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トランプというアメリカのカルトリーダーと陰謀に踊らされる白人至上主義

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どうも。前回のブログから大分時間が経ってしまったが、久しぶりに記事を書いてみようと思いたったので再始動してみます。というのも、1/6に起こったアメリカ議会の襲撃はアメリカの歴史上最悪の1日として多くの人を驚かせたが、これは決していきなり起こったことではないということを説明したいと思ったからである。ということで、今回はトランプという教祖とそれによってアクティベートされた白人至上主義、蔓延る陰謀論とこのテロの繋がりについてまとめてみたい。

 

1. トランプという異質な存在

トランプはアメリカの政治史上今まで全くいなかった存在である。これまでの大統領は政策や思考に違いはそれぞれあるとしても、国を1つにまとめようとするメッセージを発信してきたが、トランプは自分を信じる人達だけにアピールをしてきた。自分に従わない人、メディア、企業は全て敵となる。彼の戦法はいたってシンプルであり、人に恐怖を植え付けることで、その状況から支持者を守れるのはトランプしかないと謳うのである。リベラル、民主党は君達の権利を奪おうとしていると訴え、保守派や共和党でもトランプについて少しでも批判すれば、彼らは君達の敵であり、アメリカを落とし入れようとしていると主張する。そうすることで、彼の支持者は自分達のことを代弁してくれている強烈な指導者だと信じ込んでいく。

ここで面白いのは、トランプの政策は共和党が打ち出す小さな政府、裕福な層や大企業の税制を優遇していくものなのだが、トランプの支持者の大半は中西部や南部のブルーカラー層である。つまり、支持者の大半にとっては生活が苦しくなるはずの政策方針にも関わらず、表面上のメッセージをに踊らされ、何も疑うことなくトランプを信じている。要はトランプはカルト集団の教祖のような存在であると私は思っている。

 

2. 繰り返される嘘と大統領選挙

トランプは、毎日何十回のツイートや会見の中で、事実に全く基づかない無数の嘘をつくが、それをあたかも真実かのように語る (本人は本当だと思い込んでいるのかもしれないが) というある意味政治上有効なスキルを持っている。また、自分がミスをしたり、負けたということが一切認めることができない。(単なるナルシストなのか、病的なものではないかと疑うほどである)  例えば、アップルCEOのティム・アレンと話した時に、彼のことをティム・アップルと間違えてしまったのだが、その後トランプは自分はティム・アップルと間違えていないと言い張り、フェイクニュースだと突っぱねたりしている。その為、客観的に考えたらおかしいと思えることが、教徒となった支持者には全部真実のように聞こえてしまう。

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この4年間超で数えきれないフェイクインフォメーションがトランプ政権から流されてきたが、最も重大かつ最近の誤情報は大統領選挙に不正があったという主張である。2016年の大統領選でにヒラリー相手に勝ち当選した時ですら、トランプは選挙に不正があったと主張していたのである。州毎で票数の数が振り分けられ、各州勝つ事に合計票数が足されることで勝者が決まるElectoral collegeではトランプが勝ったが、単純な投票人数の合計であるPopular Voteではヒラリーが勝っており、それに対してトランプは自分の方が投票数が少ないはずがない、Popular Voteでも自分が多いはずだと言い張った。その時でも、全くといって不正の証拠は見つからなかったのだが、4年経っても演説で言い続けたのである。そして2020年の選挙では更に嘘が加速し、自分がElectoral Collegeで負けたのはおかしいと言い張り、11月の選挙の結果に対して未だに敗北を正式に認めていない。

 

トランプが敗北を認めないだろうという布石は選挙前から随所に見られていた。会見やツイッターではしきりに、もし自分が負けるとしたら不正があったからなはず、自分が敗北してもちゃんとした理由が確認できなければ政権移行はしないと言っていた。また、コロナの関係で郵便投票が通常よりかなり多くなるることについても、郵便投票で来た票は一部を無効にすべきとも訴えていた。コロナの中で選挙当日に投票所まで足を運ぶのは、マスクやコロナを信じない傾向が強い共和党支持者であり、郵便投票の多数はバイデンにいくからである。トランプの大きな特徴として、普通の悪人と違い、企んでいるプランを全く隠すことなく世間に伝えているのである。それなのに、メディアや政治家は、彼が事前にほのめかし方ことが現実になる度に驚いているのは不思議で仕方ない。

 

大統領選は郵便投票の開票が、州によって選挙当日夜から最後にされたことにより、非常に時間がかかった。その為、最初の方はトランプがリードしているかのように見えたが、最終的には多くの郵便投票の数がカウントされ、キーとなる州でバイデンが勝ち、Electoroal Collegeで必要な票数を獲得した。当然のようにトランプは自分が勝っていた州が最後にひっくり返ったのは不正があったからに違いないと訴えたのである。ここでも面白いのが、開票の途中でトランプが逆転されたミシガンやペンシルバニア州では支持者が集まり投票のカウントをもう止めろと言ったのに対して、バイデンが優勢だったところ最後にトランプとの差が縮まったアリゾナ州では逆にもっと票数を数えろと連呼したのである。結局は自分が勝てば、主張の一貫性などどうでもいいということであろう。このつじつまが合わない事実を無視して盲目にひたすら支持をするグループがアメリカの半分近くいるのはまさにカルトそのものである。

 

