台頭を示して、弱小チームのエースからレイカーズのNo.2として2連覇に大貢献した。(2010年のファイナルMVPはコービーじゃなくてパウが取るべきだったと今でも思っている)  ローポストのフットワークから、抜群のパスセンスとローポストゲームでオフェンスに秀でていたお兄さんに対して、弟のマークはグリズリーズで"Grit and Grind"の代名詞の一人として非常にディフェンスに長けた選手であった。グリズリーズでは優勝できなかったものの、2019年にはラプターズのキーピースとして優勝に貢献している。

体系もプレイスタイルも対照的なガソル兄弟

また、スパーズにおいては、マヌ・ジノビリはアルゼンチン出身であったが、イタリアでプレイしていたこともあり、いわゆるユーロステップの第一人者としてユーロフレーバーのあるプレイで一時代を築き、フランス出身のトニー・パーカーも圧倒的なスピードとペイントでのレイアップ技術で、2007年にはファイナルMVPにもなったりと、ヨーロッパ選手のスターが数々と登場した。

ダンカンと共にスパーズで3回優勝したジノビリとパーカー

十分な実力がありつつも、これまで挙げた選手の中でスーパースターと呼べる存在はいなかたっが、ヨーロピアンプレイヤーでNBA初のスーパースターとなったのが、ダーク・ノヴィツキ―である。彼の凄さについて改めて記載する必要はないだろうが、ダラス一筋で長年に渡りチームのNo.1として何度もプレイオフに進出し、2011年には悲願の優勝とファイナルMVPを獲得したドイツのレジェンドである。NBA総得点数は史上6位、おそらく歴代でもTop20に必ず入ってくるプレイヤーであり、特にビッグマンながらスリー含めたジャンプショット中心のプレイで得点を稼ぎだすスタイルはNBAに革命をもたらし、最近のNBAの流れを真っ先に取り込んだ選手ではなかろうか。彼の一本足フェイダウェイは歴史に残るシグニチャーショットとして永遠に語り継がれるだろう。

www.youtube.com

 

<圧倒的存在感を示し始めた今>

そんなダークですらもリーグNo.1の選手と称された期間は一度もなかったのだが、ここにきてヨーロッパ選手の活躍が更にすさまじくなり、リーグベストプレイヤーのTop5をほぼ独占するぐらいの勢いである。ダークやパーカー、ガソルなどが切り開いた道を現代のユーロ選手はさらに広げて、最近は革新的なビッグマン、ガードが次々と登場している。

 

現在リーグNo.1の選手に君臨しているギリシャ出身のヤニス、2年連続MVPでおそらくリーグNo.2のセルビア出身のヨキッチ、それだけでなく、カメルーンから最近フランスの市民権を獲得したエンビードと、現在のリーグのトップスリービッグマンは全員ヨーロッパ選手なのである。しかも彼らはこれまでのビッグマンの常識を覆すプレイスタイルを築き上げている。圧倒的な身体能力に加えてスピードとハンドルが加わった進化版のシャックであるヤニス、圧倒的なバスケセンスとパススキルに大きな体格を持ち合わせたダークとサボニスの融合体のようなヨキッチ、圧倒的なフィジカルにガードのような華麗なフットワークを持つエンビードと、リーグのトップビッグマンがヨーロッパ出身になるとは90年代には誰が想像できただろうか。ちなみに昨年2022年シーズンは彼らがMVP1,2,3、2年前もトップ4になっており、正真正銘のスーパースター達である。

 

更に今後10年でリーグのベストプレイヤーとして相手を恐怖に陥れる事間違いなしの、セルビア出身のドンチッチレブロンとハーデンの融合体のようなセンス抜群すぎるプレイでノヴィツキーの継承者として、マーベリックスで毎年のようにMVP候補になっていくだろ。既にプレイオフで数々のヒロイックを見せている彼はまだ23歳であり、後2,3年後どれほどの選手となるか恐ろしい限りである。

 

実際、ESPNが出した今年のプレイヤーランキングではこの4人がTop4を独占しており、まさにユーロスターNBAの力を握っていることがわかる。(第5位のカリーがチャンピオンベルトを持っていることには変わらないのだが彼も34歳であり、どこかで衰えがくるだろう)

www.espn.com

 

そんなルーカも、NBA入る前には17歳でユーロリーグのMVPを獲得していたにもかかわらず、ドラフト5位で指名されていたことを考えると、未だにバスケはアメリカが一番という固定概念があるのも確かである。然し、数十年にわたってユーロバスケを見下していた流れも来年のドラフトでは終焉の時が来るだろう。何故ならフランス出身のビクター・ウェンバンヤマがドラフト1位で指名されると確実視されているからである。2メートル20センチという超人的な身長にガードのスキルを持ち合わせた彼は最新版ユニコーンであり、自分自身がユニコーンであるデゥラントの進化系といった感じだろうか。これだけ身長高い場合必ずといっていいほど起きるケガは心配ではあるのだが、これまでのNBAのスターの要素を集約したような彼のポテンシャルは計り知れず、現代Top4の先輩達に続いてリーグを震撼とさせること間違いなしである。

www.youtube.com

 

もし今アメリカ選手チーム対ヨーロッパ選手チームでマッチアップしたら、選手層の厚さでアメリカがまだ強いだろうが、トップタレントに限れば全く引けを取らないヨーロッパ軍団は今後10年以内で更に強くなり、いずれアメリカを負かすだけの実力をつけるだろう。