3. 陰謀論の流行

大統領選挙については、たくさんの嘘、というか陰謀論がトランプ陣営から主張された。一部のトランプ票がカウントされていない、投票用紙を運んだ人が故意的に票を捨てた、投票機メーカーがおかしいといった様々な手を使って不正を訴えたが、何一つ証拠となるものは見れていない。トランプが負けた各州に対して、政府は訴訟を起こそうとしたが、事実がともわない為すべて失敗に終わっている。こうした陰謀に対しても、支持者は本当だと信じ込み、SNS等で自分達のセオリーを広めている。(なぜか日本でも信者が多いが、、、) こうした陰謀が広まりやすくなったのは、単にトランプが大統領になったというだけでなく、SNSの普及ももちろん影響しているだろう。特にSNSでニュースを見る人たちが増えたことにより、政治思考に関係なく、アルゴリズムやフォローする人によって伝えられる情報が全く違ってきていることは大きな社会問題である。その為、自分が信じている内容をサポートしているものだけ見るようになり、客観的な事実が把握できなくなっていく。

それの最たる例がQアノンであろう。その内容は、民主党議員やハリウッドの俳優は裏でアメリカを乗っ取っており、世界で売春組織を運営し、幼児愛者かつ子供の血を吸い取る悪魔のような組織であり、そしてそれを救う救世主がトランプなのだという普通に考えてありえないものである。この訳も分からない陰謀がSNSで拡散されると、Qアノン信者はどんどんと増えていき、今ではFBIから脅威と見なされるグループまでになった。これは誰もが好きなことを投稿できてしまうSNS時代になったことによる弊害であることは間違いない。このQアノンを支持する人の1人ががこの前共和党から当選したのが、これは恐ろしい事である。陰謀を信じる者が議会にいては、当然偏った政策しか支持されない。当然ながらトランプは彼らの事を批判はしていない。

 

こうして強烈なリーダーとそれを崇拝する陰謀信者によって、彼らは選挙の不正を出張し続け、バイデンが勝ったという事実を認めないだけでなく、自分達がどうにかしなければいけないと思うようになる。

 

4. 力を与えられた白人至上主義者

最後に重要となる要素は、強まる白人至上主義でる。もちろんアメリカの歴史は差別の歴史と言ってもいいかもしれないが、白人至上主義者が表立った活動をすることはKKK以外あまりなく、特に近年はメインストリームな動きではなかった。然し、前述のSNSの普及や黒人大統領のオバマの存在により、一部の白人達は、自分達は社会から除外されれていると考えるようになり、グループとして固まるようになる。そこにトランプが登場し、白人目線のメッセージを訴えたたことにより、彼らは白人が他人種より優れており、昔良きアメリカを取り戻す必要があるのだという認識を更に強めていく。そして世界で最も強力な国の指導者が自分たちのことを褒め、支えてくれていると感じ、自分達は何でもできると思うようになっていく。(実際トランプは、Proud Boysや白人によるユダヤ人差別デモについて公式に批判したことはない) 

年末から年始にかけて、トランプや、トランプJr.、ルディー・ジュリアーニは何が何でも政権を守る必要があると支持者に訴え、バイデンが正式に大統領に任命される1/6をみんなで阻止しようとまで伝えていた。自分の絶対的な指導者であるトランプが選挙は不正だったと言っている、彼が負けるはずがないと思い込んだ支持者達は、選ばれし存在だと思い込み、トランプの言われるまま議会を襲ったのである。

 

ここで見逃していけないのは、Black Lives Matterの際の警察の対応と今回の大きな違いである。前者は、特に昨年夏の警官によるジョージ・フロイド殺害があった後に大きなムーブメントなったが、一部の暴動を除き平和的に行われていた。もちろん暴動についてはしかるべき対応が必要だが、武器も保持せずただ行進している人達に対しても、警察は時に催涙ガスや暴力で対抗し、死者も何人も出た。それに対して、今回はアメリカ議会という最も安全が保証されなければいけない場所で白人達がテロを起こしたにも関わらず、警察が暴力で対応することは少なく、テロリスト達を簡単に議会に入れさせ、一部の警官が一緒にセルフィ―を取ったりしていたのだ。これは警官の中に一定以上トランプ支持者がいるからである。だから警察は黒人をサポートする運動には厳しく対抗し、白人達のテロには甘い対応となる。これが黒人によるデモだったとしたら、真っ先に銃が使われ、死者は数十人ではおさまらなかっただろう。まさに、White Privilaegeをまざまざと見せつけられた事象と言えるだろう。

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トランプというカリスマ的教祖、彼によって発信される嘘、SNSによって広がった多くの陰謀、力を持った白人至上主義者によって今回の事件は起きた。これは一過性のものではなく、過去4年間のトランプと彼の支持者の動きを見ていれば、驚くことでない。トランプを支持する者は何が起きても彼から離れず、副大統領のマイク・ペンスが選挙不正の件でトランプと一線を画しただけで、「ペンスの首を吊れ」と訴えていた。ペンスは4年間ずっとトランプのする事を黙認してきたのにである。

 

今回のテロについては決して許してはならず、今後の更なる情報の整備と議員達による議会の統制が求められる。トランプが大統領でなくなっても、ここまで大きくなった彼の基盤が今後も黙っていることは考えられず、4年後の大統領選までに様々な動きをしてくるであろう。バイデン政権にとっての試練は始まったばかりである。